1.褥瘡(じょくそう)を予防する

寝たきりの猫の場合、まず注意するべきなのが褥瘡(じょくそう)です。
褥瘡はいわゆる「床ずれ」のことで、寝たきりなどで関節など体の飛び出ている部分に体重が過度にかかり続けることで、その部分の皮膚の血流が悪くなり、皮膚が赤くなったり、傷ができたりする状態です。
褥瘡は、ひどくなると傷が化膿し、最悪の場合その菌が全身にまわり、敗血症など命に関わる状態に陥ることもあります。よって、寝たきりの猫では褥瘡を予防することが大切です。
褥瘡を予防するためには、こまめな体位の変換が必要です。2時間に1回は下になる体の面を逆にするとよいでしょう。
また、寝かせる場所に体圧分散マットを敷くことがおすすめです。購入する際には、シーツを交換できて洗濯機で洗えるものを選ぶと、排泄で汚れた際にも便利です。
2.体のお手入れ

猫は普段、自分の舌で抜け毛や被毛の汚れを掃除しますが、寝たきりの猫は自分でグルーミングができなくなるため、被毛の状態が悪くなることが多いです。
よって、猫が寝たきりになった場合は、毎日のブラッシングが大切です。
使用するブラシですが、病気の猫の場合、皮膚は弱っていることが多いため、ラバーブラシなどシリコン素材で肌を傷つけないブラシがおすすめです。
また、寝たきりの猫は体が排泄により汚れやすく、こまめに拭かないと、皮膚炎などを起こしてしまうことがあります。
排泄で汚れた場合はなるべく早くその部分を拭くのに加えて、全身も1日1回は濡れタオルで拭くことがおすすめです。
体を拭く際は体温が下がらないように、人肌程度に温めた濡れタオルで拭くとよいでしょう。
3.食事や飲水の介助

寝たきりの猫が食事をする際、最も気をつけるべきなのが誤嚥性肺炎です。寝たきりの猫は、咀嚼(そしゃく)の反射が鈍くなっているため、食べ物が気管に入りやすく、非常に誤嚥を起こしやすいです。
よって猫に食事を与える際には必ず体を起こして、伏せの体勢で食事や水を与えましょう。
食事を与えながら伏せの状態を保つのが難しい場合には、クッションやバスタオルを丸めたもので猫の体を挟み、体が倒れないように支えましょう。
また、猫が自分で食べてくれる場合でも、強制給餌をする場合でも、1口ずつ与えることが誤嚥性肺炎を防ぐためには大切です。
嚥下に必要な筋肉が落ちた猫は、自分でも気づかないまま、どんどん口の中にご飯を溜め込んでしまい、窒息してしまうことがあります。喉の動きをよく見て、飲み込んだことを確認してから次の一口を与えるようにしましょう。
飲水で気をつけるべきなのは、顔のそばに水を張ったお皿を置いたままにしないことです。
猫は吐き気や発熱など具合が悪い時に、水に鼻先をつける習性があります。
寝たきりの動物で意識が朦朧(もうろう)としている場合、そのまま溺れてしまうこともあるため、寝たきりの猫のそばには水を張ったお皿を置かないようにし、水を与えるときのみお皿を持ってくるようにしましょう。
4.体温調節

猫は本来、自分の一番快適な温度のところに移動しながら毎日生活しています。
しかし寝たきりの動物ではそれが自由にできないだけでなく、体が弱っている時には体温調節が難しくなり、少しの冷えや暑さにより体温が異常になってしまうことがあります。
猫にとって快適な温度は25度前後ですが、実は人と同じで、猫にも暑がり寒がりがあります。猫の体を触ったり、様子を見たりしながら、愛猫にとってベストな温度を探す必要があります。
また、エアコンや扇風機、ヒーター、日の当たる場所など、風や熱が直接当たる場所には猫を寝かせないようにしましょう。
5.口腔ケア

寝たきりで体力の落ちた猫は食事が口の中に残りやすく、歯周病や歯肉炎にもなりやすくなります。食事の後には、歯磨きシートなどで口の中を綺麗に拭き取ってあげましょう。
また寝たきりの状態で、全く飲水や食事をしなくなってしまうこともあるかと思います。しかし、だから口腔ケアが不要かと言うと、そうではありません。
猫にとって鼻や口の中は、本来は常に少し湿っているのが快適な状態です。水で少し濡らしたガーゼで、鼻や口の中を湿らせてあげると、食べなくなってしまった猫でも、少しは快適に過ごせるかもしれません。
6.気分転換

猫は寝たきりになると自由がなくなり、それは肉体的にはもちろんですが精神的にもとてもストレスのかかることです。そのため、少しでも気分転換できる時間を取る必要があります。
全身のマッサージやストレッチは猫の全身の血流をよくして、関節のこわばりや筋肉の緊張をほぐすだけでなく、飼い主さんとのスキンシップとなり、猫も喜んでくれることが多いためおすすめです。
また、終末期で猫が辛そうな場合には、そっと猫の体に手を触れて、猫の呼吸に合わせて飼い主さんも同じように呼吸するだけでも、猫の気持ちが落ち着くことがあります。
外に出ていた猫はペットカートなどで外の空気を吸わせてあげるのもよいでしょう。
まとめ

動物の介護は想像をはるかに超えるほど大変なもので、飼い主さんのストレスや疲れのケアもとても大切です。
「全て自分でやらなくては」と思う必要はありません。動物病院では日中だけ、半日だけなど、寝たきりの犬猫を預かることもたくさんあります。
愛猫は何よりも飼い主さんに幸せでいてほしいと願っているものです。飼い主さんの体や心を守るためにも、専門家を頼り、休息の時間を確保することも、大切なことのひとつです。