1.慢性腎不全
猫に最も多い病気は慢性の腎臓病です。なぜ腎臓病が最も多いかというと、猫という動物の体質に要因があります。
「頑張れちゃう」猫の腎臓
猫という動物のルーツをたどると、もともと砂漠地帯に生息していたとされています。砂漠には水が少ないので、少ない飲み水でも生きていけるように腎臓の機能が強化されたと考えられています。
腎臓が強くなったのならなぜ?と思いますが、腎臓が「頑張れてしまう」からこそ腎臓への負担が蓄積しやすいと言えます。猫がなぜ腎臓病を起こしやすいのか理由ははっきりと解明されていませんが、このような猫のルーツからくる体質が大きな要因となっていると考えられています。
高齢猫のほとんどが慢性腎不全を起こすと言われるほど
慢性腎不全は徐々に腎臓の機能が低下していくという病気で「高齢猫のほとんどが慢性腎不全になる」と言われるほどかかりやすい病気です。多飲多尿の症状から現れることがほとんどで、その後には脱水状態から尿毒症へと悪化していきます。
老廃物の排出という役割がある腎臓の機能が衰えることで、なんとか老廃物を排泄しようとして血流が活発となり高血圧になることもあります。また腎臓で「造血ホルモン」が不足し、貧血を起こす場合もあります。
慢性腎不全を予防するには
腎臓は一度壊れると再生できない臓器なので、症状が進行していくとやがて末期の腎不全となり命にかかわる病気です。そして慢性腎臓病になると完治することがないため、できるだけ進行を抑える延命治療となります。そのため慢性腎不全は病気にかかる前からのケアが重要となります。
- たくさん水を飲んでもらう工夫
- 塩分少なめのおやつを選ぶ
- 定期的な健康診断で早期発見
このような対策で愛猫が若いうちから予防を意識しましょう。愛猫の飲水量を増やす意識は大変重要です。ウェットフードを取り入れたり、猫ちゃんが好む水飲み器を用意したりするなど工夫をしてみましょう。
定期的な健康診断によって腎機能低下の傾向がみられたら、タンパク質やリンを制限した療法食が処方されることがあります。獣医師の指導の下、腎臓をいたわる食生活に切り替えて腎機能を温存していくことも大切です。
2.下部尿路疾患(FLUTD)
下部尿路疾患とは、膀胱から尿道までの「下部尿路」に起こる病気の総称です。
- 尿路結石
- 尿路感染症
- 膀胱周辺の腫瘍
- 膀胱炎
などの病気があり、複数を併発することもあります。猫に特に多いのが「特発性膀胱炎」と「尿路結石」です。
特発性膀胱炎は「明らかな原因がわからない膀胱炎」のことで、膀胱炎の症状である血尿や頻尿が見られます。「尿路結石」は腎臓~尿管~膀胱~尿道というおしっこの通る道の中で尿結晶や尿結石ができる病気です。結石の種類は「ストルバイト」と「シュウ酸カルシウム」が多いです。
結晶や結石が膀胱や尿道を傷つけたり、結晶が結石へと進行し大きくなると尿道に詰まって排尿が困難になったりする恐れもあります。
下部尿路疾患の予防対策
下部尿路疾患の予防には、
- 飲水量を増やす工夫
- ストレスを溜めない
- トイレ環境を良好に保つ
などが有効です。
しっかりお水を飲んでもらう
下部尿路疾患の予防にも「飲水量を増やす」ことが重要です。飲水量が少ないとおしっこが濃くなりやすく、結晶が結石へと進行しやすくなります。飲水量を増やしておしっこを適切に排出することで、結晶が結石になるのを抑えることができます。
満足なトイレ環境
トイレが汚れたままである、トイレがある場所の「暑い・寒い」「音がうるさい」などの問題によって、猫ちゃんが「トイレに行きたくない」と感じてしまうと排泄をガマンしてしまうことも。猫ちゃんにとって快適なトイレを用意してあげることも重要です。
ストレスを溜めない
特発性膀胱炎の原因ははっきり分かっていませんが、大きな要因に「ストレス」があると考えられています。猫はストレスを感じると交感神経が活発になり、膀胱に炎症が起きやすくなるということが分かっています。猫ちゃんのストレスを軽減するために生活環境を見直してあげることも大切です。
3.下痢
アイペット損害保険株式会社が発表した「保険金請求が多い傷病のランキング」によると、2020年の第1位は「下痢」という結果となっています。下痢が1位になるのは3年連続とのことで、お腹が緩くなってしまう猫ちゃんが多いことが分かります。
猫が下痢を起こす原因
猫が下痢を起こす原因は、
- 食事
- 誤飲誤食
- ウイルスや寄生虫などの感染症
- 持病によるもの
- ストレス
など、様々です。下痢を起こす原因は多岐に渡るので、多方面から下痢を予防してあげる必要があります。
- 急にフードを変えない
- 食物アレルギーに注意する
- ストレスを軽減する工夫をする
- 誤飲誤食をさせないよう注意する
- 人間の食べ物を与えない
- ワクチン接種で感染症を予防する
このような対策で愛猫の下痢を予防しましょう。「急にフードを変えない」というのは「食物アレルギーに注意する」と「ストレスを軽減する工夫」にも繋がる注意点です。いきなりフードを変えることは猫にとって「生活の大きな変化」となるため、ストレスとなる恐れがあります。
そして初めてのフードが体質に合うか分からない状態でいきなり与えるという不安や、食べ慣れない食材にアレルギーを発症する可能性などもあります。フードを変更する場合には体調の様子をチェックしながら、1週間くらいかけて徐々に切り替えていくと安心です。
早急に受診した方が良い下痢の様子
下痢の症状が他の病気のサインである場合もあるため、
- 下痢状態が続いている
- 血便が出ている
- 形がない水っぽい下痢である
- 便に粘液が付着している
- 食欲不振や嘔吐など他の異変もある
- 幼猫である
このような場合は早めに受診しましょう。できれば排泄したての便も持参して検査してもらうと、より正確な診断の手助けとなります。
まとめ
「慢性腎不全」や「下部尿路疾患」などは猫がかかりやすい病気としてよく耳にしますが、保険料請求の理由で最も多いのが「下痢」であることは意外でした。身近な病気と感じやすい下痢症状ですが、脱水症状を起こしたり他の病気の心配もあったりするため油断ならないものです。
病気はかかってからの早期発見も重要ですが、やはり未然に防ぐ意識が最も重要です。猫がどんな病気にかかりやすいのかを知っておくと日頃の生活から予防することができたり、万が一かかってしまっても早期に症状に気付きやすくなったりします。
みなさんも愛猫の体調を、健康であるうちからケアしてあげてください。