猫の『てんかん』とは?

動物の脳内では、常に微量の電気が一定のリズムでなおかつ決まったルート(回路)を流れ続けています。
しかし、何らかの理由でこの電流の流れが乱れてしまうとショートを起こしてしまいます。その結果として様々な症状を呈する状態を『てんかん(てんかん発作)』といいます。
てんかん発作というと人間の身に起こる病気というイメージがあるかもしれませんが、実は猫にも起こり得るものなのです。詳しい症状の解説の前に、原因や対処法について紹介いたします。
原因
猫のてんかん発作の引き金になるとされる原因には、ストレスや環境の変化が挙げられます。
ストレスは精神的な負荷に留まらず、異常な暑さや寒暖差などの物理的な要因が引き金となる場合も多いです。
環境の変化に関しては、飼い主さんを取り巻く環境が変わった場合という間接的なものでも起こり得ます。
また、脳の病気に付随して起こる場合もあります。例えば脳腫瘍・脳炎・脳梗塞・脳の奇形など。
さらに様々な感染症が隠れているケースもあります。(猫エイズ・猫白血病・FIP・トキソプラズマなど)
発作が起こる頻度や継続時間
てんかん発作は一生に一度という場合もあれば、何度も繰り返す場合もあります。例えば1ヶ月に数回、ないしは複数回という頻度で現れることもあります。
発作の継続時間は1分程度(30秒〜1分の範囲内)が多いですが様々なケースがあり、長い発作が続く場合や短い発作が次々起こる場合などもありますが、5分以上など長時間続く場合は『てんかん重積』といって危険な状態になります。
対処法
愛猫がてんかん発作を起こしてしまったら、慌てずに次のような対応をしてください。
- 周囲に危険なものがあれば撤去する
- 衝撃に備えるために座布団などを敷く
- 動画を撮影する(診断に役立てるため)
- 抱きしめたり保定しようとしない
- 発作が止まってから病院へ連れて行く
発作時は意図しないところで飼い主さんを噛んだり、引っ掻いたりしてしまう恐れがあります。飼い主さんが負傷してしまえば通院が困難になるため、けいれん中は離れて見守ることが鉄則です。
また、基本的には発作が治まってから病院へと移動します。てんかん重積が疑わしい場合は、一度かかりつけの動物病院に連絡し、指示を仰いでください。
観察しておくこと
次のような内容を観察しておくと、診察に役立ちます。
- いつからどのくらいの時間続いたか
- どのような症状が出ていたか
- 発作後の様子はどうだったか
また、次のような内容を報告すると診察しやすくなります。
- 過去の事故歴の有無(高所からの転落・交通事故など)
- 過去の発作歴(初めてか否か・過去にあった場合はその時の様子も伝える)
- 失禁の有無
猫のてんかん発作の症状

実際にてんかん発作が起きた場合には、次のような症状が現れることが多いです。
1.行動の異常
てんかん発作においては『前兆』として、行動の異常が見られることも珍しくありません。
- 落ち着きがなくソワソワしている
- 妙にハイになりドタバタと駆け回る
- 逆にボーッと座り込む
- 何も無い場所をキョロキョロと見回す
- 異様なほどよく食べる(暴食)
2.全般発作
先ほどの『前兆』と思わしき行動が見られた場合は、発作に備えて危険なものを片付けておきましょう。場所によっては座布団やクッションを置き、その上にペットシートを並べておくと安心です。
次のような症状は、具体的な発作の症状になります。中でも『全般発作』といい、全身に現れる症状です。
- バタバタと痙攣(けいれん)を起こす
- 手足が硬直する
- ヨダレが出たり泡を吹く
- 歯をカチカチ鳴らす
- 失禁する
- 意識がもうろうとするあるいは消失する
3.部分発作
体の一部にのみ現れる『部分発作(焦点発作)』が現れる場合もあります。尚、部分発作においては程度の差や継続時間が多様であることも特徴です。他の病気との判別も含めて詳しく診てもらうためにも、動画を撮影しておくと便利です。
- 唸り声や過度な発声が見られる
- まぶたや顔が痙攣する
- 不自然な姿勢を取る(顔・首・手足などが突っ張る)
- ヨダレがダラダラと出続ける
まとめ

ある日突然、愛猫の身にてんかん発作が起きてしまったら。時に激しい痙攣を伴うため、飼い主さん自身がパニック状態に陥ってしまうかもしれません。
しかし、ここで飼い主さんが慌てふためいて悲鳴をあげてしまうと、愛猫の不安が増すばかりです。
落ち着いた対応というのは難しいかもしれませんが、猫もてんかん発作を起こすことがあること、発作には必ず終わりがあることを肝に銘じておくと少しは冷静になれるかもしれません。
最後に、「てんかん」は完治が難しいでしょう。しかしながら、投薬治療によってコントロールが可能なケースもあります。
まずは医療に繋ぐこと、可能な範囲で最低限の検査を受けて根本となる原因を探ることが大切です。