ハロウィンに黒猫が定番なのはなぜ?
ハロウィンの仮装には、かぼちゃのお化けや魔女、ゾンビなどホラー系のコスプレが多いですが、その中で黒猫のコスプレも目立ちます。
なぜハロウィンの仮装には、かわいい黒猫のキャラクターが用いられるのでしょうか。まず、ハロウィンに仮装をする理由について紹介します。
ハロウィンは、古代ケルト人の収穫を感謝してお祝いするお祭りが起源ですが、その日は死者の魂が家族のもとへ帰ってくる日でもありました。
あの世から帰ってくるのは亡くなった死者の霊だけではなく、悪霊や魔女たちも一緒にやってくると信じられていました。そのような悪霊に襲われないように、人々は恐ろしい姿に仮装をして、悪霊の仲間に見せかけて自分たちの魂を守ったのです。
ハロウィンは、英語で「Halloween」ですが、これは「万聖節」(諸聖人の日)の旧称「All Hallow's」の前日(eve)であることから「All Hallow's Eve」と呼ばれ、それが「Hallow E'en」となり「Halloween」となったと言われています。
では、なぜ黒猫がハロウィンの仮装に取り入れられているのでしょうか。
それは、黒猫がハロウィンの日にやってくる「魔女の使い」とされていたからです。黒猫の格好をしていれば、魔女に見つかったとしても襲われないと考えたのです。
また、ハロウィンの写真やイラスト、シルエットには、クモやコウモリ、フクロウなどが描かれることがありますが、これも黒猫と同じで「魔女の使い」とされていたからです。
「ハロウィンには黒猫」の由来
猫の種類はさまざまですが、ハロウィンの仮装に使われるのは黒猫だけです。
また、黒猫はハロウィンのシンボル的な存在にもなっています。ここでは、黒猫がハロウィンの定番となった由来や、黒猫がなぜ不吉と言われるのか解説します。
闇夜にまぎれる黒猫は魔女のよきパートナー
黒猫は真っ黒な体が闇夜にまぎれて隠れやすいことから、魔女の使いとされています。魔女が真っ暗な夜に悪事を行うには打ってつけのパートナーだったのです。
また、ケルト人は「猫には未来を見ることができる力がある」と信じられており、黒猫は魔女の化けた姿とも考えられていました。
黒猫は不吉の象徴として見られることが多かった
欧米では、黒猫を不吉なものと信じられており、中世末期に本格化した魔女狩りでは、魔術を使ったと疑われる人物が大量に虐殺されました。また、黒猫も魔女と密接に結びつくものと考えられ、多くの黒猫が犠牲になりました。
1560年代のイングランド・リンカーンシャー地方から発生した民間伝承では、魔女と黒猫の排除を裏付けています。
月のないある晩、父と息子は夜の街中を歩いていました。すると、黒い猫が現れて2人の目の前を横切ったため、「黒猫め」とは石を投げつけました。石は黒猫に当たり、血を流しながら死に物狂いである女の家へ向かい、床下の隙間に逃げ込みました。
翌日、2人はその家の女が負傷していることを知り、「あの女は魔女だ。黒猫が女に化けていたのだ」という噂が街中に広がったのです。
このように、黒猫は魔女が化けた姿という話が伝わり、悪魔崇拝の儀式に必要なものだと認識されるようになったのです。そして、魔女裁判では、猫を飼っているというだけで、その飼い主が魔女か悪魔崇拝者であるという証拠とされ、猫と共に焼き殺されてしまったのです。
暗闇の中で瞳だけが輝くことに恐怖心を抱いた
電気のない時代、暗闇への恐怖心が黒猫に対する不吉さを植え付けられた可能性があります。
日常生活に電気が普及したのは1800年代後半からなので、それ以前は太陽が沈んだ後の光源は月や火の明かりくらいでした。外は真っ暗闇の環境で、被毛が真っ黒な黒猫がいた場合、瞳だけが闇夜に輝き浮かび上がって見え、不気味に感じ恐れられていたのでしょう。
このような恐怖心や嫌悪感から、黒猫に対して不吉な印象を持つようになったとも考えられます。
黒猫の「黒」はネガティブな感情が高まる
黒猫に対して不吉だと感じる理由には、色彩心理学も関係していると考えられています。色彩心理学とは、色が人間の心に与える影響を研究する学問です。
「黒」について、新生児を対象にした調査では、生後間もない段階でグレーや黒などの無色系よりも、赤や青、黄色などの有色系を好む傾向があるようです。
幼児に対しては、5歳のグループと6歳のグループに分けて調査を行ったところ、男女とも赤や青、ピンクなど明るい色にはポジティブなイメージを持ち、黒やグレー、茶色など暗い色にはネガティブなイメージを持つ傾向にあることがわかりました。
また、この傾向は、男の子よりも女の子の方が強く、5歳よりも6歳半のグループの方が強かったようです。
成人への実験では、自分が好きなものに関係する色を好み、嫌いなものに関係する色は嫌う傾向にあります。例えば、「爽やかな青空が好きな人は青色が好き」「どんよりとした曇り空が嫌いな人は黒色が嫌い」といった傾向が見られます。
この調査から、人間は暗めの色を先天的にあまり好まず、その嗜好が後天的な経験によって、さらに強められることもあると考えられます。
黒に関しては、曇り空、暗闇、虫、腐敗物、ドブ川など嫌悪感を得るものが多いです。これらに接することが度々あると、「黒色は嫌なもの」という印象が強められる可能性はあります。
そして、黒に対する悪い印象を持ったまま黒猫を見ると、「なんとなく気味が悪い」と思ってしまうようになるのです。
ハロウィンで黒猫の仮装をする意味
ハロウィンには、仮装をするのが定番となっています。特に、もともとコスプレ文化が根強いていた日本では、各地でコスプレイベントが開催され、SNSにも楽しいコスプレが数多く載せられます。
注目を浴びるために、手作りで工夫して衣装を用意して楽しんでいる人も多いです。
ゾンビやお化け、魔女など恐ろしいメイクや衣装で仮装をするのが定番となっていますが、猫耳カチューシャとしっぽをつけた可愛らしい黒猫の仮装も人気があります。
ここでは、黒猫がハロウィンの仮装の定番になっている意味を紹介します。
悪霊から身を守るために姿を変えている
ケルト歴では、10月31日が1年の終わりとされています。日本の「大晦日」にあたる日で、その夜にはご先祖様の霊が家族の元へ戻って来ると信じられていました。
この風習は、ご先祖様や亡くなった方の霊をお迎えする日本の「お盆」と似ていますが、お盆と違うのは、悪霊や魔女も一緒に現世にやってきて災いをもたらすことです。
悪霊たちは子どもをさらったり、作物や家畜に悪影響を与えたり、この世の人々に悪さをすると信じられておりました。人々は、焚き火を焚いて魔物の仮面を被り、悪霊や魔女を追い払おうとしたのです。
魔物の仮面を被ったのは、悪霊の仲間だと思わせて、子どもや作物・家畜への被害から守るためです。また、怖い仮面を被ることで、悪霊を怖がらせて退散させるためでもありました。
つまり、人間自ら魔物に似た装いをすることで、悪霊や魔女から身を守ろうとしたのです。このような風習が習慣化して、ハロウィンに仮装をするようになったと言われています。
そして、ハロウィンの黒猫の仮装をする理由は、黒猫が魔女の使いとされていたからです。人間も黒猫に仮装することで、魔女に襲われないと考えたからです。
黒猫以外の仮装でも同じ魔除けの効果が得られる
黒猫以外にも、ハロウィンの日に悪霊を追い払う魔除けとして、さまざまな仮装が行われます。それでは、ハロウィンの仮装に使われるようになった、シンボルの由来をそれぞれ見ていきましょう。
〈ゴースト、ガイコツ〉
ゴーストやガイコツは、ハロウィンの由来である古代ケルト民族の収穫感謝祭「サムハイン」に関係しています。
10月31日の夜は、生者と死者の世界の境界線が曖昧になり、死者の霊が家族を訪ねたり悪霊が出現したりすると考えられていました。
10月31日が「死者の日」という意味合いは現代でも強く残っており、死の象徴とされる墓地やお化けは、ハロウィンのシンボルとして引き継がれています。
ゴーストやガイコツも人の死を連想させるものとして、ハロウィンの仮装に使われています。
〈コウモリ〉
夜行性のコウモリは洞窟に住み夜に活動することから、古くから暗黒を想起させ「悪」「謎」「死」「超自然」などに関連するものとして扱われてきました。
コウモリがハロウィンの仮装で使われるようになった由来は、ゴーストやガイコツと同じようにケルト人のサムハインで、この祭りで魔除けのために焚き火を起こした時に、コウモリや昆虫が集まったことが由来だと言われています。
また、「飛んでいるコウモリが家の上を3度周回すると、その家の誰かがすぐに亡くなる前兆」「ハロウィンの日に、コウモリが家の中に入ってくると、その家は呪われる」という恐ろしい迷信もあります。
さらに、魔女はコウモリの姿に変身するという迷信もあり、コウモリは魔女との関係が深いとされています。
〈クモの巣〉
クモは黒い体やたくさんの足など、見た目の悪さから悪魔の使いと呼ばれていました。
また、人の住んでいない家や荒れた建物などには、クモの巣がかかっていることから「暗い」「恐怖」「気味が悪い」などと関連付けられ、ハロウィンのシンボルになったと考えられます。
クモの巣も「長く放置されたもの」「お化け屋敷」「死」などを連想させることから、ハロウィンのシンボルとされています。
また、クモに関する迷信に「クモがランプに落ち、ろうそくの火で燃やされてしまった時、近くに魔女がいる」という話もあります。クモも魔女と結び付けられたため、ハロウィンの象徴とされたのです。
〈バンパイア〉
古代文明には、吸血鬼の原型とされる血を飲む悪魔的な存在に関連する伝説や民間伝承がすでにありました。
ただ、バンパイアが世界中に広がったのは、1897年にブラム・ストーカーが発表した小説「ドラキュラ」に描かれた描写に由来すると言われています。
バンパイアは死の世界から舞い降りて生者を襲うと伝えられており、死や超自然と繋がりをもつ存在として、ハロウィンのシンボルとして扱われています。
まとめ
ハロウィンは、日本ではあまり馴染みのないイベントでした。
1990年代後半に、東京ディズニーランドで初めて開催されたハロウィンイベントが日本のハロウィンブームの先駆けと言われており、少しずつ各地にハロウィンが広まっていきました。
ハロウィンの時期になると、雑貨売り場やお菓子コーナーなどハロウィン関連グッズが並びますが、その中には、黒猫のグッズもたくさん見かけます。
日本でもハロウィンは年々盛り上がっていますが、ハロウィンがどんなお祭りで何のために仮装をしているのか知らない人が大半のようです。また、ハロウィンと黒猫は深い関係にあり、昔は、黒猫というだけで虐待の対象になっていました。
ハロウィンの由来や意味を知り、黒猫を大切にする思いを込めて、可愛い黒猫のコスプレを楽しみましょう。