猫の『目の表情』から読み取る心理5つ 目の動きが持つ意味や感情サインを解説

猫の『目の表情』から読み取る心理5つ 目の動きが持つ意味や感情サインを解説

猫の目の動きや瞳孔のサイズ、まばたきなど、「目の表情」が示す様々な心理状態を読み解く方法を解説していきます。目のサインが持つ具体的な意味や感情を理解し、愛猫とのコミュニケーションを深めるための方法と接し方をまとめました。

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記事の監修

2009年麻布大学獣医学部獣医学科を卒業。
2015年から横浜市内で妻と動物病院を営み、犬、猫、エキゾチックアニマルの診療を行なっています。
2024年現在、犬10頭、猫3頭、多数の爬虫類と暮らしています。
愛犬家、愛猫家として飼い主様に寄り添った診療を心がけています。
内科(循環器、内分泌など)、歯科、産科に力を入れています。

猫の「目の表情」から読み取る5つの心理

黒猫

1.瞳孔のサイズ

猫の瞳孔(黒目)のサイズの変化は、周囲の明るさだけでなく、感情の激しい動きを直接的に反映します。

瞳孔が大きく丸く開いている「お皿目」の状態は、強い興奮や恐怖、あるいは攻撃への準備など、高い緊張状態を示しています。獲物を見つけた時や、驚いた時、あるいは喧嘩の寸前などに見られ、交感神経が優位になっている証拠です。

逆に、瞳孔が細く絞られている状態は、リラックスしている場合があります。

リラックスしている時は目つき全体が穏やかですが、怒っている時は耳が伏せられ、口元が引き締まるといった他のサインと組み合わせて判断が必要です。

瞳孔の動きは感情のバロメーターとして、瞬時に猫の心の状態を教えてくれます。

2.ゆっくりとした「まばたき」

猫が飼い主や他の猫に対してゆっくりとまばたきをする「スローウィンク」は、人間でいうところの「愛情表現」や「キス」に最も近い行動だと解釈されています。

これは、「あなたに敵意はありませんよ」「安全ですよ」という絶対的な信頼と友好的な意図を示すサインです。

猫は警戒心が高まっている状態ではまばたきをせず、視線を送る相手に対して瞬時に対応できる状態を保ちます。そのため、あえて目を閉じ、無防備な状態を相手に見せるこの行動は、その環境や相手に対して心から安心し、リラックスしている状態を意味しているのです。

このサインを返された場合、飼い主も同じようにゆっくりまばたきをすることで、猫の愛情に応え、絆を深めることができます。

3.目の開き方と緊張度

目の開き具合は、猫の心の余裕や緊張の度合いを反映しています。完全に目を細めている状態は、非常にリラックスしているか、強い痛みや不快感を感じている可能性があります。

リラックスの場合、耳やひげも緩んでいますが、痛みの場合は目つきに力が入り、額にシワが寄ることが多いです。

一方、目を大きく見開き、一点を凝視している場合は、強い関心や警戒、または威嚇を示しています。このとき、耳が横に倒れる「イカ耳」を伴うと、緊張や不安が非常に高まっているサインです。

瞬膜(第三のまぶた)がわずかに見えている場合も、リラックスしているか、体調が優れないサインとして受け取ることができます。目全体から受ける印象で、猫の心理状態を深く探ることができます。

4.視線の動きと威嚇・逃避

猫にとって「じっと見つめる」行為は、通常、優位性を示す威嚇や、次の行動を決定するための強い関心を意味します。

猫同士が目を合わせ続けることは喧嘩に発展するリスクが高いため、警戒心が低い状態では避ける行動です。

したがって、愛猫が飼い主を強く見つめている場合、それは要求や関心を意味することが多いですが、不快感からくる威嚇の可能性も考慮する必要があります。

逆に、視線を意図的にそらしたり、目を細めたりするのは、「敵意はありません」「争うつもりはありません」という服従や逃避のサインです。

飼い主が猫に安心感を与えるためには、真正面から長時間凝視するのを避け、ゆっくりと視線を合わせたり外したりする配慮を忘れないようにしましょう。

5.目つきの変化が示す体調不良や痛み

猫は本能的に体調の悪さを隠しますが、目つきの変化は痛みや病気の隠しきれないサインとして現れることがあります。

強い痛みや不快感がある場合、猫は目を細めたり、まぶたに力を入れて閉じようとしたりします。この「細め目」はリラックス時のものとは異なり、表情に硬さがあり、警戒心や防御的な姿勢を伴います。

また、普段よりも瞳孔が極端に開きっぱなしの状態が続く場合は、高血圧や緑内障、神経系や甲状腺の異常など、重篤な病気のサインである可能性があります。

さらに、目ヤニや涙の量の増加、目の充血、光を異常に眩しがるなど、物理的な目の異常が伴う場合は、目の病気や全身疾患が原因となっている可能性が高く、迅速な獣医師の診察が必要です。

目の動きが持つ意味と体のサイン

イカ耳猫

猫の目の動きは単独で判断するのではなく、耳の向き、ひげの張り方、しっぽの動きといった全身のボディランゲージと組み合わせることで、より正確な心理状態を読み取ることができます。

例えば、瞳孔が開き(興奮)、耳が横に倒れて伏せられ(不安)、ひげが前方に張っている(警戒)場合、それは強い恐怖心や防御の姿勢を示しており、攻撃的になる寸前のサインです。

また、目を細め(リラックス)、しっぽをゆっくりと立てて、ひげが緩んでいる状態であれば、それは安心感と満足を示しています。

猫が飼い主をじっと見つめている場合でも、耳が前方を向き、しっぽを上げていれば関心や要求ですが、耳が後ろを向き、しっぽを振っていれば威嚇や不満であるなど、全身のサインの複合的な解釈が猫の感情を深く理解するために不可欠です。

飼い主ができる愛猫との「目のコミュニケーション」

見つめてくる猫

愛猫とのコミュニケーションを深めるには、猫の流儀に従った「目のコミュニケーション」を実践することが最も効果的です。

特に、猫が愛情と信頼を示す「ゆっくりとしたまばたき(スローウィンク)」を飼い主から積極的に送ることが非常に重要となります。

猫がこちらを見たとき、真正面から凝視するのを避け、一度視線を軽く外してから、ゆっくりとまばたきをすることで、「あなたを信頼している」というメッセージを猫に伝えることができるでしょう。

猫が不安や警戒を感じているときは、目を合わせるのを控え、猫の視界に入らないように行動することで、猫に安心感を与えることが大切です。

このように、猫の目のサインを理解し「猫に優しい視線」で接することで、猫からの信頼と愛情を引き出し、より深い絆を築くことができます。

注意が必要な目のサイン

目やにを取る猫

猫の目のサインの中には、心理的な問題だけでなく、身体的な病気や痛みが原因となっているものがあり、これらを見逃すと深刻な事態につながりかねません。

注意すべきサインとしては、目ヤニや涙が異常に増える、結膜(目の白い部分)が充血して赤い、角膜が白く濁る、光を異常に眩しがるといった、明らかな目の病変が挙げられます。

また、瞳孔の大きさが左右で異なる状態(瞳孔不同)や、瞳孔が明るい場所でも極端に開いたままの場合は、脳や神経系の疾患、または高血圧など、命に関わる全身疾患の可能性があるため、直ちに獣医師の診察が必要です。

心理的なリラックスではない持続的な目を細める動作も、痛みや不快感を示しているため、安易に見過ごさず、全身の健康状態をチェックするようにしましょう。

まとめ

見つめ合う女性と猫

猫の目は、感情の機微から体調不良に至るまで、猫の心の状態を雄弁に物語ります。

瞳孔のサイズ、まばたき、視線の動きを、耳やひげ、しっぽといった他のボディサインと複合的に読み取ることで、愛猫の「今」の心理を深く理解できます。

飼い主がスローウィンクで愛情を伝え、異常な目つきの変化を病気のサインとして見逃さないことで、愛猫との信頼関係を築き、健康を守ることに繋がりますよ。

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