「猫の恋」は春の季語!俳句で使われる猫の入った言葉

「猫の恋」は春の季語!俳句で使われる猫の入った言葉

季語に、猫が使われている俳句が何百数とあります。猫と言う一文字ではなく「猫の恋」と合わさって季語になっており、春を意味します。春夏秋冬で季語として用いられています。「猫の恋」が春の季語の意味や俳句を紹介します。

「猫の恋」は春の季語

ハートのクッションと見つめ合う猫

あの声は 何いふ事ぞ 猫の恋【正岡子規】

春になると猫の交尾の時期が来ます。猫の騒がしく、鳴きわめく様子を表現しているそうです。

淡雪や 通ひ路細き 猫の恋【寺田寅彦】

作者が飼っていた三毛猫を描いた作品です。
雌猫を取り合う猫の性格は様々あり警戒する猫や、道路に堂々と寝そべる猫などを見ながら家路に帰る様子が伺えます。淡雪も春の季語だそうです。

うつ>なに 泣く児あやすや 猫の恋【高橋淡路女】

夢か現実かはっきりしない状態で、恋の春に夢見る気持ちも、現実は違うと言う気持ちではないでしょうか。

諫めつつ 繋ぎ居にけり 猫の恋【炭太祇】

春の時期に猫が外に出ていくのを、忠告しながら紐で繋いでいると言う意味合いがあるようです。

この月夜 いつか見たりき 猫の恋【山口誓子】

見たりきとは、見た·見ていたと言う意味から懐かしく思う気持ちなのでしょうか?

恋猫と はやなりにけり 鈴に泥【阿波野青畝】

はやなりにけりの意味合いから、鈴に泥が付いてしまう結果になってしまったと言ってるような俳句ですね。

声たてぬ 時が別れぞ 猫の恋【加賀千代女】

猫の恋も、別れのときが来たら静かに離れていくと言う気持ちのようにも読み取れます。

月の出の 夜々におくる猫の恋【山口誓子】

月の出る夜ごとに送り届ける、と言う意味から恋する気持ちを表しているようです。

寝て起て 大欠して 猫の恋【小林一茶】

一晩中寝て起きては、自然に相手のことを思う気持ちが伝わります。
大欠とは大あくびと言う意味です。

またうどな 犬ふみつけて 猫の恋【松尾芭蕉】

恋をする猫は、犬も踏みつけてでも、相手の元に向かおうとするパワーがあると伝えているようです。

うらやまし思ひ切る時 猫の恋【越智越人】

猫の恋はすぐに終わる、煩悩断ち難い人間の一人として、羨ましく思う気持ちを描いてるようです。

「猫の恋」の意味

くっついて歩く二匹の猫

俳句の季語として「猫」と言う単体だけでなく、語を組み合わせて季語になります。
日常的な言葉ではなく、言葉から季節が感じられることが大切なのではないかと思います。

猫の繁殖期から「猫の恋」か春の季語になった

「猫の恋」は春季語として用いられています。
猫の恋と言われる意味としては、冬から春にかけて猫が交尾期にあることから、「猫の恋」として使われています。

発情期の猫の甘えた声や狂ったように鳴く声、泣き叫ぶ声などと言うように、恋をする猫の気持ちを季語として、俳句で読まれているようです。

猫は、人間にある理性と言うものがなく、本能のままに生きていますが、その行動が良くも悪くもとれるのではないでしょうか。
オス同士でメス猫を取り合ったり、振られてしまって落ち込んだりする恋愛模様が儚くせつない気持ちと交じり俳句とされているのかも知れません。

有名な俳人には猫好きが多かった

猫のように本能のままに突き進む様子が、人間の恋愛を恐れ、行動力のなさから猫を羨む心があるのではないでしょうか。
また、正岡子規や小林一茶はかなりの猫好きとして有名です。子供のように大事に見守る気持ちが俳句に表れているのだと思います。

「猫の恋」以外の季語

春夏秋冬

「猫の恋」と同じ意味の春の季語

  • 麦めしに やつる>猫か 猫の妻【松尾芭蕉】
  • 猫のこの くんずほぐれつ 胡蝶哉【室井其角】
  • 春の猫 夕づく炉端に めざめけり【西島麦南】
  • 団栗と はねつくらする 子猫かな【小林一茶】

春の季語が猫の恋とされる前は、「猫の妻」と言われていたようです。
そして、「猫のこ」=猫の恋の子と言う意味から、季語も春を指すそうです。

猫にまつわる夏の季語

  • うしろから 猫の飛びつく 袷哉【正岡子規】
  • 竹の子に 身をする猫の たはれ哉【森川許六】
  • 猫も聞け 杓子も是へ 時鳥【夏目漱石】

袷(あわせ)、竹の子、時鳥(ホトトギス)が夏季語です。

猫にまつわる秋の季語

  • 朝晩の 葉陰に猫の 眼玉かな【夏目漱石】
  • 橋の上に 猫いて淋し 後の月【村上鬼城】
  • 山里や 昔かたぎの 猫と萩【小林一茶】

朝晩、後の月、萩が秋の季語です。

猫にまつわる冬の季語

  • 雪の日や 巨燵の上に 眠る猫【正岡子規】
  • しろたへの 鞠のごとくに 竈猫【飯田蛇笏】
  • 薄目あけ 人嫌ひなり 炬燵猫【松本たかし】

雪、巨燵、竈猫(かまどねこ)、炬燵猫が冬の季語です。

「猫の恋」は春の季語についてのまとめ

桜の木と二匹の猫

今回は、猫の恋の意味についてご紹介いたしました。
猫の恋以外にも、猫が入っている俳句の多さにびっくりしました。

小林一茶は、江戸時代から俳句を書き続け、ほとんどが猫の俳句だそうです。
小林一茶や正岡子規を始め、松尾芭蕉など俳句と言えば誰もが知っている詩人です。

猫を愛してやまないからこそ、猫の特徴や、ふとした瞬間を見抜いて俳句を読んでいたのではないでしょうか。

猫の恋など、猫を季語とする所は、俳句の奥深さがあると思います。
いつもは甘えて飼い主さんに寄り添う猫も、春になれば恋をするのに必死になり、また違う猫の一面があるということではないでしょうか。

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