各地にファンがいる人気猫

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オーストラリア内陸部にある「アウトバック」と呼ばれる砂漠中心の広大な地域。ここで活躍する著名なインフルエンサー・茶トラ猫のMangoをご紹介しましょう。
この猫は自身のFacebookページをもち、忠実なフォロワーも大勢います。
「郵便受けにはMango宛ての小包がよく入っています。中には猫用のお菓子を焼いて送ってくれる女性もいます。サーモンの缶詰や猫の服、小さな靴まで届くんですよ」と話すのは、飼い主のBeck Smithさんです。
この地域では、飼い主の膝にちょこんと乗ったMangoがバイクで一帯を走りまわる姿がよく見られます。そのユニークな姿は、誰もが二度見してしまうほどです。Mangoは農場で働く犬たちと一緒に育ったため、普通の猫とは一味も二味も違う性格なのです。
「みんなMangoのことが大好きです」というBeckさん。
洪水被害からの辛い生活再建

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この猫が有名になったのは、2025年初めの大洪水のあと、彼女が友人たちに「Mangoとともに家のまわりの洪水被害状況を調べている動画」を送ったことがきっかけだったといいます。
「みんなが『ちょっと待って、バイクに乗っているのは本当に猫?』という返事をくれました。Mangoは普通の猫とは違います。犬たちと一緒にバイクに乗ったり車の後部荷台に落ち着いたりして、牛の群れを集めたり、牧場で牛の牽引や世話を手伝ったりするのです」とBeckさんは笑います。
彼女はクイーンズランド州中西部ロングリーチから約90分ほどのところにある小さな町に住み、5万2600ヘクタールの牧場をたったひとりで運営しています。しかし今年初めに壊滅的な洪水が発生し、所有地の約70%が水没してしまいました。それ以来「ドミノ倒し」のように牛の飼育や販売ができなくなり、支払い期限の過ぎた請求書がどんどん増えてきています。
「お金のことは考えすぎないようにしています。考えると、本当に落ち込んで圧倒されてしまうんです。とにかくやることが多すぎて1日が短いの。目標の半分もはかどらないのです」
「でもMangoがそばにいると、辛さが和らぎます。愛らしくてふわふわした、個性豊かな小さな猫が心を癒してくれるのです。ウェブ上でも、人々は猫のおどけた行動を笑いながらも、わたしたち被災者が経験した辛さを理解して応援してくれているのです」とBeckさん。
愛猫とともに前進中

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農場フェンスの設置と資材の購入のために、少なくとも10万ドル(約1千万円)がかかりました。しかも政府の補助金を受けるのには時間がかかるため、この費用を彼女が全額前払いしなければなりません。
「大問題です。簡単に出せる金額ではありません」と彼女は思案顔です。
それでもMangoが犬たちと一緒に働く動画をソーシャルメディアに投稿することで、災害後の生活について自分だけで悩むのではなく、まわりの人々と率直に語り合えるようになりました。
「以前は自分のメンタルヘルスについて悩むことは恥ずかしいと思っていましたが、今では他人に話すことが癒しのプロセスの一部になっていると思えるようになりました。この土地の人たちは従来マッチョな気質があって、人に弱点を見られるのを嫌がります。タフガイが理想とされているからです」
「今は牧畜業を営む女性が増えていますが、それでもまだ男性中心の社会なのです。女性は男性の2倍タフでなければやっていけません」とBeckさんは言い添えます。
「いまはただMangoと共に、破壊された土地の再建を懸命に続けるだけ」という彼女。心強い「肉球」を味方にして、Beckさんは今日も前へと進み続けます。
出典:Mango the muster cat draws attention to western Queensland's ongoing recovery