図書館を巡回中のロボット猫2匹

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ブルーマウンテンズ地区の複数の図書館を巡回して働く2匹の「ロボット猫」をご紹介しましょう。
この日はスプリングウッド図書館に来ています。「読み聞かせ会」の会場には約30人の幼い子どもたちが集まり、半円状に座っています。
司書が両手に1つずつ持っているのは、猫用のキャリーケースです。中からは、まるでSF映画のように輝く瞳が2つずつ、期待に胸を膨らませた観客を見つめています。各図書館を巡回する「読み聞かせ会」には、セラピー効果のあるロボット猫「メタキャット」が必ずゲストとして登場することになっているのです。
「今までで一番ワクワクするなあ」と興奮して話す子どももいます。
ブルーマウンテンズ市当局は、ロボット猫は「不安や認知症を抱える人々に安らぎをもたらし、ストレスを軽減する効果があります」と述べています。
子どもたちに大人気

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メタキャットはニャーニャー鳴いたり、ゴロゴロ喉を鳴らしたりもします。LEDでできた動く目を持ち、柔らかくてアレルギーを起こさない毛並みを備え、シリコン製の柔らかい足が付いています。体内からは人工心臓の鼓動まで聞こえます。
頭、あご、背中にはセンサーが内蔵されており、人間が触れると反応し、特定の指令にリアルな動きで反応してくれます。
「メタキャット、大好き!」といわれると、猫たちの目がハートマークのように光りますよ。
3歳のEwanくんはこの黒猫に夢中になってしまいました。メタキャットが自分の方に頭を向けるたびに、クスクス笑ったり、興奮して喜びの叫び声を上げたりします。
「息子はこの猫に夢中です。飼い猫のDiegoに似ているからかしら」と笑うのは、お母さんのAmy Cameronさんです。
10歳のStellaちゃんは白いほうのロボット猫の毛並みに夢中。「本物みたい」と言います。一方で6歳の弟Charlieくんは、最近亡くなった高齢の茶トラ猫Snufflepussを思い出して、少し感傷的になっています。
高齢者の社会参加にも一役

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同市CEOのRosemary Dillon博士は「2024年にニューサウスウェールズ州公共図書館協会の会議でロボット猫の『メタキャット』を目にしたことがきっかけで、当市も購入を決めたのです」と述べています。
図書館長からは「職員よりも来館者が貸出カウンターの上に設置されたメタキャットに話しかけるようになりました」という報告も受けているそうです。
子どもたちだけでなく、メタキャットは高齢者の間でも予想外の人気になっています。
「この地域では高齢者の多くがひとり暮らしで、図書館に話し相手を求めてやって来ます。そんな人々にメタキャットは有益です。高齢の人々にとっても、図書館が新たな交流の場となるでしょう」(Rosemaryさん)
最近の調査によると、オーストラリア人の4人に1人が慢性的な孤独感を感じているといいます。シドニー大学の児童メンタルヘルス専門家であるAlyssa Milton准教授は「メタキャットは人々をリラックスさせ、つながりを提供する可能性があります」と述べています。
「ペットロボットや本物のペットは、子どもたちに安心感を与え、見守られているという安らぎを感じさせてくれます。発達に差がある子どもたちを支援する研究でも、ペットロボットが一定の成果を上げることがわかっています」とAlyssaさん。
「しかも図書館など公共施設は誰でも訪問しやすく、社会からの疎外感を和らげるのにも役立ちます。メタキャットは、住宅事情やアレルギーなどの理由で本物の猫や犬を飼えない家族にとって、新たな選択肢となるでしょう」
今後の活躍に高まる期待

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これまでのところ、スプリングウッド地域でメタキャットは大好評のようです。子どもたちは、この猫たちに会うために列を作って待っているほどなのですから。
StellaちゃんとCharlieくんのお母さんStephanie Lambirisさんは、実は少し離れたところに住んでいますが、この日はわざわざスプリングウッド図書館まで、猫に会うために足を運んだそうです。
2匹のメタキャットの名前は公募で決定されます。Stellaちゃんは「Snufflepuss」という名前を提案しました。
フリンダース大学の認知心理学講師Nathan Caruana博士も、このアイデアは将来有望であると考えています。読字障害や情緒障害のある子どもたちを支援するソーシャルロボットに関する研究を主導してきた彼は、こう話してくれました。
「子どもたちは注目されることを望んでいます。批判的な目で見られずに、少しでも自分にスポットライトが当てられていると感じることは、モチベーションを高めるのです。でもロボットをメンタルヘルス治療に活用できるかどうかは、今後さらに研究が必要な課題です」