犬と猫の同居が失敗すると起きやすいトラブル
犬と猫はともに人と生活をしてきた動物です。ところが、その生態は似て非なるもの。そのことを理解せずに突然同居をはじめてしまうと、思わぬ事態を招くことがあります。まずは、犬と猫の同居スタート時に起きやすいトラブルを挙げておきます。
犬が猫に吠える・噛みつく
犬は元々大変嫉妬深い動物です。さらに群れで生活をしてきた習性から、力関係をはっきりさせ上下関係を築き上げるという本能があります。他にも、逃げるものを追うという特性もあります。
このことから、犬同士でも同居が原因のトラブルは意外と多く起こります。これはもちろん異種である猫が相手でも変わりません。
自分が猫よりも上の立場に立ちたい・飼い主の愛情を独占したいという思いから猫に向かって吠える・噛みつくなどの行動を取ることがあります。犬が怯えて逃げる猫を追いかけてしまうのも本能が原因の行動になります。
猫が犬を威嚇する・ひっかく
猫は縄張りを持つ動物です。自分の暮らしている場所・行動範囲はテリトリー(縄張り)となります。
当然、室内はほぼ全ての場所が猫のテリトリーですね。猫にとってテリトリーに進入してくる自分以外の動物は攻撃対象になることがあります。
ですので、普段は臆病だと思っていた猫が、突然新入りの犬にすごい勢いで飛び掛かっていくことも。猫の威嚇はとても激しく、ひっかく力も強いので驚かれる方は多いです。
お互いにいつまでも警戒心を解かない
正しいステップを踏まずに同居をスタートしてしまうことで、お互いに警戒心を解くことができないまま、相手を受け入れられなくなってしまう場合があります。実は関係をこじらせてしまうのは最初の対面時の失敗が大半です。
犬・猫が人に対して危害を加えるようになる
犬や猫は過度にストレスを感じると「転嫁行動」という問題行動をおこすことがあります。「転嫁行動」とは、ストレスの対象となる相手以外、つまり第3者への攻撃行動です。
人でいう「八つ当たり」なのですが、犬や猫の場合、人に向かって突然吠える・噛む・引っ掻くなど、危険な行動をとるので気を付けなければなりません。この時の犬や猫は手加減をせずに攻撃をしてしまうので、大けがをしてしまうことがありま
す。
犬・猫がストレスから体調を崩す
犬・猫は過度にストレスが蓄積すると、人と同じく体調を崩してしまいます。ストレスが原因となる病気は意外と多く、完治するまで時間がかかるものも少なくありません。
- ウイルス性の風邪
- 突発性膀胱炎
- 食欲不振
- 嘔吐下痢
- 糖尿病 など
※犬や猫はストレスを感じるとカーミングシグナル(ジェスチャーによる合図)をします。日ごろから注意深く確認するようにしましょう。
犬と猫の失敗しない同居の始め方
犬と猫を同居させるには最初が肝心。ここでは、失敗しないための方法をご紹介していきます。
犬と猫の習性や行動の違いを理解する
犬と猫の生態は全く違います。
【犬の習性】- 群れで行動をする
- リーダーが存在し、上下関係がしっかりしている
- 好奇心が旺盛
- 嫉妬深い
- いつも人の近くにいたがる
- 逃げるものを追い詰めて捕まえる本能がある
- 平面上で行動をする
- 単独行動をする
- 人や他の動物とは対等な関係を築く
- 知らないものや新しいものを警戒する
- その時の気分で行動をする
- 人との距離感は気分次第
- 逃げるものを狙い定めて捕まえる本能がある
- 平面上下で行動をする
こうして挙げると、生態の違いは一目瞭然ですね。ほぼ真反対なところも多いです。それぞれの違いを理解することで犬と猫が全く違う動物であることを認識しましょう。
犬と猫の性格や品種の特徴が同居向きか判断する
先住にいる犬・猫の品種や性格を把握することはとても大切です。ご自身が飼育している犬・猫が同居向きかどうかをあらかじめ理解しておけば、同居の際に対策が練りやすくなりますね。
先住犬・猫はどのような性格をしているでしょうか?普段の性格を良く理解し、飼い主との距離感がどうであるかも確認しましょう。
臆病だったり、怖がりや経質な性格の犬・猫の場合、同居には注意が必要です。先住の犬・猫に大きなストレスがかかること、時間をかけてあげることなど同居のトラブル回避により気を付けなければなりません。
参考までに同居に向いている犬種・猫種と、あまり向かない犬種・猫種を挙げておきます。もちろん、ご紹介した犬種・猫種が同居向きかどうかは個々の性格もあるため一概には言えませんが、参考にしてみてくださいね。
【同居向きな犬種】- ゴールデンレトリバー
- ラブドールレトリバー
- プードル
- パグ
- マルチーズ
- ポメラニアン
- キャバリア
- チワワ
- シベリアンハスキー
- ヨークシャーテリア
- グレイハウンド
- ジャックラッセルテリア
- 柴犬などの日本犬
- エキゾチックショートヘア
- マンチカン
- スコティッシュフォールド
- メインクーン
- ラグドール
- ペルシャ
- ロシアンブルー
- ソマリ
- ベンガル
- アビシニアン
- シャム
- 保護猫
同居させる順番やタイミングを考える
犬と猫の同居は迎え入れる順番でなじみやすさに違いがあります。もっともすんなりいくのは「犬も猫も子供の時」です。生後2か月~3か月ほどの子犬・子猫であればあっという間に仲良くなることが多いですね。
次にうまくいくのは「先に犬がいてあとから猫が来る」パターンでしょう。
このとき、猫は子猫である方がより早くなじんでいきます。「猫が先にいて犬を迎え入れる時」は注意が必要です。特に年齢を重ねた猫は新入りの犬に対して警戒心を強く抱く場合が多いです。
ちなみに、犬と猫を同居させるときには、性別が異なる方がうまくいきやすいと言われています。
お互いに慣れるまでは犬と猫が一緒に過ごす時間を制限する
犬と猫の同居では、じっくり時間をかけて対面をさせていくことが大変重要なポイントになります。お互いの存在を認められるようになるまでは、必ず飼い主の目が行き届く状態にしましょう。
飼い主がいないときに何か問題が発生してしまうと、ケガやのちのトラウマにつながる場合もあります。ですので、留守番時には部屋を完全に分けておく方が安全です。
ワンルームの場合でも、最低限ケージを使い、ケージを覆うことができる環境にするべきです。
個別に向き合いコミュニケーションする時間を作る
犬と猫では好みのコミュニケーションの仕方やストレスの発散方法が違います。同居が成功したあとでもそれは変わることはありません。犬、猫それぞれと向き合う時間を作ることも重要です。
何事も先住の子から優先する
犬も猫も嫉妬をします。嫉妬心からケンカをしたり、ストレスで体調を崩してしまうことがあります。特に先住の子は新入りに対して敏感です。おやつや餌をあげるときには先住の子を優先するようにしましょう。
「撫でたり抱いたりするときにもまずは先住の子から!」こうすることで、犬には上下関係を示すことにもなります。
爪の手入れを徹底する
犬・猫どちらも爪の手入れは徹底したいですね。同居をスタートしたばかりの時には手が出てしまうこともありますし、仲良くなったあとでもじゃれてケガをすることがあります。
特に猫の爪は鋭く、犬の眼に入ってしまったら大変危険です。定期的に爪の状態をチェックし、いつも手入れできている状態を保ちましょう。
犬と猫の同居を失敗させない環境作りのポイント
犬と猫がスムーズに同居できるようにするには、環境を整えることも大切です。ここでは、環境づくりのポイントをご紹介しておきます。
犬と猫それぞれに必要なグッズを事前に用意する
- ケージ
- トイレ
- 食器
- おもちゃ
- 手入れ用品(爪切りブラシシャンプーなど)
猫や犬にケージは必要ないという方もおられます。実際、ケージがなくても問題なく生活をしている犬や猫もいますが、同居をスタートする時には用意しましょう。
これまでケージを使用していなかった方は、新入りの子にケージを使う様にすると良いですね。(今までケージを使ってきた方は新入りの分も用意した方が良いと思います)
ケージがあれば大きな事故は防げますし、双方のパーソナルスペースの確保にもなります。また、トイレや食器、おもちゃはそれぞれのものを用意し、共用しないことも大切です。そうすれば嫉妬心や独占欲からケンカになることも避けられます。
犬と猫が別々にリラックスできる室内スペースを設ける
部屋の構造にもよりますが、住み分けができるようなスペースを設けるとより安心です。特に同居を始めたばかりのころはストレスもたまりやすいため、別室で過ごす時間があったほうが良いでしょう。
もし別室で過ごすことが難しい環境である場合には、ケージは広めのものを用意してあげてください。
犬と猫のトイレや食事の場所は分ける
犬と猫が並んで食事をする風景は微笑ましいものですが、お互いの食事を食べてしまうことは好ましくありません。犬と猫では求められる栄養素が違います。
同じ場所で食事をさせてしまうと、栄養が偏ってしまうことも…。お互いのフードを食べてしまうことがないように食事の場所は分けてください。
また、トイレの場所も分けるようにしましょう。トイレも犬と猫では求める環境が異なります。意外と多いのが、犬が猫の糞や猫砂を食べてしまうこと。これには色々な理由があるのですが、食糞や猫砂の誤飲は避けたいものです。
犬が猫の糞を食べてしまうことがないように、トイレを設置する場所だけでなく、猫のトイレを蓋つきのものにしたり、上から入るタイプのものにするなど工夫したいですね。
逃げられる場所をつくる
犬と猫は同居をはじめたばかりの頃だけでなく、何かの拍子でケンカになってしまうこともあります。
もしもケンカが起きた場合でも、逃げられる場所があればケガの心配が少なくなります。猫にはキャットタワーを設置したり、タンスなどの家具を使って高台になるものを用意すると良いですね。
犬にはケージの扉を開けておいたり、小屋になるようなものを置いておくと良いでしょう。
犬と猫の同居で失敗しないための注意点
犬と猫の同居をサポートするのは飼い主の役目です。同居に失敗しないよう、注意点をいくつか記載しておきます。
犬と猫を無理やり仲良くさせようとしない
飼い主がどんなに仲良くさせたくても、どうしても相性が合わないこともあります。性格的にお互いを認められるまで長い時間がかかる子もいます。
急ぐ気持ちは分かりますが、決して無理に仲良くさせようとしないでくださいね。とにかく焦らずにじっくりと時間をかけること。
どうしてもうまくいかない場合はそれぞれが別々に生活させることも視野に入れましょう。
同居のストレスによる症状には早めに対処する
同居を始めたばかりのときは、犬猫どちらにも大きくストレスがかかるものです。特に先住の犬や猫にストレス症状が出やすいと思います。ストレスが原因で起きる体調不良には早めに対処していくようにしましょう。
猫の場合は特発性膀胱炎や下痢、嘔吐などの内臓系の病気が起きやすい傾向にあります。何度もトイレに入る、尿が出にくい、血尿をするなどの症状が出たらできるだけ早く病院を受診するようにしてください。下痢も長く続くと脱水症状になったりするので注意が必要になります。
犬は分離不安症や元気の消失などの精神的な変化が現れることが多いですね。しっかり気分転換をさせてあげたり、先住の子であれば優先的に接するなど精神面でのサポートをしてあげてください。
ワクチン接種や健康チェックは定期的にする
犬、猫それぞれに定期的なワクチン接種をうけることも大切です。犬と猫の伝染病はそれぞれにうつることはありませんが、ストレスで免疫力が落ちているときに罹患すると重篤化してしまうことも…。
ワクチンを打っていれば罹患しないか、しても軽い症状で済みます。また、定期的に健康診断をすることで寄生虫の有無や病気の早期発見にもつながります。ワクチン接種と同時に受けるようにしましょう。
不妊手術を受ける
犬、猫どちらも性成熟をすると縄張り意識が強くなります。特にオスは縄張り争いでケンカを起こしやすくなることも多いので、去勢手術をした方が安心です。
不妊手術を受けることはストレスの軽減やホルモンバランスの乱れで起こる病気を防ぐことにもつながるため、繁殖をしないのであれば積極的に受けるようにしたいものですね。
まとめ
犬と猫を同居させるには、飼い主のサポートが重要です。それぞれの習性や特性を理解し、無理強いすることなくじっくりと時間をかけて慣らしていきましょう。
同居に必要なものはきちんとそろえ、食事やトイレを分けるなどルールを守っていくことも忘れずに。愛犬や愛猫がストレスを感じ体調を崩していないかなど健康チェックは欠かさずしてください。
同居はポイントを押さえ、焦らなければうまくいくことの方が多いので安心してくださいね。
どうしてもうまくいかないときには居住スペースを分けて生活をする方法もあります。一定の距離感を保つことでいつの間にかうまくいったりするので、臨機応変に対処しましょう。