猫も人間もかかる『人獣共通感染症』3選 感染の原因や危険性、予防法まで解説

猫も人間もかかる『人獣共通感染症』3選 感染の原因や危険性、予防法まで解説

猫との暮らしは私たちに癒しや幸福をもたらします。一方で、猫から人に感染する「人獣共通感染症」にも注意が必要です。本記事では、代表的な3つの感染症を取り上げ、その原因から予防法までをご紹介します。

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記事の監修

日本では獣医師。世界では旅人。”旅する獣医師”として世界各国を巡り、海外で見てきた”動物と人との共生の様子”を、執筆や写真展を通して皆さんと共有する活動をしています。

人獣共通感染症とは

首をかしげる猫

動物から人に感染する病気をまとめて「人獣共通感染症」といいます。人にも動物にも深刻な症状が出る病気から、人は軽症でも動物は重症になるものなどさまざまで、「ズーノーシス」や「動物由来感染症」などとも呼ばれています。

クマやイノシシ、シカといった野生生物はもちろん、犬や猫、鳥などペットとしても身近な動物が病原体を持っていることがあります。

動物とともに生活する上では、注意しなければならない感染症と、その原因や予防法・対処法をしっかりと理解しておくことが大切です。

猫からうつる代表的な感染症3つ

耳をかく猫

1.トキソプラズマ症

トキソプラズマ原虫という寄生虫が原因で起こり、感染した猫は糞便中にオーシスト(卵のようなもの)を排出します。糞が数日放置されると、感染性を持つようになり、それを口にした動物が感染します。

人の場合、直接糞を食べなくても、土や野菜に付着したオーシストを気づかないうちに口に入り、感染してしまったというケースがあります。

健康な人であれば、感染しても無症状か、軽い風邪のような症状で済むのが一般的です。

しかし、妊娠中は胎児にも感染して流産や早産、脳の障害などを引き起こすことがあります。

2.パスツレラ症

ほぼすべての猫の口の中や爪に常在するといわれている「パスツレラ菌」による感染症です。ほとんどの猫は保菌していても無症状ですが、猫同士のけんかなどでできた傷に菌が入ると化膿したり、関節炎になったりすることがあります。

人が猫に噛まれたり引っかかれたりすると、傷口から菌が侵入して感染することも。

また、キスや口移しで食べ物を与えるなど、過剰なスキンシップでうつることもあります。

症状が軽い場合は、傷口の赤みや腫れ程度で済みますが、重症化すると皮膚の壊死や関節炎、敗血症に至ることもあります。

高齢者や糖尿病などの基礎疾患を持つ人は特に注意が必要です。

3.真菌症(皮膚糸状菌症)

主に「ミクロスポルム」と呼ばれる真菌(カビ)が原因です。

子猫や免疫力の弱い猫が特に発症しやすく、脱毛やかゆみ、発疹などの症状があらわれます。

感染した猫をなでるなどの直接的な接触以外にも、抜け毛やフケ、カーペットなどに触れたりほこりを吸い込んだりすることで感染することがあります。

人に感染すると、赤いリング状の発疹(リングワーム)やかゆみといった症状が出ます。

子供や高齢者、免疫力が低下している人にはうつりやすい傾向があります。

感染を防ぐ方法

掃除機を見つめる猫

紹介した病気以外にも、猫から人に感染する感染症はあります。日ごろからしっかりと対策することで、さまざまな病気の感染リスクを軽減できます。

  • 猫のトイレ掃除の後や遊んだ後は必ず手を洗う
  • キスする、口移しで食べ物をあげる、食器を共有するといった過度な接触を避ける
  • 健康維持やノミダニの予防のためにも、定期的な動物病院への受診やワクチン接種などを行う
  • 猫は室内で飼育して、病原菌を持っている可能性のある動物との接触を避ける
  • 猫のトイレやベッドをはじめとする飼育環境を清潔に保つ

まとめ

猫をなでる人

猫と暮らす上で、人獣共通感染症は決して他人事ではありません。

しかし、正しい知識を持って対策を取っていれば、過度に恐れる必要はありません。

過剰なスキンシップを取らない、日常的に健康観察や掃除を行う、手洗いを徹底するといった基本的なケアこそが最大の防御策です。

万が一、猫に異変が見られたら早めに動物病院へ連れて行き、人間の体調に不安があれば医療機関を受診しましょう。

猫の健康を守ることが、自分の身を守ることにもつながります。

穏やかで幸せな愛猫との日々が末永く続くように、今日から対策を行ってみてくださいね。

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