動物病院を訪問せずに「ビデオ通話」

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慢性疾患を抱える猫の世話は、飼い主にとって大変なこと。定期的な通院は、猫にとってストレスも大きいのです。
カリフォルニア大学デービス校の研究者たちは、米国とカナダの猫の飼い主に協力してもらって、変形性関節症を患う猫のケアと家庭での環境改善のために、ビデオ通話による遠隔医療が役立つかどうかの実験を行いました。
「Frontiers in Veterinary Science」誌に掲載されたこの研究結果によると、飼い主が質問をしたり一般的なアドバイスを受けたりできるビデオ通話は、猫の治療に有益であるといいます。研究に参加した人の95%以上が「実際に動物病院に行くより安くすむなら、ビデオによる遠隔医療の費用を負担してもよい」と回答しました。
「遠隔医療は、猫の飼い主に助言・指導することを目的としています」と話すのは、カリフォルニア大学デービス校動物福祉疫学研究所の研究者Grace Booneさんです。彼女はこの実験のリーダーを務めました。
「大多数の飼い主は、自宅での猫のケアや運動機能の悩みをビデオで相談することに強い興味を示しています」(Graceさん)
家庭内環境改善のアドバイスも

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愛猫を定期的に獣医師に診せることは、健康の維持や問題行動の予防、症状の緩和や治療のために欠かせません。たとえば猫の関節炎は、10歳未満で約6~30%、10歳以上の猫では64~92%に見られる一般的な病気です。
「猫は痛みを隠すのが得意ですが、実は症状が深刻なことがあります。こうした状態は猫の生活の質を下げるため、対処が必要です。遠隔医療は動物病院に行かずに治療が受けられるので、猫にとってもストレスが少なくて済むメリットがあります」というのは、研究チームのCarly Moody教授です。
実験では、運動機能に問題を抱える猫の飼い主106名を募集し、アンケートへの回答を求めました。一部の飼い主は4ヵ月間にわたり3週間ごとに1回、計6回のビデオ通話による遠隔医療に臨み、その後再度アンケートに回答してもらいました。
これと比較するため、それ以外の飼い主には研究開始時と4ヵ月後にアンケートを行いました。そして研究終了時には、全員を対象に運動機能に問題のある猫のケアに関するプレゼンテーションが行われました。
「ビデオ通話では、首への負担を軽減するために食器と水のボウルを高い位置に置くことや、トイレを大きいものにして周囲の囲いを低くすること、お気に入りの場所に行けるように階段を増やすことなどを提案しました。飼い主のみなさんからは、こうしたアドバイスを受けてニーズが理解できるようになり、猫の世話に自信を持てるようになったという声もいただきました」と話すGraceさん。
Carlyさんも「猫が快適に過ごせるように、家庭で行える改善点はたくさんあります。遠隔医療によって、獣医師は猫の家庭環境を実際にカメラで見て理解し、猫にとって役立つアドバイスを行うことができるのです」といいます。
医療の効果を高める役割が

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遠隔診療にあたるのは、必ずしも獣医師でなくてもかまいません。認可された獣医療技術者や知識豊富な動物看護スタッフが電話に対応し、質問に答え、アドバイスを提供することもできます。
Carlyさんは「遠隔診療は対面での獣医療に代わるものではなく、むしろそれを補完するものです。遠隔診療をとり入れることで、飼い主と猫の負担を軽減し、飼い主のためのサポートを増やすことができます。とくに慢性的に高度なケアを必要とする猫を飼っている場合は、とても有効です」と話しています。
ビデオによる遠隔診療によって、獣医師と飼い主、そして猫とのよりよい関係を築くことが期待されます。
「対面診療はやはり必要ですが、ビデオを使った遠隔診療を加えることで、対面して診療したときの効果を高め、補完することができると考えています」とGraceさんは語ります。
今後同研究チームは、遠隔医療が肥満の解消や病気の予防にも有益かどうか実験する予定です。
出典:Telehealth Can Improve Care for Cats with Chronic Health Issues