猫はマタタビが好きな理由
「マタタビ(木天蓼)」とは、マタタビ科マタタビ属の植物です。マタタビの実にハエやアブラムシが卵を産みつけることで変形したものを「虫えい果」と呼び、これが猫の好物として知られています。
マタタビの枝や実、粉末にしたものやスプレー状にしたものの匂いを嗅いだり食べたりすると、猫は酔ったように体をくねくねしたりゴロゴロ転がったりするマタタビ反応を見せます。
なぜ猫はマタタビで反応するのでしょうか?猫がマタタビを好きな理由には、マタタビに含まれる成分が影響していることが明らかになっています。
理由1:マタタビラクトンで中枢神経が刺激されるから
マタタビに含まれる「マタタビラクトン」という成分が、猫の口蓋の奥にある「ヤコブソン器官」で感知されることで、中枢神経が刺激され猫が興奮するといわれています。
ヤコブソン器官はフェロモンを感知する器官で、マタタビの成分を感知すると脳に信号が送られ性的興奮を引き起こす媚薬として作用するようです。
そのため、メスや子猫はマタタビへの反応が比較的薄く、オスは反応が強いという傾向があります。オスでも去勢した後だと反応が薄くなることが多いです。
理由2:ネペタラクトールで陶酔状態になるから
2021年1月に岩手大や京都大、名古屋大などの研究チームにより新たなマタタビ反応のメカニズムが発表されました。
これまで明確にマタタビ反応の理由や意味はわかっていませんでしたが、研究により猫が最も反応を引き起こすマタタビの成分が「ネペタラクトール」だということが判明します。
ネペタラクトールを嗅いだ猫は脳内麻薬の濃度が上がり、多幸感を感じて陶酔状態になります。マタタビの匂いを嗅いだ猫が幸せそうにうっとりしているのは、実際に幸せな気分に浸っているからなのです。
理由3:ネペタラクトールに蚊よけ効果があるから
マタタビに含まれるネペタラクトールという成分は、猫が酔うだけでなく、蚊よけ効果があることも研究により明らかにされました。
猫がマタタビをすりすりと体に擦りつけるのは、マタタビの匂いを体につけることで蚊よけ効果を得ようとしているからです。
猫にとって蚊は、寄生虫やウイルスを運ぶ忌避すべき存在です。かつて、蚊が多くいる茂みの中で獲物を狙っていた習性から、猫科の動物は蚊よけ効果のあるマタタビを本能的に体につけようとするのではないか、という有力な説があります。
犬はマタタビに反応しないのに、猫やトラ、ライオンなどの猫科の動物は反応する理由は、蚊から伝染病を移されることを予防したいという本能があるからなのかもしれません。
猫にマタタビを与えることで期待できる効果
猫にマタタビをあげると、様々な効果が得られます。
匂いを嗅いだり舐めたり食べたりすることで、脳が活性化したり陶酔感を引き起こして幸せな気持ちになったりするので、それを利用してしつけなどに活かしましょう。
リラックス効果
マタタビにはリラックス効果があります。
猫も引っ越しや新たな猫を迎え入れるなどの環境の変化の際には緊張してストレスを感じるため、緊張感を和らげるためにマタタビを使うのが効果的です。
しつけに効果的
猫のしつけがなかなかうまくいかない時がありますよね。たとえば、爪切りやブラッシングをするために猫に膝に乗ってほしいのに乗ってくれない、そのような時にもマタタビを使うのがおすすめです。
猫の鼻先にマタタビを近づけ、匂いで膝の上まで誘導します。膝に乗ってくれたらご褒美としてマタタビを与えることで、膝に乗るとご褒美がもらえると学び、言うことを聞いてくれるようになります。
シャンプーを頑張った後や、苦手な薬を飲んだご褒美としてもマタタビは有効です。
他にも、爪とぎの場所を覚えさせるのにもマタタビが役立ちます。爪とぎ器にマタタビ粉やスプレーをかけておくとそこで爪とぎをするようになります。
同じようにしてトイレの場所を覚えさせることも可能です。
爪とぎをしてはいけない場所でしてしまったり、トイレを失敗してしまったりすることに悩んでいる場合はマタタビを使って正しい場所を覚えさせましょう。
食欲増進に効果的
食欲が低下すると猫は栄養が足りずに、健康上の問題を引き起こしてしまう可能性があります。猫の食欲増進にもマタタビは効果があります。
キャットフードや水にマタタビ粉を少量混ぜておくと、猫が興味を持って食べてくれたり水分補給をしてくれたりするので安心です。
食べる量が減って心配な時や、脱水にならないように水を飲んでほしい時に、マタタビを活用してみましょう。
猫の興味を引き、懐かせるのに効果的
子猫の頃に人とのふれあいが少なかった猫は、なかなか懐かない性格になることが多いです。保護猫を引き取る場合などは、猫に懐いてもらうために工夫することが大切です。
マタタビには、猫の興味を引きやすいというメリットがあります。マタタビの匂いを体につけて近づくと、猫の方から興味を示し、すり寄ってきてくれる可能性が高まります。
また、マタタビを仕込んだおもちゃを使うと、猫が喜んで遊ぶのでストレスや運動不足が解消でき、コミュニケーションも取れるのでおすすめです。
マタタビに猫が興味を持つことを利用して、迷子猫の捕獲をスムーズにすることも可能です。迷子猫を無理やりに捕まえるのではなく、猫が自分から来てくれるように仕向けることがポイントです。
捕獲器にマタタビをセットして猫が出現しそうな場所に、ごはんやおもちゃと一緒に設置します。マタタビの匂いにつられてやってきた猫が、マタタビに反応してリラックスしている時を見計らって捕まえましょう。
猫にマタタビはいつから与えていい?
猫にマタタビをいつから与えるかは安全のために考慮したいポイントです。
子猫は器官や脳が未発達なため、マタタビの刺激が強すぎてパニックを起こしてしまう可能性があります。十分に成長した生後6カ月~1歳になってから、少量ずつ与えてみるのがよいでしょう。
マタタビを使った商品には何歳から使用しても大丈夫か明記してあるものもあるので、対象年齢を確認してから与えるようにしてください。
マタタビに慣れないうちは、軽く匂いを嗅がせるだけなど、猫の反応を確かめながら少しずつ慣らしていきましょう。
マタタビの正しい使い方
マタタビには様々な形状があり、効果の強さも異なります。どのように使えばいいのか、どのくらいの頻度で使えばいいのかを解説します。
マタタビの形状と効果の強さ
マタタビには様々な形状があります。市販のマタタビ粉は乾燥させたマタタビの実を粉末にしたもので、他にもスプレーとして使う液体状のものや、実、枝や木、葉など種類が豊富です。
形状によって効果の強さも異なり、粉末は最も強いマタタビ反応を引き起こします。粉末の次が液体、次が実、枝や木、葉の順に効果は薄まります。
それぞれの種類が持つ強度に合わせて、使用量も調整する必要があるので気をつけましょう。
与える量や頻度
猫にとってマタタビの適量がどれくらいかはわかっていません。
少し匂いを嗅ぐだけで大きく反応する猫もいれば、全く反応しない猫もいます。体質に合わせた使い方や適量を見極めましょう。
初めて与える時はごく少量を使って様子を見ましょう。食べたり舐めたりして直接体内に取り入れるよりも、匂いを嗅ぐことから始めるのがよいでしょう。
また、マタタビは毎日与えていると反応が薄くなってしまいます。ご褒美やしつけなど何らかの目的があるときのみ、与えるほうが効果的です。
いざというときに効果があるように、マタタビを与える頻度にも注意しましょう。
マタタビの与え方
猫にマタタビを与える方法は匂いを嗅がせるか、食べさせたり舐めさせたりするの2パターンです。
匂いを嗅がせる場合は、おもちゃにマタタビを仕込んで遊ばせるのがおすすめです。転がすとおやつが出てくるタイプのおもちゃに、おやつの代わりにマタタビを入れると猫が夢中になって遊んでくれます。
マタタビ入りのぬいぐるみも販売されているので、猫に遊ばせてストレス解消や運動不足解消に役立てましょう。
実や枝タイプのマタタビは、おもちゃとして噛んで遊べます。噛むことで歯も丈夫になり、ストレス解消にもなるのでおすすめです。
実や枝は効果も控え目なので、マタタビ反応が強い体質の猫や慣れていない猫でも安心して使えます。
新しい爪とぎ器に慣れさせたい時には、粉末やスプレーをふりかけましょう。気に入って使ってくれる可能性が高まります。
マタタビの匂いは警戒心の強い野良猫すら虜にする効果があります。野良猫を安全に保護したい時には、マタタビの匂いで酔わせてから捕まえるのがおすすめです。
ただし、逆にマタタビの影響で興奮して暴れてしまうというケースもあるので、猫の反応次第でその後の対応を考えなくてはなりません。
匂いを嗅がせる使い方は、刺激は弱いですが効果の持続時間は長めです。一方で、効果は短時間ですが、刺激が強いのが食べさせたり舐めさせたりするという方法です。
マタタビの粉末をキャットフードや水に混ぜて食べさせると、食欲増進効果が期待できます。マタタビが配合されたおやつも数多く販売されているので、愛猫が気に入るものを探してみましょう。
猫にマタタビを与える時の注意点
マタタビを与えると猫に喜ばれる一方で、量やアレルギーに気をつけないと、思わぬ危険な症状を引き起こすリスクもあります。
愛猫にマタタビを与える前に、注意点をしっかりおさえておきましょう。
過剰摂取で呼吸困難や凶暴化する危険性がある
マタタビそのものに中毒性はなく、依存症になる心配もありません。しかし、大量のマタタビを摂取することで猫が異様な興奮状態になって、攻撃性が上がってしまう場合があります。
凶暴化した猫が暴れたり、他の猫と喧嘩をしたりしてケガをする危険性があるので、マタタビが効きすぎるのもよくありません。興奮している猫は飼い主さんを噛むこともあるので、接する際には気をつけましょう。
また、過剰摂取でマタタビが喉に詰まったり、興奮状態でどこかにぶつかったりした結果、呼吸困難になるというリスクも考えられます。
長時間呼吸ができない状態が続くと、最悪の場合は死亡してしまうので、飼い主さんが目を離したすきに喉に詰まらせたり大量に食べたりしないように注意しましょう。
猫が勝手にマタタビを食べないように、保管場所にも気をつけてください。
アレルギーのある猫
マタタビでアレルギー反応を引き起こしてしまう猫もいるので、与える際はアレルギーがないか確認する必要があります。
マタタビを食べたり舐めたりしなくても、匂いを嗅ぐだけでくしゃみをしたり、体がかゆくなったり発疹が出るという猫もいます。下痢をしたり吐く場合もあるので、少しでも異常が見られたらそれ以上マタタビを与えるのはやめましょう。
初めは軽く匂いを嗅がせるなどして様子を見て、アレルギー反応がないか確かめてから本格的に与えるようにしてください。
心臓に持病がある猫や老猫、てんかんを持つ猫への使用は注意
マタタビによって興奮状態になることは、心臓病の猫や老猫にとっては悪影響となる可能性があります。心臓などの負担を考慮すると、マタタビの使用には注意が必要です。
また、マタタビと同じような効果を猫にもたらす「キャットニップ」というものがあります。
マタタビが効かない猫でも、キャットニップなら反応する場合が多く、マタタビの代用品として使われますが、キャットニップにはてんかん発作を起こす危険性があるのです。
キャットニップは研究により、ラットがてんかん発作を起こしやすくなったことが報告されています。
念のために、猫もてんかん発作を持っている場合は使用しないように注意喚起がされており、キャットニップと似た効果を持つマタタビも与えないほうが安全です。
てんかん発作を起こすと体が震え痙攣したり、よだれが出て口から泡を吹いたりし、場合によっては脳に悪影響を及ぼしたり命に関わることもあります。
たとえ愛猫がマタタビを好んでも、安全を第一に考えて禁止にしましょう。
使いすぎると効果がなくなるので注意
毎日のようにマタタビを与えていると、効果は次第に薄くなってしまいます。
シャンプーをするときや動物病院に連れて行くときなど、猫が嫌がることを頑張らなくてはならない時のご褒美や、しつけが必要な時に役立つように使うタイミングには注意しましょう。
マタタビを普段からあげすぎて、いざという時に猫が全く反応しないということがないように、与える頻度は週に数回程度にとどめましょう。
マタタビを使ったおすすめ商品5選
マタタビを使った猫用の商品が販売されています。人気の高いおすすめのものをご紹介しますので、愛猫が喜ぶアイテムを見つけてあげてください。
スマック またたび (純末)
猫が好む虫えい果の純粉を100%使用したロングセラー商品です。爪とぎ場所のしつけやストレス解消のために、週2~3回を目安に使用してください。
フードにかけると食いつきがよくなるので、食欲が低下している猫の健康のためにも活用できます。
コメット またたび抽出液スプレー
虫えい果から抽出した、高純度のマタタビ抽出液をスプレーにして使用できる商品です。爪とぎ場所のしつけや、喧嘩中の猫の気をそらせるのに使いましょう。
防腐剤や添加物を一切使用せずに作られているので、猫の体にも優しく安心です。
スマック またたび玉オーラルケア
マタタビの粉末をコーティングしたおやつです。口臭や歯垢の沈着を予防するオーラルケア効果もあるので、美味しく食べながらお口の健康を維持できます。
ペティオ (Petio) 猫用おもちゃ けりぐるみ エビ
猫が夢中になって遊べるマタタビの実が入ったエビのおもちゃです。ネコキックしやすい形状が特徴で、ストレス解消や運動不足解消に効果的です。
猫が一人でキックして遊ぶのにも最適ですが、ぜひ飼い主さんも一緒に遊んでコミュニケーションを取ってあげてください。
猫用 天然 100% マタタビ 乾燥 枝
九州産の天然100%のマタタビの枝を乾燥させた商品です。おもちゃにして遊んだり、噛んでストレス解消したりしつけに利用したりと幅広く使用できます。
苦手なケアを頑張った日のご褒美や、食欲がない日に与えてみてください。
まとめ
マタタビの匂いを嗅いだり、マタタビを食べたり舐めたりすると、猫が酔ったようにくねくねゴロゴロする可愛らしい姿が見られます。
マタタビに含まれる成分が猫に作用して、リラックス効果や興奮する効果をもたらすことがわかっています。緊張を和らげたい時や食欲を増進したい時、しつけやご褒美などにマタタビは活用できます。
ただし、過剰摂取は猫が興奮して攻撃的になったり、呼吸困難を引き起こす危険性があるので注意が必要です。アレルギーや持病がある猫もマタタビの悪影響が心配なので控えましょう。
猫用のマタタビ製品は様々な種類のものがあるので、愛猫に適した商品を選び正しい使い方をして、しつけやコミュニケーションに役立ててください。