猫に多く見られる「がん」4種

1.リンパ腫
リンパ腫は猫で最も発生頻度の高いがんで、全身のリンパ球ががん化することで、体のどこにでも発生する可能性があります。
消化器型、縦隔型、鼻腔型、多中心型など多様なタイプがあり、嘔吐、下痢、食欲不振、体重減少、呼吸困難、リンパ節の腫れなど、発生部位によって症状はさまざまです。
診断には血液検査や画像診断に加え、細胞診や病理組織検査など、腫瘍細胞自体を採取する検査が不可欠です。
治療は主に化学療法(抗がん剤)が用いられますが、部位によっては外科手術や放射線治療と組み合わせることもあります。 リンパ腫は寛解と再燃を繰り返しやすく、長期生存が困難な場合が多いです。タイプや進行度、治療への反応によっては長期生存も期待できますが、早期発見が非常に重要となります。
2.扁平上皮癌
扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)は、皮膚や粘膜に発生するがんで、特に口の中(口腔内扁平上皮癌)、耳や鼻に多く見られます。
口の中の扁平上皮癌では、よだれ、口臭、食べにくそうにする様子、口内のただれやしこり、出血などの症状が見られます。
皮膚にできる場合は、赤いしこりや潰瘍としてあらわれるようです。早期発見が極めて重要で、外科手術が主な治療法となりますが、進行が早く周辺組織に浸潤しやすいため注意が必要でしょう。
3.乳腺腫瘍
猫の乳腺にできる腫瘍は、その約8〜9割が悪性(乳腺癌)であるとされています。初期は無症状ですが、乳腺にしこりが見つかることで発見され、しこりが硬い、複数ある、急速に大きくなるといった特徴が見られます。
進行すると皮膚のただれや出血を伴うこともあるようです。診断は触診や画像検査に加え、病理組織検査によって確定されます。特徴的な乳腺腫瘍が触知される場合は、外科手術を先に行い、摘出した乳腺を病理組織検査するパターンも多いです。
治療は外科手術による腫瘍の切除が基本となり、必要に応じて化学療法が併用されます。若齢での避妊手術により、この腫瘍の発生リスクを大幅に低減する効果が認められています。
4.肥満細胞腫
肥満細胞腫は、免疫細胞の一種である肥満細胞が異常増殖することで発生するがんです。猫では皮膚、脾臓、消化管などに多く見られます。
皮膚型では、皮膚にしこりとしてあらわれ、かゆみや脱毛、自壊を伴うことも。脾臓や消化管に発生した場合は、進行すると食欲不振、嘔吐、元気消失、腹部膨満などの全身症状が見られます。
診断は細胞診や病理組織検査で行われます。治療は発生部位によって異なり、外科手術が主な選択肢となりますが、内臓型は悪性度が高い傾向があります。
早期発見のためのチェックポイント

日常的なスキンシップとボディチェック
日頃から愛猫とのスキンシップを通じて、全身を丁寧に触ってボディチェックを行いましょう。首、脇の下、お腹、足の付け根、乳腺、口の中、耳の裏など、しこりや腫れがないかを確認してください。
皮膚の色や状態に異常(赤み、ただれ、潰瘍など)がないか、特定の場所を触られるのを嫌がらないかなども注意深く観察しましょう。
なるべく早く異変に気づくことが、がんの早期発見につながる大切な第一歩です。
行動や様子の変化に注目する
愛猫の普段の行動や様子に変化がないか、常に注意を払いましょう。食欲や飲水量の急な変化、原因不明の体重減少、元気がなくなり寝ている時間が増える、遊びたがらないといった活動量の低下は重要なサインです。
また、嘔吐や下痢が続く、血便や血尿が出る、排泄しにくそうにするなどの排泄物の異常、咳や呼吸の異変、口臭やよだれ、食べにくそうにするなどの口の状態の変化にも注意が必要です。
定期的な健康診断の重要性
猫のがんは高齢でなくとも発症することが多々あります。早期に発見するためには、定期的な健康診断が非常に有効です。特に7歳以上のシニア猫では、年に1〜2回の健康診断が推奨されています。
定期的に血液検査、尿検査、レントゲン検査、エコー検査などを受けることで、飼い主だけでは気づきにくい、体内の異常を早期に発見できる可能性が高まるでしょう。
またリンパ腫については、猫白血病ウイルスの感染により若齢で発症する可能性があります。若いうちにウイルス検査を済ませておくことで、日頃から注意するポイントがわかったり、気持ちの準備もできるでしょう。
若齢の猫であっても、上記のような気になる症状が見られた場合は、迷わず動物病院を受診し、専門家のアドバイスを求めることが大切です。
まとめ

愛猫のがんは早期発見と早期治療が鍵です。日々のスキンシップで体の変化に気づき、行動や様子のわずかな異変も見逃さないようにしましょう。
定期的な健康診断を積極的に活用し、もし気になる症状があればすぐに動物病院へ。これらの心がけが、愛猫が長く健康に過ごすための大切なポイントです。