猫の腎臓病ってどんな病気?

猫の腎臓病は、高齢の猫に特に多く見られる病気で、気づかないうちに進行してしまうことが多いのが特徴です。腎臓は一度悪くなると元に戻らないため、早期発見と適切なケアが重要です。
本記事では、「猫も腎臓病になるの?」「猫の腎臓病」の2つの視点から、初心者にもわかりやすく解説します。
猫も腎臓病になるの?

「腎臓病」と聞くと、多くの人が慢性腎不全や透析治療を思い浮かべるのではないでしょうか?人間の場合、腎臓病は高血圧や糖尿病が原因で発症することが多く、進行すると人工透析が必要になります。では、猫の腎臓病はどうなのでしょうか?
猫の腎臓病は、特に慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)が多く、高齢の猫にとって非常に一般的な病気です。腎臓は体内の老廃物を排出し、水分や電解質のバランスを保つ役割を持っています。しかし、腎臓の機能が低下すると、体内に老廃物が溜まり、さまざまな症状が現れます。
猫の腎臓病の主な症状には、以下のようなものがあります。
- 水をたくさん飲む、尿の量が増える
- 食欲が落ちる、体重が減る
- 毛づやが悪くなる
- 口臭が強くなる(尿毒症)
- 元気がなくなる、動きたがらない
これらの症状は、腎臓病がある程度進行しないと現れないため、定期的な健康診断が非常に重要です。
猫の腎臓病:診断と治療のポイント

猫の腎臓病は一度発症すると完治が難しく、進行を遅らせることが治療の中心となります。腎臓の機能低下の程度は、「IRISステージ分類」という基準で評価されます。
IRISステージ分類とは?
IRIS(国際獣医腎臓病研究グループ)は、猫の腎臓病を4つのステージに分類しています。ステージ1はいわゆるごく初期の腎機能低下のことで、このステージでは私たちが気付けるような症状はほとんど出ないです。ステージ2〜4は、それぞれ軽度、中等度、重度と3段階に分けられています。この分類に基づいて、治療の方針が決められます。早期発見・早期対策が重要であり、血液検査や尿検査で腎機能を定期的にチェックすることが推奨されています。
2023年には、IRISからガイドラインが発出され、猫の慢性腎臓病(CKD)のステージ別管理について下記のように推奨がなされています。
猫の慢性腎臓病(CKD)のステージ別管理
- ステージ1:腎毒性薬剤の中止、腎前性腎後性異常の治療、治療可能な疾患(腎盂腎炎や尿路結石など)の除外、血圧と尿蛋白/クレアチニン比の測定を行う
- ステージ2:ステージ1の管理に加え、食欲低下前から腎臓用療法食の導入を検討する
- ステージ3:ステージ12の管理に加え、脱水、嘔吐、貧血、アシドーシスなどの全身症状への対応を重視する
- ステージ4:重度の全身症状(脱水、食欲不振、貧血、嘔吐など)に対し、ステージ1〜3の管理を継続しつつ、生活の質の改善を最優先に全身管理を行う
ここでは、腎臓病の治療管理で特に要となる療法食、ラプロス、皮下点滴の3つについてご説明します。
療法食:腎臓病の管理の基本
腎臓病の猫の治療において、療法食(腎臓病用の特別なフード)は非常に重要な役割を果たします。腎臓病用のフードには、以下の特徴があります。
- リンやタンパク質の制限(腎臓の負担を軽減)
- カロリーが高め(食欲が低下してもエネルギーを確保しやすい)
- オメガ3脂肪酸や抗酸化成分を配合(腎臓のダメージを抑える)
腎臓病の進行を遅らせるためには、できるだけ早い段階で療法食に切り替えることが推奨されます。ただし、食欲が落ちている猫にとっては食べ慣れたフードからの切り替えが難しいこともあるため、少しずつ混ぜる、ウェットフードを活用するなどの工夫が必要です。
ラプロス:猫の腎臓病治療の新たな選択肢
近年、日本ではラプロス(成分名:ベラプロストナトリウム)という新しい腎臓病治療薬が登場しました。ラプロスは、腎臓の細胞を保護し、慢性腎臓病の進行を遅らせる効果が期待されています。
ラプロスの特徴は、ステージ2~3の腎臓病の猫に使用できることで、従来の腎臓病治療ではカバーしきれなかった部分を補うことができます。ただし、すべての猫に効果があるわけではなく、かかりつけの獣医師と相談しながら適切な治療法を選ぶことが重要です。
皮下点滴:脱水の管理が重要
腎臓病の犬は、尿の量が増えるために脱水しやすくなります。そのため、皮下点滴(補液)が重要な治療法のひとつとなります。
- 皮下点滴のメリット:水分補給を助け、老廃物の排出を促す
- 頻度:病状によって異なりますが、週に1~数回行うことが一般的
自宅で皮下点滴を行うことも可能であり、獣医師の指導のもとで練習しながら習得する飼い主も増えています。
まとめ

猫の腎臓病は特に高齢の猫で多く、早期発見と適切な管理が重要です。IRISステージ分類に基づいて治療を行い、療法食の導入やラプロスの使用などで進行を遅らせることが可能です。猫は食事の変更や投薬に対して警戒心が強く、特に初めは治療が難航することも少なくありません。
飼い主と獣医師、看護師、そして愛猫がチームとなって根気強くその子に合った治療方法を考えていくことが非常に大切になります。また、症状が現れる前の段階で定期的な健康診断を受け、愛猫の腎臓の健康を守ることも大切です。