猫は霊感があるのか その鋭い感覚とは

猫は霊感が強いのか

壁の一点を見つめ続ける猫……

何もいないし何も聞こえないのに、壁の一点をジィーッと凝視する猫。ただの暗闇に向かって、いきなり威嚇する猫。何もない空間に鳴き声を上げる猫。

こうした光景を、猫の飼い主さんならば一度は目にされたことが、あるのではないでしょうか。人間には不可解なこういった行動をとる猫たちは、むかしから霊感の強い動物と考えられてきました。

たしかに闇夜に光る目やしなやかな体、可愛らしくもどこか妖しげな鳴き声、気まぐれな行動など、猫はミステリアスな魅力にあふれた生き物です。不思議な能力を持っていると言われたら、思わず納得してしまいそうです。西洋において、猫は魔女の使いと考えられていたという話は有名ですよね。

猫の霊感の正体は鋭い感覚？

しかし実際のところ、本当に猫に霊感は備わっているのでしょうか。霊感のある無しは、現代の科学ではまだ白黒ついてはいない分野です。これからの研究で、霊感の存在が証明される日がくるかもしれません。ですが現時点で、猫の不思議な行動の説明として有力なのは、猫の鋭敏な感覚です。

聴覚を始めとする優れた感覚で、猫はさまざまな情報をいち早くキャッチしているのです。それらはごく小さな音だったり気配だったりするので、私たち人間に感じ取れるものではありません。

したがって、「（私たちには）何も聞こえないのに、猫が不思議な行動をしている！きっと霊がいるに違いない！」イコール「猫は霊感が強い」となるわけです。

猫の霊感の正体は優れた聴覚

猫の五感（視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚）のうち、一番優れているものは聴覚です。とくに高い音域の音を聞き取る能力に優れています。なんと65,000ヘルツほどの音でも聞くことができるとか！

対して人間は20,000ヘルツ程度。しかもこれは10代までの数値で、年齢が上がるにつれて聞こえる音域は更に狭まります。ちなみに一時期話題になった、若者にしか聞こえないというモスキート音は17,000ヘルツ前後です。

猫たちは鋭い聴覚を使い、ネズミなどの鳴き声や物音を素早くキャッチして狩りを行います。また、まだまだ遠くで鳴っている雷や雨の音を聞くことにより、早いうちから安全な場所に避難できるというメリットもあります。さらにあの可愛らしい猫の耳は、音がどこから聞こえてきているか、方角まで判別してしまう優れものです。

猫が壁をジッと見ている行動は「霊感だ」「幽霊だ」と騒がれがちですが、人には聞こえない動物の声や虫の出す音、通りすがりの人の声、隣家の生活音や遠くの雷などに耳を澄ましているのかもしれません。

猫の霊感の正体は高性能レーダーのヒゲ

猫はヒゲを使って自分の周りのいろいろな状況を把握しています。ヒゲの役割として、対象物との距離感を測るためという話は、ご存じのかたも多いと思います。その他にも

• 湿度や気圧の変化を感じる
• 風や空気の流れを感じる
• 耳でも聞こえないほどのかすかな音を空気の振動から感知する

など、霊感というよりむしろ超能力?!と驚いてしまうような機能が満載です。

猫が何もない所に向かって鳴いたり威嚇したりする時は、こうした周囲のかすかな変化から危険を敏感に感じ取り、警戒心を表している可能性が考えられます。

猫の霊感の正体は妖しく光る目「タペタム」

猫が霊感を持っていると言われる理由のひとつに、暗闇でキラリと光る目などの、神秘的な要素が挙げられます。この闇夜で目が光る現象は、網膜の裏側にある「タペタム」と呼ばれる器官が関わっています。

このタペタム、一言で言えば反射鏡。一度網膜をすり抜けてしまった光を反射してもう一度網膜へと送り、暗い場所でも物をよく見えるようにするためのものです。

タペタムのお陰で、猫はかすかな光の中でも行動することができます。夜行性の猫には必須ですよね。猫の写真を撮った際に目が光って写ることがありますが、これもタペタムの仕業です。決して心霊現象ではありませんよ！

まとめ

こうして見てみると、猫は私たちには想像もつかないような世界を感じながら生きているのかもしれませんね。普通の人には見えない、聞こえないものを感じとる不思議な力を霊感と呼ぶのであれば、「猫は霊感が強い」というのはある意味で正しいと言うことも、できるのではないでしょうか。

もっとも、霊感の存在は未知の分野です。猫には本当に強い霊感がある！と判明することが、この先ないとは言い切れません。それはそれでとてもワクワクしますし、猫の持つ神秘性に拍車がかかりそうですよね。とりあえず、猫が不思議な行動をしていたら邪魔しないように静かに見守ることだけが、今の時点で私たちにできることなのかもしれません。