猫の多発性嚢胞腎の主な症状

多発性嚢胞腎(PKD)は、腎臓に液体が溜まった嚢胞が複数できる遺伝性疾患です。嚢胞が大きくなることで腎臓の機能が徐々に失われ、最終的には慢性腎臓病に至ることもあります。以下では、症状と進行の特徴を項目ごとに詳しく解説します。
初期は無症状で見逃しやすい
多発性嚢胞腎は、初期段階では見た目や行動にほとんど変化が見られません。そのため、飼い主が病気に気づかずに進行してしまうケースが多く、発見が遅れるのが大きな問題点となっています。
進行とともに現れる代表的な症状
腎機能が落ちてくると、食欲不振・体重減少・元気のなさ・毛艶の悪化・脱水・嘔吐・口臭などが見られるようになります。これらは慢性腎臓病と共通する症状で、気づいたときにはすでにかなり進行していることも。
末期には尿毒症や貧血のリスクも
腎臓が老廃物を排出できなくなると、尿毒素が体に蓄積し「尿毒症」を引き起こすことがあります。また、進行してくると腎臓で作られるホルモンの減少により、貧血などの症状も見られ、猫のQOL(生活の質)が著しく低下します。
定期的な検査が早期発見のカギ
エコー(超音波)検査で腎臓の嚢胞を確認することが、最も確実な早期発見手段です。1歳を過ぎたら、年1回の健康診断でエコー検査を受けるのがおすすめです。
多発性嚢胞腎が多く見られる猫種

多発性嚢胞腎は、遺伝によって発症する病気で、特定の猫種に多く見られます。とくに罹患率が高いとされているのが以下の猫種です。
- ペルシャ
- エキゾチックショートヘア
- ヒマラヤン
- ブリティッシュショートヘア
- スコティッシュフォールド
これらの猫種はペルシャ系の血統を持つことが多く、親猫がPKDキャリアであるかどうかが発症のリスクに大きく関わります。信頼できるブリーダーや保護団体から迎えることが、予防の第一歩です。
治療法と予防のポイント

多発性嚢胞腎は、根本的な治療法が存在しない進行性の遺伝病です。そのため、できるだけ早く発見し、進行を遅らせるケアや、症状を和らげる対症療法を継続していくことが中心となります。ここでは、治療と予防の両面からできる対策を詳しく見ていきましょう。
治療の基本は「慢性腎臓病」と同じ対症療法
腎機能の低下を抑えるためには、療法食(腎臓サポート食)への切り替えが第一のステップです。加えて、脱水予防のための皮下点滴や、高血圧を抑える降圧剤の投与、リン吸着剤などの補助薬も状態に応じて使われます。
進行スピードは猫によって異なる
同じ多発性嚢胞腎でも、進行の早さには個体差があります。初期に発見できれば、5年以上元気に過ごすことも十分に可能です。逆に、重度の腎臓病が進行してからではQOLを保つのが難しくなります。
定期的なモニタリングが大切
治療中は、血液検査・尿検査・エコー検査などを定期的に行い、腎臓の状態や嚢胞の大きさを確認します。急激な悪化や合併症を早期に察知することで、対応の幅が広がります。
遺伝子検査でリスクを回避
ペルシャ系の猫を飼う・迎える予定がある場合は、遺伝子検査を使ってPKD遺伝子の有無を確認しましょう。繁殖前にスクリーニングされていれば、遺伝による発症リスクをゼロにすることも可能です。
まとめ

多発性嚢胞腎は、特定の猫種に多く見られる遺伝性の腎疾患です。初期には症状が出にくく、気づいたときには腎臓病が進行しているケースも少なくありません。
根本的な治療法はありませんが、早期発見と適切なケアで進行を抑え、猫のQOLを守ることは十分に可能です。日頃から猫の様子をよく観察し、定期的な健康診断や検査を習慣化することが何よりの予防につながります。
愛猫の健やかな未来のために、遺伝病について正しい知識を持ち、できる対策を一つずつ実践していきましょう。