招き猫とは
江戸時代末期に生まれたとされる陶器の焼き物が招き猫の由来とされています。しかし、その発祥はいくつか挙げられ、はっきりはされておらず、謎の一面も併せ持っています。
猫が顔を洗うように毛繕いする姿は、まるで手で福を招いているようです。9世紀ころの中国の書物から「猫が顔を洗って耳より高い位置に来ると客がやってくる」という記録もあり、そちらも招き猫の起源の一つとされています。
そして日本では遥か昔から猫は福を招くという存在とされてきました。養蚕が盛んな時代に天敵であるネズミを退治してくれることから、神の使いと祀られていました。
現代でも、招き猫愛好家はたくさんいます。1995年には、日本招猫倶楽部と愛知県瀬戸市観光協会が、9月29日を「9(来)29(福)」という語呂合わせで、招き猫記念日として制定しました。世界猫の日は「8月8日」、日本の猫の日はご存じの方も多いかと思われますが、「2月22日」です。
招き猫の由来と歴史
招き猫の由来と歴史についてですが、多くの謎を持つ招き猫は日本で発展した縁起物とされています。
平安時代には『枕草子』や『源氏物語』ではすでに飼い猫の記述があるため、この頃にはもうすでに、猫は人間にとって近しい存在であるとされるでしょう。
そのような人々と共に存在している猫から招き猫の由来や歴史を紐解いていきたいです。
世田谷の豪徳寺説
世田谷区にある豪徳寺には有名な招き猫の起源となる言い伝えがあります。
彦根藩第2代目の井伊直孝が鷹狩の帰りに豪徳寺の前を通りかかった際、その時に猫が門の前で手招きをしました。そんな直孝が寺に入り、休憩していると雨が降ってきました。
雨に打たれずに済んだ直孝は、感謝の気持ちとして多額の寄付を豪徳寺にしたそうです。このことがきっかけで、直孝の菩提寺が豪徳寺になったそうです。猫が直孝を招いたことで寺に吉運をもたらしたと猫のお墓を作り、弔いました。
そのような井伊直孝が猫に助けられたということもあり、招き猫が崇められています。豪徳寺の招き猫は、「招福猫児(まねぎねこ)」としてお祈りすると、吉運が恵まれるとして有名です。
新宿の自性院説
室町時代1477年に起こった、江古田ケ原の戦いで武将・太田道灌 (おおたどうかん)と豊島泰経(としまやすつね)が戦い、太田道灌が敗北し道をさまよっていました。
太田道灌が途方に暮れていたところ、そこに黒猫が現れました。その猫が手招きしている方へと歩いていくと自性院に導かれました。そこで太田道灌は命拾いし、後の戦いは勝利することができました。
太田道灌を導いた黒猫の死後、手厚く祀られたのが「猫地蔵」の礎となっています。現在、自性院の入り口の門柱には、小判を持った招き猫が鎮座しています。
浅草の今戸神社説
江戸時代、浅草花川戸に住んでいた老婆が貧しさのあまりに愛猫を手放しました。
すると、その手放した猫が老婆の枕元に立ち「自分の姿を人形にしたら福徳が得られる」といったので、その猫の姿を人形の今戸焼(今戸人形)にして浅草神社の鳥居の横で売ったところ、たちまち人気に火がついたそう。
平成に入ると今戸神社は平成の招き猫ブームやパワースポットなどに乗り、「招き猫発祥の地」として看板を掲げ、多くの招き猫を奉られるようになりました。
招き猫の意味とは
招き猫と聞いて真っ先に目が行くのは、どちらの手が招いているかということですよね。ここからは招き猫の意味や招いている手の意味について見ていきます。
右手を招き猫は「お金」を意味する
右手で招いている招き猫は雄猫で、「福を招く」猫とも呼ばれます。ここでいう「福」とは金運を招いてくれます。一般的に家などに飾られている招き猫は、この右手の雄猫が大多数です。
「宝くじに当たりたい」や「財宝を手に入れたい」といった願望はこの右手で招いてくれることでしょう。
個人的に金運を招くために置くのもよし、何か会社を経営していてその事業が成功し、繁栄することを願って右手を招く猫も置くのも良いかと思われます。
左手を上げた招き猫は「人」を意味する
左手を上げた招き猫は一般的に雌猫とされています。良縁を招くということから人とつながりたいという願いをかけるひとが持つとよいでしょう。
ひとを多く集めたいという飲食店やサービス業を営んでいる方にもいいでしょうね。商店や商売繁盛、恋愛、結婚など広くつながりを持たせ、良縁を成就したい方にはおすすめです。
以上のようなことから、左手を上げている招き猫は人脈を呼ぶというのが一般的な意味を持つとされています。これからお店を持つひとや、結婚成就したいひとにはいいですね。
両手を上げた招き猫もいる
左手と右手、片方ずつ上げている招き猫を紹介しましたが、最近では両手をいっぺんに上げている招き猫がいるのはご存じでしょうか。
このタイプの招き猫は、金運と人脈を両方呼び込んでくれるという一石二鳥の招き猫とされています。とても魅力的な招き猫ですが、「欲張りすぎるとお手上げになる」とも呼ばれ、嫌うひともいます。
商売では、両手を上げることを「バンザイ」といいますが、破産や倒産を意味することがあります。そのため、お店の開店祝いでこの両手の招き猫は贈らないほうがよいでしょう。ちなみにこの両手招き猫の性別は不明だそうです。
招き猫は色でもご利益が変わる
招き猫で手を上げていることよりも気になる点があると言えませんか?それが招き猫の体の色です。体の色はそれぞれどういった意味を持つのかについて見ていきます。
一般的によく見かける招き猫の色は、三毛猫、白猫ではないでしょうか。しかし、その色のほかにもたくさんの意味を持つ色の招き猫がいます。
近年は風水ブームもあり、招き猫に様々な色が登場しているので、招いている方の手とご利益を得たい色の招き猫をチョイスすることをおすすめします。
- 白色…開運招福、商売繁盛
- 黒色…魔除け、厄除け、家内安全
- 赤色…病除け、無病息災
- 金色/黄色…金運上昇
- ピンク色…恋愛成就
- 青色…学業成就、就活成功、交通安全
- 緑色…家内安全、学力向上
- 紫…健康長寿
黒色の招き猫は「家内安全」・「厄除け」
白猫・三毛猫とともに見られる黒猫と赤猫ですが、黒色はヨーロッパなどで「黒猫は魔力がある」とされており、「魔除け・厄除け」の意味を持ちます。
また、日本でも夜に目が効くというところから「福猫」と呼ばれ重宝されてきました。赤色(茶色)は日本で昔から疱瘡や麻疹などの神が赤色を嫌う色とされ、「無病息災」という意味の象徴になりました。
幸せを運ぶ三毛猫
気になるのが三毛猫。他の猫とは少し違う特色を持っています。三毛猫の雄は猫種の中で圧倒的に少ないとされています。雄の生まれる確率は3万分の1と貴重な猫種です。
そして、三毛猫が幸運を運ぶという1つには、三毛猫の3色カラーが考えられます。
白は三毛猫のベースカラーですが、白猫は「来福招福」の意味を持ちます。また純白は清潔や純粋などのイメージを持つため、幸せを包み込んで育てる、という意味なので特別扱いされています。
「来福招福」のその白をベースとした上に際立つ黒「福猫」と茶色「無病息災」の効能がますます運気をアップしてくるので、三毛猫の招き猫が多く作られているといえるでしょう。
招き猫の持ち物の意味とは?
招き猫は首飾りや小判、鯉などの魚など財宝を持って招いています。ここからは招き猫が持っている財宝の意味について解説します。猫といえば、首輪や鈴、首飾りを付けているというイメージがありますよね。
江戸時代では奥女中たちなどが猫を好んで飼っていて、行方不明にならないように猫に鈴をつけた、というところから赤い首輪が一般的になりました。
招き猫の持ち物は小判もあります。当初、招き猫は何も持っていませんでした。縁起物を持っていて欲しいからということで招き猫に小判を持たせた、という説が有力です。
小判の金額ですが、最初は千両、百万両と増えていき今では千万両の小判を持った招き猫が一般的になっています。現代の価値に換算すると1兆3千億円にもなるそうなので、是非あやかりたいですよね。
鯉は富と繁栄の象徴とされています。また、鯛も縁起物として重宝されている生き物です。「めでたい」という語呂合わせや紅白の色が縁起物とされ、金運アップや厄除けの効果があります。
また様々な願い事が叶うようにと打ち出の小槌や、末広がりの形をしたひょうたんを持つ招き猫も昔からある縁起物とされております。
招き猫の大きさや手の位置には意味はある?
招き猫の手の位置や意味について見ていきたいです。
招き猫の手が少しだけ伸びているものや手が長いものまで、様々な個体が見られますが、招き猫の大きさや手の位置には意味があるのでしょうか。
実は招き猫の手が長ければ長いほど、ご利益が得られるとされています。高い位置から手招きできると、より遠くから福を呼び寄せられると信じられているのです。
招き猫の大きさはあまり関係しない
招き猫の大きさで効果や効能が現れるということはないそうです。大きければ大きいサイズの招き猫を置いてご利益を得ようと思っても、あまり意味を持たないといえるでしょう。
設置場所にこだわりを持ち、その場所に合った招き猫を置いてみるのが正解といえるでしょう。
手の位置には意味はある?
招き猫の手の長さが長いものと短いものが見られると思われますが、そこには何か意味があるのでしょうか。
招き猫の手が耳を越えて上がっているものを「手長」と呼ぶそうです。招き猫の手が長いものほど、金運や千客万来の効果が高いといわれています。逆に耳より下に手を出している招き猫は「手短」と呼ばれ、近くのささやかな幸運やわずかな金運、人脈を呼び込むとされています。
以上のことから挙げている手が耳より高い位置にある場合は「遠くの福」や「遠い未来の福」を招きます。そして、挙げている手が耳より下の場合は、「近くの福」、「近い将来の福」が舞い降りてくるとされています。
身近な幸せを招くのであれば手が耳より下の招き猫を迎えることをおすすめします。長い時間をかけて福を招きたいのであれば、耳より手が高い場所にある招き猫を迎えるとよいでしょう。
招き猫の置き方で運気が上がる!
招き猫は家やお店などのどこに置いたら運気がアップするのでしょうか。
招き猫は人間のことが大好きです。ということで、ひとが集まるリビングや必ずひとが通る玄関に置くと運気が上がるそうです。お店だったら、店先に置いてあげましょう。
玄関に置く場合は、靴などをきちんと片付けていつも整理整頓をこころがけ、招き猫を玄関に向かって正面に置くと、外からの幸運を運んできてくれるといいます。
更に幸運を呼びたい!という方は、人間の背丈より高いところに招き猫を置いてあげましょう。
クローゼットや物置など、家の中で人の出入りがないところには猫は寄り付かないので、そのような場所には招き猫は置かないように注意したいですね。
招き猫のご利益は2年~3年といわれています。
時間が経過したら、神社やお寺に行って納めてもらいましょう。もしくは塩で清めてからゴミとして処分してあげるのがいいと思われます。
まとめ
招き猫は日本人なら一度は触れたことのある置物でしょう。しかし、招き猫の腕の挙げている方が何を招いているのか、色の意味はどのようなものか、など謎が満載な存在なのではなかったでしょうか。
近年では風水ブームもあり、招き猫の体の色にフューチャーされることが多かったと思われます。
「見た目が可愛いから」や「なんかご利益ありそう」といったようにあまり深く招き猫の意味や起源などを知らずに招き猫を持っているひとも多かったのではないでしょうか。
そんな、知っているようで知らない招き猫の起源や意味を紐解いてきましたが、老若男女、日本人みんなから愛されている招き猫のご利益や魅力をもっと後世にも繋いでいきたいですね。
そしてなにより、日本に誇れる文化の1つである招き猫を世界に発信し続けたいものです。