イギリスでは昨年、猫の福祉の向上や供給過多の解消のため、認可を受けたブリーダーのみに猫の販売を許可し、第三者による猫の販売を禁止する法律が施行されました。
ところが、イギリス国内ではコロナ感染防止のためのソーシャルディスタンス規制を利用した、悪質な子猫の販売詐欺が急増しているそうです。
猫の販売詐欺事件が多発
2020-21年度、イギリス国内の詐欺およびサイバー犯罪の通報窓口であるAction Fraudには、1146件の猫販売詐欺事件が報告されました。これは2019-20年度に報告された190件の5倍以上です。
被害者の平均被害額は昨年度の169ポンド(約26000円)から216ポンド(約33000円)とかなり増えています。
猫の保護団体であるキャッツ・プロテクションによると、こうした詐欺を行う悪徳業者は、まず猫をインターネット販売サイトやソーシャルメディアを介して販売します。
ところが、購入希望者にはソーシャルディスタンスの規制を口実にして、母猫と一緒にいる子猫を事前に見せようとしません。このため、購入者は初対面で子猫を引き取ることになります。
また、こうした子猫は病弱であったりすでに病気にかかっていたりすることが多いのです。
子猫が健康的に育つためには生後8~10週まで母猫と過ごす必要があるとされていますが、こうした子猫たちは、おそらくそれよりもずっと幼い時期に母猫から引き離されていると考えられます。
購入時から病弱の子猫も
ソーシャルメディアで見つけた子猫を購入し詐欺にあったサマンサ・ウェブさん(32歳)によると、業者から購入した際に手渡された子猫はすでに弱々しく、足はびっこを引いて目も開いていなかったそうです。また、インターネットで紹介されていた子猫とは全く似ていませんでした。
彼女は子猫の料金30ポンド(約4600円)を支払ってすぐに病院へ連れていきましたが、子猫はわずか生後4週間ほどで小脳低形成という神経疾患を抱えていたそうです。
またこれは、母猫がウイルス感染していたことが原因でした。
サマンサさんは、いったんこの子猫を迎えたもののある日容体が急変し、すぐに病院へ連れて行きました。しかし、容体の急激な悪化のため安楽死させるしかありませんでした。
猫の数が急増した理由
イギリスでは、2020-21年度に34万頭の猫がインターネットで販売され、イギリス国内の飼い猫は昨年の1020万頭から1080万頭に増加しています。
犬猫の保護施設であるFerne Animal Sanctuaryによると、昨年はコロナの影響で獣医は緊急を要する動物の治療のみを行い、メス猫の避妊手術は行わなかったそうです。
このため、子猫の数が爆発的に増えており、さらにロックダウンが解除されて以降、猫の世話が困難となり猫を手放す人の数も急増しています。
Ferne Animal Sanctuaryをはじめとする動物保護施設には続々と保護された猫が連れてこられており、施設は常に満杯状態です。
こうした状況を軽減するため、また猫の販売詐欺を防止するためにも、猫を飼いたいと考えている人にはぜひ保護猫を引き取ることも検討してほしいものです。