魔女の使いが猫なのは?
魔女と言えば、ほうきとともに猫のイメージがありますよね。それも黒猫がほとんど。猫は魔女の使いと言われ、絵画などでも魔女と猫はセットで描かれていることが多いです。
なぜ魔女に猫なのか
- 黒猫はその姿から闇に紛れることができる
- 足音を立てないで歩くことができる
- 暗がりでも目が見える
そんなところから、暗闇の中で行動する魔女のパートナーにぴったりというわけなのです。また、中世のヨーロッパでは、黒猫は魔女の仲間や、魔女の化身という考えもありました。魔女と猫は、今ではジブリ映画で人気の「魔女の宅急便」にもあるように、かわいらしく描かれていることが多く、ハロウィンの仮装でも魔女は女子に人気のモチーフのひとつです。
魔女と猫は
ところが、もともとはそうではなく魔女と猫は不吉な恐ろしい存在でした。人間を魔女に仕立て上げ、猫はその魔女の使いであると決めつけてきたのもまた人間です。魔女と猫の組合せというイメージが生まれたのには、悲しい歴史があります。
魔女と猫の関係
猫は魔女の使いであると言われてきました。つまり猫は魔女のお手伝いをしていたのです。魔女の使いが猫であるわけは、もともと魔女と猫は深いつながりがあったからだと思われます。
古代エジプトのバステト
古代エジプトではバステトという女神があがめられていましたが、バステトの顔は猫です。古代エジプトでは猫を神聖なものとして崇拝していました。バステトは夜を照らす月の象徴でもありました。猫と月のつながりは、暗闇で光を反射して光る猫の目にあるようです。
魔女集会
バステトは次第にギリシアローマ神話における神々と融合し、それがヨーロッパに広められていきました。特にディアナという神に比重が置かれるようになりますが、古代のディアナ信仰では、年に4回信者たちが集う集会がありました。これがサバト(魔女集会)と呼ばれるものです。
この魔女集会に参加する信者たちは、猫などの動物の仮装をしていたそうです。そこから魔女は黒猫に変身するという迷信が生まれました。
魔女集会であるサバトが行われるのは人里離れた森や洞窟でしたが、周囲では、集会に行く信者たちは、猫やほうきに乗っていくと噂されるようになります。そのため魔女はほうきに乗って、猫を連れているというイメージが広がったのだと思われます。
ペストの大流行と魔女狩り
中世になると、ヨーロッパではペストが大流行します。このペストは魔女が引き起こしているものとされ、無実の女性が魔女の疑いをかけられて、何人も処刑されました。処刑された魔女の数は3万5000人とも、10万人とも言われています。これがいわゆる「魔女狩り」です。
魔女の疑いをかけられたのは一人で暮らしている女性が多かったのですが、一人暮らしの女性は寂しさからでしょう、よく猫を飼っていました。猫の特徴や習性の目の大きさが変わる、足音を立てないで歩く、といったことから魔女の使いではないかと言われるようになりました。魔女の疑いをかけられた人々だけでなく、魔女の使いであると言われた猫たちも、処刑の対象になってしまったのです。
魔女と猫にまつわる迷信
ヨーロッパの迷信
ヨーロッパでは今でも黒猫は不吉とされることがあります。黒猫が横切ると不吉で、黒猫をまたぐと不幸が訪れると言います。黒猫が魔女の使いと考えられていたことから、生まれた迷信なのでしょう。
イタリアの黒猫殺し
イタリアでは近年まで、不吉だからという理由で、黒猫が殺されていました。今では動物愛護団体によって、この習慣はなくなりましたが、神として崇められていた猫が、魔女の使いとして不吉なものに変わってしまうなんて悲しいですね。
イギリスの迷信
でもイギリスでは、黒猫は幸運の象徴であるなど、良いイメージで受け止められている所もあります。
まとめ
古代エジプトで神と崇められていた猫は、やがてヨーロッパで魔女と結びつけられるようになります。特に黒猫は、闇にも紛れてしまうような真っ黒な毛色をしていることとから、魔女のパートナーとして最適のようでした。
猫は音もなく歩けることや、暗がりでもものが見えるということも魔女の使いとされる理由です。また魔女狩りが行われていた中世ヨーロッパでは、魔女の疑いをかけられた人たちが、猫を飼っていることが多かったことからも、魔女と結びつけられてしまったのです。
その結果、多くの猫が魔女と呼ばれる人たちとともに殺されてしまいました。悲しい歴史です。
今でも黒猫は不吉とする国や地域もありますが、逆に幸運のシンボルであるという見方をする所もあります。人の都合で神になったり、魔女の使いになったり、不吉だ、幸運だと言われる猫たち。
今、目の前で私たちを癒してくれている猫たちに、そんな歴史があったことも覚えておいてくださいね。もう二度と魔女の使いと恐れられて猫たちが迫害されるような時代が来ませんようにと祈ります。