サンフランシスコで野良猫激増|コロナ渦のペットブームで獣医師疲弊・去勢避妊手術間に合わず

TNR活動が思うように進まず野良猫が激増

米国のサンフランシスコ・ベイエリアでは、昨今野良猫が激増しています。

また専門家によると、コロナ禍の影響もあり野良猫に避妊・去勢手術を受けさせるのが困難になっているそうです。

野良猫は、川床や高速道路沿い、スーパーマーケットの裏などどこにでも見られますが、その地域から野良猫を追い出しても、空いた場所にさらに別の野良猫が住みついてしまいます。

野良猫を増やさないために最も有効な方法は、捕獲して去勢・避妊手術をして元の場所に戻す「TNR」と呼ばれる方法です。

カリフォルニア州コントラコスタ郡を拠点とする猫の保護団体「Community Concern for Cats」は、ボランティアを派遣して野良猫を一時的に捕獲し、避妊または去勢手術を行っています。

こうした活動を行わないと野良猫が爆発的に繁殖してしまうためです。

「猫2匹を避妊・去勢せずにいると、3~4年で数百匹に増えることもあるでしょう」とボランティアスタッフのレネー・エマーソンさんは言います。

外部獣医師の協力が減少

Community Concern for Catsのジェマ・ボイド会長は、「最近は一般の動物病院などに勤める外部の獣医師が、保護団体のために動物の避妊・去勢手術をしてくれなくなってしまった」と言います。

以前は、わずか数でも保護団体のためにこうした処置を行ってくれましたが、現在は病院の業務に大きな負荷がかかっているため団体からの依頼を断らざるを得ないのです。

この原因の一つとして、パンデミック中にペットを飼う人が増大したことから動物ケアの需要が増大したことが挙げられます。

過重労働が招くスタッフ離れ

カリフォルニア大学デービス校「Koret Shelter Medicine Program」に所属するケイト・ハーレー博士は、「ただでさえ動物看護士が不足していたところに昨今の動物ケアの需要増加でさらに負担が増している」と言います。

中には過重労働により燃え尽きて職場を離れるスタッフもおり、残されたスタッフにかかる負担がさらに大きくなるという悪循環が生じているそうです。

野良猫の捕獲ボランティアであるモンティ・マントバンさんは、避妊・去勢手術クリニックの予約に空きができるまで動物を捕獲するのを待たなければなりません。

彼は、猫をすぐにクリニックへ連れて行けるよう‟クリニックに予約を入れている時にだけ”猫を捕獲しようとしますが、予約を入れた日に必ずしも猫を捕獲できるとは限らないそうです。

これ以上野良猫を増やさないためにすべきこと

一方、ハーレー博士は、動物病院で避妊・去勢手術の実施のみについて訓練を受けた「公認の技術者を育成するクラス」を設けてくれればと考えています。

猫の保護活動家らによると今現在一般の飼い主にできることは、「自分の飼い猫に確実に避妊・去勢手術を受けさせこれ以上野外で生きなければならない猫を増やさないようにする」ことだそうです。

獣医療現場の負担をこれ以上増やさないためにも、一般の飼い主の避妊・去勢に対する意識を高めることが大切かもしれませんね。