1.野生本能が作動するから

猫は1日平均で12~16時間ほど眠ります。ほとんど寝て過ごしていると言っていいわけですが、雨の日になると、いつにも増して睡眠時間が長くなりがちです。
もともと猫は狩りによって命をつないできた動物です。野生下では、雨が降ると、必然的に獲物の動きが停滞し、狩りのチャンスが減ってしまいます。下手に動き回ったあげく、くたびれてしまったら、それこそ体力の無駄遣いです。
同時に、起源をさかのぼれば砂漠地帯出身ということもあって、猫は基本的に雨に濡れるのを嫌います。雨でびしょびしょになると、身体が冷えるうえに体力も奪われます。弱ったところを天敵に襲われれば、命を失いかねません。
雨の日は、できるだけ濡れない場所に避難し、天気の回復を待ちながら、体力温存のためゆっくり休む――それが野生下における猫の鉄則です。みなさんの愛猫にも、昔ながらの習性がしっかり受け継がれています。
2.低気圧の影響で副交感神経が優位になるから

みなさんも雨の日になると、何となく身体がだるくなることがあるかもしれません。
私たち人間と同様に、猫にも交感神経と副交感神経があります。
簡単に言えば、交感神経は「戦闘モード」、副交感神経は「リラックス・モード」です。低気圧が近づいて雨が降ると、猫の場合でも、副交感神経が優位に働いた結果、身体の緊張が緩み、眠たくなってくる可能性があります。
おうちで暮らす猫の場合、美味しいゴハンが常に用意されているので、雨の日に狩りに出かける必要もありません。
晴れの日は「狩り(活動)」、雨の日は「お休み」といったように、野生時代から培った、メリハリのあるスケジュール管理のもと、雨が降り始めれば、まるでルーティンのごとく、猫はさっさと眠ります。
これもまた生存戦略のための猫なりの知恵なのでしょう。
3.シニア猫や腎臓病の猫は雨の日がつらい

前述したように、雨の日に猫がよく眠るのは、生まれつきの野生本能や副交感神経が優位に働くからで、健康上それほど心配はいりません。
ただし、シニア猫や腎臓病、心臓病などの持病を抱える猫は、気圧の変化による影響を受けやすいので一定の注意が必要です。
シニア猫や上記の持病を患う猫の場合、低気圧の影響によって、ずっと寝ているだけでなく、症状自体の悪化、関節の痛み、食欲不振、喘息、下痢などの異変があらわれることもあります。
梅雨の時期や台風、雷雨など、悪天候が続く際は、適切な栄養摂取と水分補給を欠かさず、できるだけいつものペースを崩さないように、愛猫にゆったり過ごしてもらってください。
万が一、雨の日に、愛猫に何らかの変化が生じたら、症状が悪化しないうちに、信頼できる動物病院に診てもらうようにしましょう。
まとめ

今回は、雨が降るとなぜ猫は寝てばかりいるのか、という問題に対して、3つのアプローチから真相に迫りました。
結論から言うと、「野生本能」「低気圧の影響」「病気の可能性」、3つの要素が考えられます。
ほとんどのケースでは、健康面での影響はありませんが、シニア猫や腎臓病、心臓病などの病気を持っている猫は、症状の悪化や食欲不振など、さまざまな変化があらわれがちです。
もし雨の日が続いて、愛猫の具合が悪くなり始めたら、迷うことなくかかりつけの動物病院に相談してみてください。
特に梅雨の時期は、猫も人も気が滅入りがちです。お互いに快適に過ごせるように、生活環境に工夫を凝らして、健康的に乗り越えましょう。