【現役獣医が解説】冬によく起こる「猫の泌尿器系トラブル」について

【現役獣医が解説】冬によく起こる「猫の泌尿器系トラブル」について

猫ちゃんとの生活で、腎臓の疾患など、泌尿器系トラブルは切っても切れない関係があります。実は冬に悪化したり、変化が見られやすいトラブルでもあることをご存知ですか?どんなトラブルに気を付けたらよいのか、何に気を付けたらよいのか、お話します。

猫と泌尿器系トラブル

獣医師と猫

猫ちゃんと生活する飼い主さんが、直面する可能性が高いもので泌尿器系トラブルがあります。現在治療中の方や、一度は直面して受診をした経験のある飼い主さんも多いのではないでしょうか。

よくある泌尿器系トラブルは大まかに以下のものが挙げられます。

中高齢になると可能性が高まる腎不全

中高齢になると腎臓の機能が低下をする猫ちゃんが多いです。腎臓は代謝によって生じた老廃物を、尿中に排泄する役割を持ちます。

この機能が低下することによって、老廃物の排泄が上手くいかずに蓄積されたり、必要な水分が尿中に排出されてしまうため、体調不良へとつながります。

尿量の変化や、飲水量の増加、進行すると嘔吐や元気消失、食欲不振などで気付かれるケースが多いです。

原因不明や繰り返す膀胱炎が多い

膀胱炎の原因が膀胱の問題だけでなく、はっきりしづらい特発性のものや、何度も繰り返したり、治りにくかったりする難治性の膀胱炎が多いことも特徴的です。

膀胱炎は排尿時の痛みや残尿感などによって、尿を我慢してしまったり、排尿姿勢をとってもできない、排尿のコントロールが出来ず粗相の頻度が増えるなどの症状が見られます。

はっきりと尿中に血が混じったり色が変わることもありますが、トイレの砂の色や形状などによってはわかりづらいかもしれません。

膀胱炎が疑わしい場合は、お薬の投薬が必要になるケースが多いです。できれば尿を採取したうえで、受診することをおすすめします。

尿路が細いことにより悪化する結石トラブル

膀胱炎と同様、起こりやすいのが結石や結晶が尿中にできてしまう尿路結石です。猫ちゃんの尿路はわんちゃんと比較して細いのが特徴的です。

特に女の子よりも男の子の尿路は細く、閉塞する危険性があるため注意が必要です。結石になる前に、尿中に結晶やきらきらとした砂状のものが生じることもあります。

結石ができて尿路に詰まってしまうことで、閉塞が起こります。排尿が出来ないままでいると尿毒症と呼ばれる全身症状につながり、死に至る危険性もあるため、疑わしい場合は早期の処置が必要です。

冬に悪化しやすいトラブル

冬場の猫

特に冬場に悪化しやすいトラブルは下部尿路疾患と呼ばれ、膀胱から尿道までの部位で起こる疾患が多いです。

具体的には以下のような病気に注意が必要です。

尿路結石

尿管や膀胱などに結石と呼ばれる石ができてしまう病気です。

最初は結晶状の眼に見えないレベルの小さな粒から、大きな石状のものになって尿路をふさいでしまうこともあります。

結晶状のものが出来た場合、療法食やサプリメントで結晶を増やさない、もしくは石状に大きくしない膀胱環境や尿の性状に整え、水をたくさん飲んでもらい、どんどん体外へ尿と一緒に排出させることが治療として大切です。

冬場は活動性の低下や気温も低下することから、飲水量も減るため悪化してしまいがちです。

結石が大きくなって閉塞を起こしてしまうと、尿毒症を起こして死に至る危険性もあり、麻酔を使用した外科的な処置が必要になる場合もあります。

排尿時の変化や尿の量や性状の変化が見られた場合は早めに受診をしましょう。

膀胱炎

膀胱炎も下部の尿路疾患の一つに該当します。

猫ちゃんの場合、精神的な要因や、環境的な要因など、膀胱炎のきっかけとなる要素は様々ですが、治りにくかったり、繰り返してしまう難治性の膀胱炎も多く見られます。

投薬による治療も大切ですが、飲水量を増やし、排尿を促し、膀胱内の状態を良くすることも大切とされています。

尿路結石と同様、冬場は飲水量が減るため悪化しやすい傾向があります。排尿痛や、思うように排尿できない排尿ストレスは猫ちゃんにとって大きな負担になります。

異常に気付いたら、早めに受診をして治療をすることをおすすめします。

泌尿器系疾患をケアするために必要なこと

猫とトイレ

泌尿器トラブルは死につながる危険性があったり、排尿時の違和感によるストレスで猫ちゃんの体に負担がかかってしまう危険性があったりするため、早期治療により改善してあげることが大切です。

では家庭ではどのようなことに気を付けたらよいのでしょうか。

トイレの頻度の把握

早期発見のために、猫ちゃんの普段のトイレの頻度をある程度把握しておくと安心です。猫ちゃんの性格や体質によって、こまめにする子、まとめて少ない回数する子など様々です。

お家の猫ちゃんが問題の無い時に、どの頻度でどのくらいの尿をしているのかを把握しておけると、異常があった際に比較して気付きやすいです。

多頭飼育の場合、誰がどの頻度か把握できないという飼い主さんもいると思います。最近ではタグなどで識別しながら、AIが排尿の記録をしてくれるシステムトイレも開発されているようです。

健康管理のために、このような便利アイテムを使用してみても良いかもしれませんね。

おしっこの状態を把握

おしっこの量や性状にも有意義な情報がたくさん含まれています。尿の量はトイレの砂などにしみこんでわかりづらい場合があると思います。

そういった場合にはトイレにされた円の直径や、排尿痕の個数などで大まかな回数や量を把握することが可能です。また、性状はトイレの砂の色や形状によってはわかりづらい場合もあります。

泌尿器トラブルになりがちな子や普段から尿の管理をしたい飼い主さんは、トイレの砂の形状もわかりやすいものに変えても良いでしょう。

おしっこの性状を管理しやすい砂やペットシーツも販売されているので、試してみても良いと思います。

飲水量を把握

腎不全など飲水量が増える病気もあります。

病気発見のためだけでなく、膀胱炎や尿路結石の治療の際に、きちんと飲水量が確保できているか把握することも、状態が少しでも早く改善するために大切です。

普段の飲水量はどの程度なのか、治療でしっかりと飲水をして排尿する必要がある場合に出来ているのか、飼い主さんが把握して伝えることは受診時にとても有意義な情報になります。

ペットボトル式の飲水器を使用している場合は、大体24時間を目安にどの程度減っているかを見てみると、その子の1日の飲水量がわかります。

ボウルなどの場合、1日に入れる量を決めて測って入れた後で24時間後に再度測ると、どの程度減っているかがわかりその量が猫ちゃんの飲水量になります。

冬場は乾燥などで蒸発している場合もありますが、大まかな量は把握できるため、それだけでも充分に有意義な情報と言えます。

まとめ

排尿が正常に出来ないことで、猫ちゃんにとっても負担がかかってしまい、状態によっては死に至る危険性もある怖いトラブルです。

冬場だけでなくても起こる可能性はありますが、特に悪化してしまう危険性のある冬場は、変化にいち早く気付いてケアできると安心ですね。

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