猫の致死率は約60% 深刻化する『重症熱性血小板減少症候群(SFTS)』の症状や予防法を解説

猫の致死率は約60% 深刻化する『重症熱性血小板減少症候群(SFTS)』の症状や予防法を解説

マダニが媒介する病気「SFTS」は人だけでなく猫にも感染し、致死率は約60%と非常に危険です。最近では患者数が過去最多と報道され、ますます身近なリスクとなっています。しかし正しい知識を持ち、日常の中で少し工夫することで大切な愛猫を守ることは十分に可能です。本記事では、SFTSの症状や予防策をわかりやすく解説します。

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記事の監修

日本では獣医師。世界では旅人。”旅する獣医師”として世界各国を巡り、海外で見てきた”動物と人との共生の様子”を、執筆や写真展を通して皆さんと共有する活動をしています。

命に関わるウイルス感染症「SFTS」とは

窓辺で目を閉じる猫

重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は、マダニが媒介するウイルスによって引き起こされる感染症です。人だけでなく猫や犬などの動物にも感染し、とくに猫では致死率が約60%と高い数値で報告されています。

つまり、感染した猫の半数以上が命を落とす可能性がある、とても危険な病気です。

近年、日本ではSFTS患者数が過去最多と報道されるほど広がりを見せています。

気候変動や野生動物の行動範囲拡大によってマダニが増えており、これが感染リスク上昇につながっています。

普段の生活で「マダニなんて山奥にいるのでは?」と思いがちですが、実際には公園や河川敷、庭先など身近な場所にも生息しています。

感染はマダニに咬まれることで起こるだけでなく、すでにSFTSにかかった猫や犬など感染動物の体液や血液から人へうつることも確認されています。

飼い主にとっても大きなリスクとなるため、病気を正しく理解することが重要です。

猫がSFTSに感染したときの症状

猫の食事

SFTSに感染した猫は、初期段階では元気がなくなる、食欲が落ちるといった一見すると「ちょっとした体調不良かな?」と見過ごしやすい症状から始まります。

進行すると発熱、黄疸、嘔吐、稀に下痢が見られ、血小板や白血球が減少するため、出血しやすくなったり免疫力が下がったりします。

特効薬がないために、重症化すると回復は非常に難しく、命に関わります。

飼い主が注意したいのは「普段と違う小さな変化」に気づくことです。

たとえば食欲旺盛だった猫が急にごはんを残す、普段は甘えてくるのに隅でじっとしているなど、行動のちょっとした異変がサインになります。

猫は体調不良を隠す習性があるため、気づいたときには重症化しているケースも少なくありません。

SFTSから猫を守るための予防策

キャットタワーで遊ぶ猫

残念ながらSFTSには有効なワクチンや特効薬が存在しません。治療は対症療法が中心で、発症してから助けるのはとても難しい病気です。だからこそ、最大の防御策は「予防」になります。

具体的には、「猫を屋内で飼う」ことです。

外に出るとマダニに接触する可能性が高まるため、完全室内飼いが理想的です。どうしても外に出す場合には、ハーネスとリードを着用した上で一緒に散歩をし、草むらや藪などダニが潜みやすい環境を避けましょう。

また、動物病院で処方されるマダニ駆除薬を定期的に使うことも有効です。首の後ろに滴下するタイプが一般的ですが、市販の害虫予防薬には効果が不十分なものもあるため、獣医師と相談した上で猫に合った効果が十分なものを選びましょう。

併せて、ブラッシングや撫でながら被毛のチェックを習慣化することもおすすめです。「ノミやダニがついていないかな?」と意識するだけで早期発見につながります。

人間における致死率も高い感染症ですので、飼い主自身の予防も忘れてはいけません。

草むらに入るときは長袖・長ズボンを着用し、裾部分は靴下に入れるなど、ダニが入ってくる隙間を与えないようにしましょう。すぐに刺されずとも、服にダニがついたまま帰宅し、家の中に入れてしまうこともあります。帰宅後は衣服をすぐに洗濯し、シャワーで体を流すことでリスクを下げられます。

もし野良猫や体調不良の猫に触れる場合は、素手ではなく手袋を使いマスクとメガネを着用するなど直接接触を避け、飛沫感染にも注意する意識も必要です。猫を触った後は十分に手洗い・消毒をし、自身の目や口などを直接触らないよう気をつけましょう。

まとめ

猫の寝顔

SFTSは、猫にとって致死率の非常に高い病気です。人への感染例もあり、決して他人事ではありません。

最近の報道で患者数が過去最多になったと伝えられているように、今後さらに警戒が必要になるでしょう。

大切なのは「うちの猫は大丈夫」と油断しないことです。屋内飼育、マダニ予防薬の使用、日々の健康チェックという基本的な習慣が、猫の命を守る大きな盾になります。もし少しでも異変を感じたら早めに動物病院を受診してください。

猫と暮らす喜びは何ものにも代えがたいものです。その時間を長く続けるためにも、飼い主が正しい知識を持ち、できる予防を重ねていくことが何より大切です。愛猫と安心して暮らす未来のために、今日からできることをしてあげたいですね。

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