猫が交尾する「繁殖期」と「発情期」
交尾が行われる「繁殖期」と「発情期」は混同されがちですが、猫の場合だと主な繁殖期は、2~4月の春先と、6~8月の夏の年に2回です。その繁殖期間内に2~3週間程度のサイクルで、発情期が繰り返されるようになります。
発情期があるのはメス猫だけ
猫は1年中妊娠できるのではなく、発情期の間だけ可能になります。発情期は妊娠可能な年齢のメス猫にのみ起こり、年に数回、特に春頃の繁殖期に多くみられます。
オスには明確な発情期は認められていません。メスの発情に誘発されるように発情します。
人間以外のほとんどの哺乳類には、猫と同じような発情期があります。
メスの発情周期
人間が「自然排卵」なのに対して、猫は「交尾排卵」といって、交尾があった時だけ排卵する体のしくみになっています。したがって、不要になった子宮内膜を体外に排出するための生理出血はありません。
メスの発情周期は、個体差はありますが大体2~3週間で一巡します。その間に交尾・妊娠がなかった場合は、繁殖期間内に何度か発情期を繰り返します。
猫の交尾を誘発するメスの発情サイクル
発情前期(1~20日間)
女性ホルモンのエストロゲンの分泌が増えて活発になると、メスは発情期特有の行動をしはじめるようになります。体をクネクネして床や人にこすりつけたり、普段とは違う大きな鳴き声を上げたり、尻尾をピーンと立てて尿を噴射するスプレー行為がみられたりします。
このスプレー行為で噴射される尿には、オス猫を引き寄せるフェロモンが含まれています。メスの鳴き声やスプレーのフェロモンに反応すると、オスも発情が始まります。
メス猫の鳴き声を真似したり、スプレー行為でメスにアピールしたり、複数のオス猫が1匹のメスに集まって、喧嘩が勃発することもあります。しかし、たとえ喧嘩に勝利できたとしても、必ずしもメスが交尾を受け入れるわけではありません。
発情前期のメス猫はマウンティングは許しても交尾を許すことはしません。オス猫はメスが受け入れてくれるのをひたすら我慢して待つのみ。猫の恋はメスが主導権を握っているのです。
この時期の猫は、オスもメスも異性を求めて放浪したくなる時期です。飼い主さんは脱走に注意しましょう。
発情期(4~14日間)
この時期になって、メス猫はオスの交尾をようやく受け入れるようになります。発情期に入ったメスは両前足を伸ばして上半身を地面に着け、お尻を高く持ち上げて、膝を曲げ尻尾を上げた状態で、体を左右に揺らすロードーシスと呼ばれる行動をとります。
メスと交尾ができるのは喧嘩に勝ったオス猫とは限りません。いくら喧嘩に強くても、メス猫が気に入らなければ、容赦なくフラれてしまいます。場合によっては、喧嘩を傍観していたオス猫の中から、交尾の相手が選ばれるようなケースもあるとか。
交尾排卵である猫は、交尾のたびに妊娠する可能性が高いため、複数のオスの子供を同時に妊娠することがあります。
発情後期(1~3日間)
発情後期になると、それまで盛んにしていた発情行動が収束に向かいます。メス猫は、再びオスの交尾を許さなくなります。
この時期に、子宮蓄膿症を発症する場合があります。発症した場合、メス猫の体重は徐々に増え、お腹もふくらんで、あたかも妊娠しているかのような様相を呈します。水をたくさん飲む、熱がある、お腹がふくらむ、陰部から膿が出るなどの症状がみられたら疾患の疑いがあるので、獣医さんで診察を受けた方が良いでしょう。
発情休止期(5~10日間)
猫の恋の季節の終わりです。完全に発情行動は収まり、メス猫はオスへの関心を失います。もしオス猫がメスのお尻を嗅ごうと近づいたなら、きつく叱られ追い払われることになるでしょう。
猫の交尾行動とは
ライバルの中から、メスのお眼鏡に適い選ばれたオス猫は、晴れてメスに近づき交尾行動を開始します。
交尾のおおまかな流れは次のとおりです。
- オスがメスにネップグリップして、マウンティング体勢をとる
- オスのペニスをメスに挿入
- 射精後、オスはメスから飛び降りる
- メスはその場でゴロンと転がり、外陰部周囲を舐めてきれいにする
これで1回の交尾が終了します。
オス猫が体を離す瞬間に、7割以上のメスがオスを振り返り攻撃行動をとると言われています。
1回の交尾が平均して1~9分続き、最初の2時間で3~6回交尾します。その後、休憩を挟みながら、24時間で15回程度交尾が行われることも珍しくありません。
まとめ
猫の交尾はとても効率的な子孫繁栄のシステムであるといえます。交尾すればほぼ確実に妊娠できるので、猫は非常に繁殖力が強く多産です。多いときは、一度の出産で8、9匹くらいまで産むことができます。乳首が8個あるので、8匹までは同時に授乳することも可能です。
妊娠期間は長くて70日間。年間2~4回出産するので、1匹のメス猫から1年間で10数匹以上の子猫が生まれる計算になります。野良猫の数がなかなか減らないのも、猫の繁殖力が強いためといえるでしょう。
発情期に伴う大きな鳴き声、スプレー行為や喧嘩、放浪など、発情行動は飼い主さんにとっても悩みのタネになるのではないでしょうか。しかし、発情は動物としての生理現象なので、猫自身がコントロールすることや、人間がどうこうできる現象ではありません。発情期中は食欲も減退し、睡眠も十分取ることができず、猫にとってもつらい期間ともいえるのです。
生まれてくる子猫はとてもかわいいものです。しかし、望まない繁殖は悲劇でしかありません。不本意な繁殖を防ぐためにも、問題行動の改善のためにも有効なのが去勢・避妊手術です。生殖器系の疾患のリスクもなくなるメリットもあります。繁殖の必要がない、また、生まれた子猫を育てていく環境でないのであれば、去勢・避妊手術を受けることをお勧めします。