猫の腎臓病に効果を発揮するとされる『AIM』とは?猫たちの平均寿命を伸ばす可能性も

猫の腎臓病に効果を発揮するとされる『AIM』とは?猫たちの平均寿命を伸ばす可能性も

猫にとって宿命の病とも言われる腎臓病。その新薬が完成しつつある事はご存知ですか?この記事では、猫の腎臓病の新薬「AIM」についてご紹介します。

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記事の監修

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

︎猫の腎臓病について

腎臓

腎臓は体内で、血液から尿をつくり体の中で不要になった老廃物や毒素を尿の中に排泄する、血圧を調節する、ナトリウムやカリウムなどの血液中のイオンバランスを保つ、ホルモンを分泌し血液をつくる、などの働きを担っている、とても重要な臓器です。

猫の腎臓病には急性腎不全と慢性腎不全があり、急性腎不全では、突然の嘔吐、元気消失、痙攣、食欲不振、進行すると尿が出ないなどの症状が現れます。

その原因は、尿路結石や腎結石、腫瘍など様々な要因が考えられており、急性腎不全になった場合は症状の進行も早い可能性が高いため、命に関わる状態になりかねない非常に怖い病気です。

一方で慢性腎不全は、少しずつ進行していきます。

初期症状としては水を沢山飲んで大量の尿を排泄する「多飲多尿」が最も多く、徐々に症状が進行してくると、元気消失、嘔吐、食欲不振などの症状が現れます。

治療方法としては、腎臓の機能をサポートするための内服薬や、塩分が抑えられた腎臓病用の療法食などが使われてきました。

しかし、一度悪くなった腎臓は進行を遅らせる事はできても、元に戻す事ができない事から、腎臓は徐々に症状が進行して行き、最期は食事や水分が取れなくなり全身状態が悪化して亡くなってしまいます。

15歳以上の猫の80%が腎臓病であると言われる事からも分かるように、猫は歳をとるとほとんどの確率で腎臓が悪くなる動物であり、愛猫が腎臓病に罹患したり、それが原因で愛猫を亡くしたりした経験のある飼い主さんはとても多いと思います。

しかし腎臓病は多くの猫や飼い主さんが苦しんでいる病気にも関わらず、今までなぜ人や犬よりも、猫が腎臓病になりやすいのか、その原因が今まで分かっていませんでした。

︎新薬のAIMについて

薬

しかし2016年、ついにその原因を発見したのが、AIM医学研究所の所長である宮崎徹医学博士です。

この発表により、猫の腎臓病治療の研究は一気に前進しました。

2016年、宮崎博士は、猫の腎臓病の重要な原因のひとつが「AIM」というタンパク質にある事を発表しました。

AIMは、体内でできた老廃物を処理する際に、それを掃除してくれる貪食細胞に「これがゴミですよ」と知らせるための目印として老廃物に貼り付く、言わば、「粗大ゴミシール」の様な役割をしているタンパク質です。

AIMがつく事で、貪食細胞は老廃物をそれはゴミだと認識して、掃除をしてくれています。

AIMは人にも犬にも猫にも存在していますが、その中で猫だけはなぜかAIMが存在するにも関わらず、上手くゴミに付くことができないAIMがほとんどであることを、宮崎博士は発見しました。

つまり猫で腎臓病が起きる事が多いのは、この老廃物が血液濾過の役割をしている腎臓に、歳を重ねるごとに蓄積されていき、腎臓が機能しなくなっていくためだと分かったのです。

そこで、それならば上手く働くことのできるAIMを外から取り入れてあげれば、老廃物が掃除されるのではないかと作られたのが新薬の「AIM」です。

宮崎博士は、このAIMがうまく働けば猫の寿命はおおよそ2倍に延びる可能性があると述べています。

︎現在の進行状況

獣医師と猫

AIMの薬の開発には、多くの愛猫家の方から半年で約3億円もの寄付金が集められ、宮崎博士はその想いを胸に、一日も早い実用化を目指して尽力されています。

現在は、薬は完成し、2025年の春から全国26動物病院で治験が始まっています。

宮崎博士によると、来年2026年には農林水産省への承認申請を行い、審査期間を通過すると、2027年春には新薬が一般の飼い主さんでも使える様になる予定だという事です。

またAIMを使ったキャットフードは既に発売されており、一般の飼い主さんでも購入する事ができます。

︎まとめ

人と猫の手

多くの猫や飼い主さんの希望の光となる新薬「AIM」。

獣医療関係者にとっても、これまで治らなかった病気が治る様になるというのはとても嬉しい事で、猫の寿命を延ばす可能性を秘めた新薬が、一日も早く飼い主さんのもとへ届くことを願っています。

その実現のために日々ご尽力されている宮崎徹医学博士をはじめ、研究に携わるすべての皆様に心から感謝申し上げます。

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