猫にも『譲り合い』の気持ちがある?

多頭飼育をしていると猫同士やその他の動物、一緒に暮らす子どもに対して何かを譲ったり、譲り合ったりしている場面に遭遇したことはありませんか?
猫にも『譲り合い』の精神が存在するのでしょうか。ここでは具体的な場面を例に、譲る理由について紹介していきます。
ご飯の順番を譲る
猫が食事をする際、置かれた食器に真っ先に手をつける順番を譲るような仕草が見られることがあります。この行動には次のような理由が込められています。
- 相手が先輩だから
- 相手がまだ子猫だから
- 無駄な喧嘩を避けるため
猫は我々が思う以上に平和主義な生き物です。基本的には無駄な喧嘩を避けようとする習性を持っています。よって後輩が遠慮したり、力関係が上の者に譲ったりすることが多いです。
また、まだ猫社会のルールを知らない子猫が前に出てしまった場合は「仕方ないなぁ」という気持ちで先を譲るという暗黙の了解的な掟が猫界には存在しています。
本音を言えば譲るというよりも「わざわざ争いを招いて無駄な怪我をしたくない」という気持ちが強いです。
残したご飯をあげる
自分の食事を残しても、他の猫が食べてしまうことに怒らないケースもあります。
これは「もうお腹がいっぱいだから気にしない」というシンプルな理由が大半です。
ただし、中にはボス猫からのプレッシャーで仕方なく譲っている場合もあります。温厚で控えめな猫と、食いしん坊で自己主張の強い猫が同居している場合には、食事場所や時間を分けるなど工夫すると安心です。
おもちゃを譲る
じゃらしやカシャブンなどのおもちゃ遊びでも、譲り合っているように見えることがあります。これは衝突による怪我を避けるためであり、猫の賢さがうかがえる行動です。
また、猫は本来単独で狩りをする生き物です。遊びは「狩りの練習」にあたるため、本能的に一匹で取り掛かりたいという欲求も関係しています。
最初に飛びついた猫から順番に遊ばせてあげると満足してくれるでしょう。
病気の猫や幼い子のお世話を優先する
体調の悪い猫や幼い人間の赤ちゃんがいる家庭では、健常な猫が一歩引くことがあります。
しかし、これは相手を思いやっているというより「空気を読んだ結果」であることが多いのです。
ただ、その裏で「かまってほしい」「寂しい」という気持ちを抱えていることもあります。
手が空いたときにしっかり撫でたり遊んだりして、甘えさせてあげましょう。赤ちゃんや他の猫の世話をしている最中も声をかけてあげるだけで安心感を与えられます。
『譲り合い』の概念は正直あまりない

結論として、猫には人間のような『譲り合い』の概念はほとんどありません。
実際は「遠慮」や「一歩引く」といった行動が、私たちには譲り合っているように見えるだけなのです。
この遠慮や引く行動が続けばストレスや負担になることもあります。飼い主は、猫が穏やかに過ごせるよう配慮し、ほかの動物や子どもとも公平に接する姿勢を心がけましょう。
とくに先住猫には、食事やスキンシップの順番を優先してあげると安心です。譲る仕草を見せたときには「次は○○ちゃんの番ね」と声をかけるなど、さりげなく気持ちを汲んであげると良いでしょう。
「普段素っ気ないから大丈夫」と軽く考えず、表に出さない気持ちを読み取ることが大切です。
まとめ

猫の「譲り合い」に見える行動の正体は、平和主義的な習性や思慮深さからくる『遠慮』です。誰かが一歩引くことで物事が穏便に進んでいるにすぎません。
だからこそ、飼い主は積極的な猫ばかりを優遇するのではなく、控えめな猫にも目を配る必要があります。場合によっては、部屋を分けて過ごさせることも有効です。
今回ご紹介した内容が、ご家庭の猫やほかの動物たちが安心して暮らせるヒントになれば幸いです。