1.猫伝染性腹膜炎(FIP)

猫伝染性腹膜炎は、猫コロナウイルスが突然変異することで発症する致死性の高い病気です。発熱や食欲不振といった症状から、腹水・胸水が溜まる「ウェットタイプ」と、臓器に肉芽腫ができる「ドライタイプ」があり、それぞれ異なった症状があらわれます。
以前は不治の病とされていましたが、近年は治療薬が開発されたり、効果が期待出来る治療薬が見つかったため、治癒が期待できるようになりました。
しかし、治療薬が非常に高価なため、治療には百万円ほどかかることもあります。早期発見が難しいため、症状が出た時点で治療費が膨らむことが多く、飼い主さんにとっては、経済的負担が大きい病気です。
2.慢性腎臓病

慢性腎臓病は高齢猫に多く見られる病気で、腎機能の低下により体内の老廃物が排出されにくくなります。一度失われた腎機能は回復しないため、生涯にわたる治療が必要になる病気です。
初期には目立った症状がなく、進行すると食欲不振や多飲多尿が見られ、さらに体重減少や嘔吐、脱水症状なども見られるようになります。
治療は、腎臓への負担を減らすための食事療法が中心となり、進行度合いに応じて皮下輸液(点滴)や投薬を行います。病気が進行するにつれて治療頻度や内容が増えるため、月に数回から週に数回の通院や在宅での点滴が必要になることも少なくありません。
そのため、毎月の医療費が継続的にかさみ、年間で数十万円以上の治療費がかかる可能性も。生涯の治療費はかなりの高額になることを覚悟しておく必要があるでしょう。
3.糖尿病

猫の糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンが不足したりうまく働かなくなったりして、血糖値が高い状態が続く病気です。食欲は旺盛なのに体重が減る、水をたくさん飲む、おしっこの量が増える(多飲多尿)といった症状が見られます。白内障、腎疾患、肝疾患、感染症など合併症を引き起こすこともあります。
食事療法や体重管理などがおこなわれますが、血糖値が安定しない場合は、インスリン注射が不可欠で、そうなると年間数十万円の治療費がかかるでしょう。加えて、合併症を起こすと、さらに高額な費用などがかかります。
そのため、糖尿病を発症すると、生涯にわたる治療費は非常に高額になる可能性が高いと考えられます。
4.肥大型心筋症

肥大型心筋症は猫の心臓病の中で最も多く見られる病気で、心臓の筋肉(心筋)が厚くなり、血液を上手く送り出せなくなる病気です。症状は無症状のことも多く、進行すると呼吸困難や失神、血栓が詰まるなどして突然死するリスクが高まります。
根本的な治療法はないため、心臓の負担を減らしたり、血栓ができ難くしたりする内科療法が中心となります。一度発症すると生涯にわたる投薬が必要となり、療法食や定期的な検査も欠かせません。そのため、年間数万円から十数万円の治療費がかかります。
さらに、病状が悪化して入院や酸素療法が必要になったり、血栓塞栓症を起こしたりすると、その都度、高額な医療費がかかることになります。
猫の高額医療費にどう備える?

猫がFIPや慢性腎臓病、糖尿病、肥大型心筋症といった病気にかかった場合、治療費は数十万円から数百万円に及ぶこともあります。こうした万が一の事態に備えるためにはどうしたらよいのでしょうか?
一番に考えられるのは、ペット保険への加入です。万が一高額な医療費が必要になった際に経済的負担を大幅に軽減できます。ただし、保険会社やプランによって補償内容や保険料が異なるため、加入前に必ず比較検討しましょう。
また、ペット保険に頼らず、自分自身で貯蓄をするという方法もあります。愛猫のための貯金として毎月一定額を積み立てておけば、いざという時に慌てずに対応できます。
最終手段としては、高額なものを売るという方法もあるでしょう。
まとめ

動物病院の治療費は、人間と比べて高額になりがちです。とくに、猫伝染性腹膜炎や慢性腎臓病、糖尿病、肥大型心筋症などは、治療が長期にわたったり、突発的に多額の費用がかかったりするため、事前の備えが非常に重要となります。
万が一の際に「費用がないから治療できない」という事態を避けるためにも、日頃からペット保険への加入や貯蓄といった対策を講じておきましょう。
さらに、日頃から猫の健康状態をよく観察し、定期的に健康診断を受けることも重要です。病気の早期発見は治療の負担を軽減することにつながり、結果的に医療費を抑えることにも繋がります。