猫が持っている菌で発症する病気と予防策

猫が持っている菌で発症する病気と予防策

猫が保有する菌やウイルスによって人が病気になることを知っていますか?人獣共通感染症の代表的なものと、菌がうつる原因、飼い主さんができる予防策についてまとめました。必要以上に怖がらず予防策をとって猫と接しましょう。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

猫が保有している菌やウイルスによる病気

抱っこされる猫

人獣共通感染症の中で猫が保有している菌やウイルスによる代表的な病気には以下のものがあります。また猫を飼育していて感染する可能性がある寄生虫による感染症もご紹介します。

猫ひっかき病

病名の通り、猫に引っかかれたり、咬まれたりすることで人に感染する病気です。

猫の口の中や爪に付着しているバルトネラ菌による感染症です。すべての猫がバルトネラ菌に感染しているわけではなく、日本では1割程度の猫が感染しているといわれています。

猫がバルトネラ菌に感染しても無症状ですが、人が感染すると水泡ができたり化膿したりします。さらに1~2週間すると首や脇などのリンパ節が腫れ、数週間から数か月で自然に治ります。他には発熱や頭痛などの症状がみられますが、重い症状が出る場合もあります。

パスツレラ症

猫の口の中や爪に必ず存在するパスツレラ菌の感染による病気です。猫に咬まれたり、ひっかかれたりすることで感染し、抵抗力が弱い人や高齢者の発症が多いとされています。

猫の常在菌であるため猫は無症状です。人が感染すると、喘息や肺炎など呼吸器の病気、傷口の激痛や化膿、リンパ節の腫れなどの症状があらわれます。髄膜炎などの重症では死亡例も出ています。

皮膚糸状菌症

糸状菌という真菌による感染症です。いわゆる「カビ」が皮膚に生える病気です。免疫力が低下していると、糸状菌に感染している猫からうつることがあります。

猫が皮膚糸状菌症を発症するのは、他の病気の合併症、新しく猫を迎え入れたとき、多頭飼育の環境などで多いです。

猫が感染しても、フケや脱毛など軽い症状となることが多く、子猫で多発するとされています。人が感染すると円形、リング状の発赤や、水ぶくれ、かゆみなどの症状がみられます。

重症熱性血小板減少症

SFTSウイルスによる感染症です。このウイルスはマダニが媒介し、マダニに人や猫が咬まれて感染、感染した猫に咬まれる、看病をするなど接触することで感染します。

猫が感染すると、発熱や食欲がなくなるなどの症状がみられます。人が感染すると猫と同じように発熱や消化器に症状があらわれ、意識障害、頭痛、皮下出血などが起こることがあります。致死率が30~60%と高いことが特徴です。

コリネバクテリウム・ウルセランス感染症

コリネバクテリウム・ウルセランス菌による感染症で、人や猫以外の動物にも感染します。

この菌は私たちのまわりに普通に存在する菌ですが、毒素を作り出す菌に変異すると健康に悪影響を及ぼすようになります。

猫が感染すると、くしゃみや鼻水、目やに、元気がないなどの症状が出ます。感染した猫の鼻水や唾液に菌が含まれ、このような症状の猫に濃厚接触することで人にも感染する菌です。

人に感染すると、風邪に似た症状や、呼吸困難など重い症状がみられる場合もあります。

トキソプラズマ感染症

トキソプラズマ感染症は、トキソプラズマという原虫による感染症です。トキソプラズマのオーシスト(卵のような形態)が人の口の中に入ることで感染します。

人が感染する経路は終宿主である猫のうんちからです。トキソプラズマのシストという球状の形態で感染した中間宿主であるネズミなどを食べたり、すでにトキソプラズマに感染した猫のうんちに含まれるオーシストを摂取することで猫は感染します。

トキソプラズマの驚くべきところは、感染したネズミの脳をあやつることで猫を怖がらせなくし、猫に食べられるようにしてしまうという点です。

猫がトキソプラズマに感染した場合、健康な猫であればほとんど症状はありませんが、子猫の場合は亡くなるケースもあります。

人に感染した場合、健康であれば症状が重くなることはあまりありませんが、妊婦が感染すると胎児に影響が出る場合があります。
生の肉に寄生していることがあり、生肉を食べることで人と猫どちらも感染の可能性があるので注意が必要です。

トキソカラ症

線虫に属する猫回虫という寄生虫による感染症です。猫の場合、母子感染や、感染した猫のうんちに含まれる虫卵が原因で感染します。人の場合、感染した猫のうんちに含まれる虫卵が口から入ることで感染します。

猫が回虫に感染すると、成猫では特に症状はありません。子猫に多数の回虫が感染すると、お腹が膨れたり、発育不良、下痢、便秘、嘔吐などの症状がみられます。

人に回虫が感染すると、卵から幼虫となり、幼虫が内蔵や目に侵入します。肺、脳、目など侵入した臓器によって症状は違います。

猫から菌がうつる原因

人の指を咬もうとする猫

猫が咬む、ひっかく、なめる、猫に触れる

人獣共通感染症の原因となる菌の多くは、猫の口の中や唾液、爪、皮膚に存在しています。咬まれたりひっかかれたりして人へとうつるケースが多いです。

猫に咬まれることはなくても、猫が人の食器や毛布、人の手などをなめて菌が付着し、それが人の口へと運ばれることも菌がうつる原因です。

健康であれば発症することはほとんどありませんが、抵抗力が弱い赤ちゃんや高齢者は注意が必要です。

猫の排泄物

猫の排泄物に菌や虫卵が含まれている場合、何らかの理由で口の中に入り感染してしまうことがあります。

過剰なスキンシップ

猫にキスをしたり、同じ食器を使用したり、猫との接触の仕方でうつってしまうことがあります。

猫から菌を貰わないためにできる予防策

掃除機と猫

猫を室内で飼育する

飼い猫が外に出ると、野良猫と接触したり、狩りをしてネズミを食べたりするため、猫から人に感染する病気の原因となる菌やウイルス、マダニを持ち帰り、発症する可能性があります。

保護した猫を飼う場合は、動物病院で検査を受けさせましょう。

定期的に猫の爪を切る、ブラッシングをする

猫に引っかかれてケガをすることで菌に感染するケースがあります。定期的に猫の爪を切りケガを防ぎましょう。

ブラッシングをすることで、皮膚病の早期発見につながります。

猫トイレ、飼育環境を清潔に保つ

猫が排泄をしたらなるべく早く処理をしましょう。また、飼育環境は通気を良くして湿気がこもらないようにし、掃除機をかけるなど清潔に保つようにします。

過剰なスキンシップを避ける

猫と食器を共有する、猫にキスをすることなど過剰なスキンシップは避けましょう。また、猫が嫌がるようなスキンシップは咬まれることがあるので注意が必要です。

猫を触ったら手を洗う

様々な感染症の予防で手洗いは基本です。猫を触った後の手洗いはもちろんですが、飼い主さんが外から菌やウイルスを持ち込まないためにも、帰宅したら猫に触れる前に手洗いをしましょう。

猫にノミ、ダニの予防薬を投与する

室内で飼育していても、ノミやダニの予防薬で対策をしましょう。室内でも寄生する可能性はあります。

まとめ

人の指をなめる猫

どんなにかわいい猫でも、猫が持つ菌やウイルスが原因で人が病気になってしまう可能性があります。

人獣共通感染症というもので、猫が感染していても無症状である場合が多く、知らずに飼い主さんも感染する可能性があるのです。必要以上に怖がらず、適正に飼育することを心がけましょう。

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