「いつもと違う声」とは
愛猫と生活をしていると、多かれ少なかれ鳴き声を耳にするものです。たとえば、猫が食事や遊びを要求するときは「ニャーン」「ニャー」「ミャー」といった少し高めの声ですよね。
また「ニャッ」とか「ウニャッ」という短い鳴き方も、大半は喜びを表現しています。食事中なら「おいしい!」とか、玄関にいるときなら「飼い主さんが帰ってきた!」という気持ちです。このほかに、お返事をしているときもあれば、状況によって「今はやめてね!」という場合もあります。
いつもと違う声とは、普段の暮らしの中で聞き慣れない鳴き方のことです。声のニュアンスがどことなくネガティブだったり、かすれていたり、飼い主さんが「どうしたのかな?」「なんだろう?」と胸にひっかかるようならそれです。
それでは、いつもと違う声を出す理由をチェックしていきましょう。
1.猫風邪
人間も風邪をひくと鼻声になるように、猫も猫風邪にかかると鳴き声が変わります。猫風邪は病名ではなく総称で、ウイルスや細菌によって鼻水やくしゃみ、咳などの症状があらわれること。「ヘルペスウイルス」や「カリシウイルス」、「クラミジア」による感染が一般的です。
ヘルペスウイルスの感染による「猫ウイルス性鼻気管炎」は、猫風邪に共通するくしゃみや鼻水などの症状がおもに出ます。カリシウイルスが原因の「猫カリシウイルス感染症」は口の中や舌に潰瘍ができ声がかれてしまうことがあります。クラミジアによる「猫クラミジア感染症」は結膜炎からはじまるのが特徴です。
猫はどちらかというと体調不良を隠そうとする生き物。そのため、声を変えて症状を訴えるというより、症状で鳴き声が変わってしまったと考えるのが自然でしょう。
なお猫風邪のほか猫の咽頭炎でも、かすれた声やダミ声になることがあります。
2.我慢できないほどの痛み
猫には、体調不良や痛みを見せないようにする習性があります。それは自然界で生き残るためにスキを作らないという本能なのです。
よって、猫がいつもと違う声を出しているときは、よほどの痛みに耐えているサインかもしれません。もし愛猫が「ウゥ~」という低い声や、「オオー」という苦しそうな声を出していたら、猫の状態を観察してみましょう。
背中を丸めてじっとする姿や身を隠すようにしているときは、痛みと闘っているのかも。またトイレ以外で排せつしてしまうときも、猫がどこか痛がっていないか確認してみましょう。尿石症や膀胱炎などの猫下部尿路疾患で、排尿時にうなることもありますよ。
3.分離不安症
飼い主に依存するあまり、片時も離れることを許さない猫。一緒にいないことを極度に不安に感じ、鳴いたり問題行動を起こすのが分離不安症です。その精神的な負荷を発散するために、室内を荒らしたり過剰なグルーミングをします。
分離不安症の行動には、大声で鳴くことや過度に泣き続けることもみられます。猫がいつもと違う声をしていたときは、猫の様子を要観察。留守番中の行動や飼い主さんが帰宅したときの様子、家の中での後追いなど、注意して見てみましょう。
4.シニア(老猫)の場合
猫は11歳を過ぎると「老猫期」に入り、15歳を超えると後期高齢期と言われます。高齢期に入った猫がいつもと違う声で鳴き、さらに普段と違う行動をしていたら、次の病気も考えられます。
認知症
猫にも認知症があります。シニア世代に入り、目的のない徘徊や排せつ時の粗相、食欲過多に、「アオーン、アオーン」と夜鳴きをするようになったら、その疑いがあります。
甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)
7歳以上になると甲状腺機能亢進症という病気が懸念されます。徘徊や夜鳴きなど、認知症と少し似ている症状があり、甲状腺に異常がなければ認知症と診断されることもあります。
なお食欲が異常にあっても体重が増えない場合は、認知症より甲状腺機能亢進の疑いが濃厚です。血液検査を行うと甲状腺機能亢進症かどうかはすぐわかります。心配な点があれば早めに受診しましょう。
腎不全
老猫になると腎臓機能が衰えるため、腎不全のリスクが高くなります。腎不全になると、鳴き声や鳴き方に変化がおきることがあります。
5.発情
猫は性的に成熟すると発情期をむかえるようになります。発情シーズンは春や夏が多く、オスは「アオ~ン」と低くて太い声を出し、メス猫はオスより大きな声で鳴きます。
メス猫はオス猫に自分の居場所を伝え、存在をアピールします。「ン二ヤ~オ」と声を出しながらおなかを床につけ、お尻を高くあげるポーズをするのは発情期のサインです。またオス猫はオシッコをスプレーのようにまく行動が目立つようになります。
まとめ
猫がいつもと違う声を出していたら、年齢や動きを確認してみてください。分離不安なら猫の自立をうながす対策をし、猫風邪や病気が疑われる場合はすぐに動物病院を受診することをおすすめします。
声の異変が発情によるものなら、一度動物病院で相談しましょう。
もし子どもを残すつもりがなければ、オスは去勢手術を、メスは避妊手術を受けさせることをおすすめします。そのままにしていると、メスは乳腺腫瘍のリスクが高まり、オスもスプレー行動の悩みが増えます。また交尾をすることなく発情期を繰り返し過ごすことは、猫にとって苦痛ですよ。