米国2020年ペットブームの裏側|パンデミックによるスタッフ減少に喘ぐ動物シェルター

例年とは異なる繁忙期に動物シェルタースタッフは大忙し

米国デンバーの動物福祉団体は、新型コロナパンデミックの第1波により繁忙期に遅れが生じ、2021年後半に入ってから一気に多忙な状況となりました。

Denver Animal Shelterのサービスマネージャーであるメーガン・ディルモアさんによると、1年の後半は例年であれば暇な時期とのこと。

しかし2021年後半は非常に忙しく、現在スタッフは基本的な清掃作業をこなすためほぼ毎日残業していると言います。

2021年12月1日現在、310頭もの動物を収容している同施設では、利用者や動物の急増、人員不足、動物の収容期間の長期化といった様々な理由が重なりすでにフル稼働の状態とのこと。

市の公衆衛生環境局の一部である「Denver Animal Shelter」では、迷子になった猫など飼い主への返却や保護動物の譲渡支援、飼い主が放棄した猫・犬の受け入れなど、様々なサービスを行っています。

数か月で猫などのペットが施設に急増

カスタマー・ケア・マネージャーのトレイシー・コスさんによると、ここ数カ月は利用者や猫・犬などの出入りが非常に多く、2021年11月は2年前の11月と比べて利用件数が400件増加。

さらに2021年12月は、同じく2年前の同月と比べて2,000件増加しているそうです。

これらの業務にはペットの譲渡、ワクチン接種、許可証の発行、店舗での販売、迷い犬や迷い猫の飼い主への返却、安楽死の依頼、罰金の支払いなどが含まれます。

また12月に利用件数が多かったのは、寄付の通知が多かったことや譲渡件数が2年前と比べて2倍に増加したことが一因でもありました。

とはいえ、2021年全体で見ると利用件数は10,000件も減少しています。

おそらくこれは2021年初めに利用者が少なかったためで、利用者はパンデミックのため施設の利用を先延ばしにしたのではないかとコスさんは考えます。

ペットブームと言われた2020年に米国ではペット譲渡数が減少

一方、一般では2020年にペット譲渡数が急増したと言われています。

しかしアメリカ獣医師協会の発表では、動物シェルター4,000施設のデータにおける同年の譲渡件数は、この5年間で最低を記録しています。

「Denver Animal Shelter」では、2020年と比べて2021年は700件も譲渡件数が増加。「Denver Dumb Friends League」でも、2020年から2021年で譲渡数が増加しました。

ペットが増加していると言われたのは、「おそらく誰もがペットを欲しておりそれだけ需要が高かったからかもしれません」と、同施設のスティールさんは言います。

2020年は猫・ペットの収容数が減少

実際のところ、2020年にはシェルターに収容される動物が減少し、譲渡件数も大幅に減少しました。

スティールさんは2020年に動物の収容数が減少した原因として、

「パンデミックにより人々の生活が一時的に停止し、ペットたちも飼い主とともに自宅に閉じこもっていた。そのため迷子になったり遺棄されたりするペットが少なかったのではないか」と推測します。

動物の収容数が減少したことに加え、2020年は新型コロナに伴う待機的手術の実施規制により犬や猫は一時的に避妊・去勢手術を受けることができなくなり、このために譲渡可能な動物が減少しました。

その反面、ペットのネグレクトは増加していると見られ、ディルモアさんによると虐待やネグレクトのためにDenver Animal Shelterに保護された犬や猫の数は2019年から2021年で50%以上増加しています。

同施設ではこうしたネグレクトの状況も詳細に調査したいと考えているものの、現状では2019年と比べ76%も増加した収容動物数に対処する必要があります。

深刻なスタッフ不足に喘ぐ動物保護施設

デンバーの動物シェルター「MaxFund Animal Adoption Center」のマネージャー、セリナ・デイヴィソンさんによると、「パンデミック以降スタッフが32人から12人に激減し、深刻な人員不足に陥っている」とのことです。

同施設は2021年11月、新たな猫シェルター「Meow Manor」をオープンしました。

Meow Manorには約80頭の猫を収容できますが、スタッフ不足のため猫を施設内に移送する計画が中断しています。

同施設のキャシー・ゲインズ理事によると、「主要業務を行う獣医師や動物看護士を十分に確保することができていない」とのこと。

ゲインズさんは、2022年の第一四半期末までに猫を新たな施設に収容できればと考えています。

2020年は世界的にペットブームが起きていると言われていたものの、実際の動物保護施設の現場では、現在様々な問題に頭を悩ませているようです。