公共の場での野良猫の餌やりが禁止に
2021年、米国カリフォルニア州のウィードシティ市議会で、野良猫への餌やりを制限する条例が可決されました。
ウィードシティの住民は長年にわたって野良猫問題に悩まされており、最近はさらに増加して30~40のコロニー(野良猫が集まる場所)ができています。
今回の条例により今後は公共の場所での野良猫への餌やりが禁止され、私有地ではその土地の所有者の許可がある場合に限り、猫への餌やりが認められることになりました。
違反した場合は軽犯罪とみなされ、最高500ドル(約5万7000円)の罰金または最長6カ月間の禁固刑が科されます。
野良猫問題に疲弊する地元住民やボランティア
市議会にて、2021年5月から3回にわたり実施された野良猫についての話し合いの結果、シスキュー郡周辺の野良猫を世話している住民やボランティアの多くが、野良猫の多い状況に疲弊していることが明らかになりました。
市と一般市民は次のような解決策について検討しています。
- 特定の住民宅の庭で餌やりを行う
- 餌場を設置する
- 捕獲して去勢・避妊手術を行い元の場所に戻す
- 去勢・避妊手術をせず餌やりもせずに猫に自力で生活させ、飢餓により衰弱したら安楽死させる
引き取り先が見つからない限り、これらの方法ではいずれも猫を今現在いる環境から守ることはできず、いずれはどこかで路上死するか、どこかの施設で安楽死させられることになるでしょう。
野良猫は寒さや飢えに耐え、病気に感染してさらに他の動物にも感染させることがあります。
また、餌場に寄って来たアライグマやコヨーテに威嚇され攻撃されたり殺されたりすることもあります。
市の報告や一般市民の説明によると、こうした猫たちはボランティアなどから餌をもらっているか否かに関わらず過酷な環境の中で日々を生きているのです。
様々な意見が述べられ白熱する議会
議会では市長に招かれた一般市民が様々な意見を述べました。
ある女性はこの条例案には反対であるとし、命を思いやり敬ってほしいと訴えます。
一方、野生動物学者であるという別の女性は、「野生で暮らす何十億もの鳥類や哺乳類、爬虫類や両生類の動物が毎年野良猫によって殺されている」という統計データを読み上げました。
また別の女性は、「人間はどれだけ多くの植物や動物の死に対し責任を負っているか分かりますか?これまで人間は野良猫よりもはるかに多くの動物を殺してきたのではありませんか?」と問いかけます。
さらに、今回の条例案ではまだ不十分であるという男性もおり、「捕獲して安楽死させ廃棄する方が、捕獲してからまた元の過酷な環境に戻すより人道的ではないのか」という意見を述べました。
「猫を外で飼っている人や転居してそのまま猫を捨ててしまった人たちについてはどうするのか」と、尋ねる女性もいました。
この日の議会では意見を述べた人の半数以上が条例案に反対しています。
完璧な解決策はないのかもしれない
ウィードシティのスーザン・タべレロ市長は、「所有者の許可さえあれば私有地に餌場を設置しても全く問題ない」ということを念押ししました。
実は市が最初に提案した条例案では、公共の場所および私有地のいずれでも野良猫への餌やりを禁止していたのです。
ケン・パラフィニ市議は最後に、「野良猫の問題に完璧な解決策はありません。すべての人を満足させることはできないのです。今はこれが最善の策ではないでしょうか」と述べ、条例の承認決議の動議を提出しました。
最終的に、議会は満場一致で条例を可決したのでした。