「キツネネコ」の新種としての承認に向けた活動
フランス領のコルシカ島に生息する「キツネネコ」は、これまで地元住民でさえその姿をほとんど見たことがない伝説の動物とされてきました。
ですが近年その調査研究が進んでおり、研究者らは現在キツネネコの新種としての承認を目指しています。
キツネネコの新種としての承認申請に向けた活動はフランス生物多様性局(OFB)が主導しており、2022年には重要な研究結果をまとめた論文を公表する予定です。
さらに、この論文は生物種探査国際研究所にも提出され、同研究所がキツネネコを正式に生物種リストに加えるか否かを決定します。
ただし、このリストに追加されるのは1年に10種のみであるのに対し、新種として申請される生物は年間1万8000種もあるそうです。
地元住民もほとんど見たことがない
ピエール・ベネデッティ氏が率いる狩猟・野生動物局(ONCHS)の小規模チームは、2008年からキツネネコの研究を行っています。
ベネデッティ氏は、コルシカ島の山間でヒツジやヤギを襲うというキツネネコの話を子供の頃から聞かされてきました。
言い伝えによると、イエネコよりも大型で特徴的な模様があるキツネネコは、雌ウシの群れに忍び寄りその乳を飲んでいたそうです。
子供の頃からキツネネコにまつわる話を聞いてきたものの、ベネデッティ氏も以前はその姿を見たことはありませんでした。
彼はコルシカ自然区域・陸上野生動物管理部の部長としてキツネネコを追跡し、この10年間で約20頭のキツネネコを捕獲しています。
徐々に解明される生態や遺伝子学的特徴
調査チームは、キツネネコの隠れ場所となる岩のある所や獲物のいる森にケージを仕掛け、餌や臭いなどでキツネネコをおびき寄せます。
そして数頭を捕獲し、その後麻酔をかけて体長や体重を測り写真を撮ってから再び自然に放します。
キツネネコは尻尾を含めると体長85cmほどですが、特徴となるのはそのサイズではありません。
キツネネコはキツネとは関係のないネコ科の動物で、実はイエネコの祖先です。
とはいえ、毛色や毛質、耳の幅など様々な要素でイエネコと区別できるそうです。
長距離移動が可能
キツネネコにGPSのついた首輪を付けて追跡したところ、彼らはかなりの長距離を移動することができ、標高2000mまで登ることができることが明らかになりました。
一方、リヨンやパリにいる科学者も遺跡で発見された骨から、その遺伝子や歴史を調査してキツネネコの研究に協力しています。
ベネデッティ氏は、「もちろんこの仕事には情熱を持って取り組んでいます。情熱がなければ、その存在さえ不確かなキツネネコのためにこうした仕事を続けることはできません」と言います。
キツネネコを生物種として承認させるためには、キツネネコのゲノム解析を完了させ、その遺伝子表現型の特徴を解明して発表。その後ようやく生物種としての申請工程に着手できるそうです。
現在はまだ知る人ぞ知るキツネネコですが、今後の研究成果が楽しみですね。