鉄分のはたらき
鉄分は、地球上に存在する全ての生物が持っている成分です。生命維持に欠かせないミネラルに所属しています。
では、この鉄分は具体的にどのような働きをするものなのでしょうか。
酸素の運搬
鉄は赤血球の色素であるヘモグロビンと結合し、全身に酸素を運びます。
免疫細胞の活性化
体内に侵入したウイスルや細菌は、免疫細胞の活躍によって退治されます。免疫細胞の活動や増殖には、鉄の存在が必要不可欠です。
活性酸素の除去
活性酸素はシンプルにいうと、体内の細胞をサビつかせる物質です。活発になると老化が進んでしまいます。
鉄には、過剰に増えた活性酸素を分解するはたらきがあります。
コラーゲンの生成
鉄はタンパク質やビタミンC、脂質などと協力し合ってコラーゲンを生成します。
コラーゲンは、骨や皮膚組織、血管を正常に保つために重要な成分です。
鉄分が不足するとどうなる?
鉄は体内に取り込まれる量と、失う量がほぼ同じです。さらに貯蔵鉄という蓄えがあります。
猫の場合は、外傷による出血や出産などの特殊な状況を除いて滅多に不足することはありません。
しかし何らかの事情で不足すると、次のようなトラブルに見舞われます。
1.口内炎や胃炎
鉄分が不足すると、粘膜が荒れてしまいます。これに亜鉛不足が加わると口内炎ができやすくなります。胃の粘膜が荒れると胃炎の原因になります。
2.骨折や皮膚疾患
鉄が不足すると、コラーゲンの生成に影響を及ぼします。コラーゲンが減少することで骨が脆くなったり、皮膚組織を正常に保つことが困難になります。
よって、骨折や皮膚疾患が起こりやすくなります。猫の場合は被毛に覆われているので目立ちませんが、内出血によるアザもできやすくなります。
3.感染症にかかりやすい
鉄は免疫細胞の活動に欠かせません。不足すると免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなってしまいます。さらに口内炎もできやすくなります。
猫の口内炎は、1度できると治りにくいことも特徴的です。そのため、できてしまう前に予防することが大切です。
猫も食べられる!鉄分豊富な食材
人間が口にする食材の中には、猫が食べても安全なものがあります。その中で、鉄分が豊富なものを紹介いたします。
赤みの牛肉
肉類には「ヘム鉄」が豊富に含まれています。ヘム鉄はタンパク質と結合した鉄分で、効率よく小腸に取り込まれます。
体内で鉄分を必要とする箇所に行き渡っている鉄分は、このヘム鉄です。
新鮮な牛肉であれば生でも食べられますが、家猫は生肉に慣れていないので、火を通したほうが良いでしょう。尚、味付けはしないでください。
レバー
レバーも牛肉と同様に、ヘム鉄が豊富な食材です。火を通したものであれば、猫も食べることができます。
ただしレバー特有の風味には個体差があり、あまり好まない猫もいるようです。
小松菜
小松菜はアブラナ科に属する野菜で、火を通したものは猫も食べることができます。結石に関与する「シュウ酸」の含有量も、ほうれん草の1/15程しかありません。
野菜に含まれる鉄分は「非ヘム鉄」です。これはタンパク質と結合していない鉄分のことで、取り込むためには1度ヘム鉄の形に変換しなければなりません。小腸への吸収効率は、ヘム鉄に劣ります。
非ヘム鉄を取り込む際は、ビタミンCやタンパク質と一緒に摂取すると効率が良くなります。逆に食物繊維は吸収を阻害するため、同時に摂取しないほうが良いでしょう。
鉄分の過剰摂取に気をつけて!
鉄分を過剰に摂取すると、便秘や胃の不快感、過度に鉄分が溜まる「鉄沈着症」を引き起こす恐れがあります。
食品からの摂取であれば過剰になることはないので問題ありません。ただし、猫に人間の食べ物を与える際は少量に留めておきましょう。
一方で、サプリメントの長期服用は過剰摂取につながる可能性があります。獣医さんの判断なしに飲ませることは控えましょう。
まとめ
秋から冬にかけては、猫も風邪をひきやすくなります。猫の場合は過去にひいた猫風邪が再発することもあるため、免疫力を維持することが大切です。
鉄分は免疫系のはたらにきにも作用するので、栄養バランスの整ったフードを食べさせてあげましょう。
鉄分不足を過度に恐れる必要はないですが、食品で補う分には問題ありません。好んで食べる食材があれば、トッピング程度に加えてあげると良いでしょう。