干支と動物の関係
干支(十二支)は、中国の「殷」の時代に作られたと言われています。十二支は、12年かけて天を一周する、木星の軌道上の位置を示す「年」を数えるために作られたのです。やがて、干支は「月」や「時間」を測るためにも用いられ、現在で言うカレンダーや時計のような役割を果たしていました。干支を動物に例えたのには、民衆に年を浸透させるためでした。中国の王充(おういつ)という人物が、民衆に干支を浸透させるために、覚えやすいように民衆に馴染みのある動物達に置き換えて、文献を書いたのが始まりだと言われています。
しかし、なぜ干支に「猫」がいないのでしょうか?馴染み深い動物を選んだとしたら、中国にも猫はいたはずです。今回は、干支に猫が入れなかった理由を考えて行きたいと思います。
干支に猫がいない理由
「ねずみのせい!」猫が干支に入れなかった可哀想なお話
皆さんは子供の頃に、「なぜ干支の中に猫がいないの?」と疑問に思ったことはありませんか?私達にとって馴染み深い動物なのに、干支の中に猫がいないなんておかしいですよね。私は子供の頃、干支の中になぜ猫がいないのか疑問に思い、おばあちゃんに聞いたことがありました。そんな疑問に対し、おばあちゃんが教えてくれたのは、「干支に入れなかった猫」のお話でした。
昔々、森の動物達を集めて神様が言いました。「1月1日の午前0時までにこの神社に集まった動物達の中から、最初に来た動物から12番目の動物までを干支にする!」
神様の話を聞いた動物達は、干支になるために気合を入れました。その動物達の中でも体の小さなねずみは、「自分が1番になれば、汚名返上できる」と考え、この干支の中で1番になるのを狙っていました。早起きが苦手で大切な集まりに参加することが出来なかった猫は、干支の噂を後から知り、仲良しのねずみに、干支になるにはどうすればいいのかを詳しく聞くことにしました。
猫に干支の話を聞かれたねずみは、「あ~、その話ね。1月2日の午前0時に神社に集まった動物達の中から、最初に来た動物から12番目までの動物達が干支に入れるんだよ」と答えました。ねずみから嘘のお話を教えられた猫は、ねずみを疑う事なく信じてしまいました。猫は干支に入るために、寝ないで挑もうと思い、当日は寝ないでずっと起きていることにしました。
ねずみはなぜ、猫に嘘をついたのでしょうか?それは、自分が1番になるための作戦だったのです。猫に嘘の情報を教えたねずみは、自分が1番になるために考えました。「自分の小さな体では、早い時間に出発をしても時間がかかってしまい、1番になることができない。」と、そこで思いついたのが、早起きが得意な牛に相談することでした。
「集まりの日、1番乗りを君に譲るから、僕を牛さんの背中に乗せて行ってくれないかな?」この話を聞いた牛は、ねずみに協力してあげることにしました。そして、干支が決定する運命の日がやってきました。ねずみは牛の背中に乗って、1番乗りを目指して時間に余裕を持って出発しました。
辺りはすっかり暗くなっていましたが、自分達の前を歩いている動物はいません。そして、神社の入り口が見えてきました。そこでは、神様が動物達の到着を待っています。干支の1番目になることが嬉しいと喜びながら、神社の入り口に足を踏み入れようとした牛でしたが、その時、ねずみが牛の背中から飛び降り、ねずみはそのまま1番乗りで神社の入り口に到着しました。神様は「干支の1番目はねずみじゃ!」と言いました。大喜びするねずみ、牛は仕方なく2番になってしまいました。
神社にぞろぞろと動物達が集まってきました。トラ、ウサギ、辰、蛇と、次々に干支が決まっていきます。サルと犬は途中まで仲良く神社に向かっていましたが、途中で「我先に」という気持ちが出て喧嘩をしてしまい、サルは犬を追い越していきます。犬は、鶏にも追い越されてしまい、サルに対して怒りました。それ以来、サルと犬は犬猿の仲となってしまったのです。その後、12番目にイノシシが神社に入り、干支が決定しました。
その頃、ねずみに嘘の話を聞いた猫は、出発に向け準備をしていました。1月2日の午前0時に神社に着いた猫。周りを見渡すと、そこには誰もいません。猫は「自分が1番乗りした」と喜んでいました。
しかし、いくら待っても動物達どころか、神様すら現れません。不安に思った猫は、木の枝で寝ていた小鳥に聞きました。すると小鳥は、「干支の集合は昨日の晩に終わったよ!1番乗りはねずみさんだって。」と猫に教えました。その言葉を聞いた猫は、ねずみに騙されたことを知り、怒ってねずみの元に行きました。猫がねずみに抗議すると、ねずみは冷たく「騙された猫が悪い、神様が干支のお話をした時の集まりに寝坊したしたのだから。」と言いました。それ以来、猫とねずみは仲直りが出来ず、現在でも猫はねずみが大嫌いでいるそうです。
このお話を聞いて、猫が可哀想に思いました。ねずみに騙されていなければ、干支に猫がいたかもしれません。
干支に猫がいないその他の説
猫のせいでお釈迦様が亡くなってしまった話
80歳の時、お釈迦様は体調を崩して、亡くなられてしまいました。原因はキノコ料理を食べて、中毒症状を起こしてしまったからです。キノコを食べて体調を崩してしまったお釈迦様は、ねずみに「食中毒に効く薬があるので、とってきてほしい。」と命じました。お釈迦様に命じられたねずみは、お釈迦様を助けるために、急いで薬を取りに行きます。
しかし、薬を取りに行く途中で猫に出くわしてしまい、ねずみは猫に捕まって、食べられてしまいました。お釈迦様の使者として、薬を取りにいったねずみが食べられてしまったので、お釈迦様は薬を飲む事が出来ずに、亡くなってしまったという伝説があります。そのため、猫は干支の仲間に入ることが出来なかったというお話です。
中国にはもともと猫がいなかった!
猫が干支の仲間入りを果たすことが出来なかったのは、中国には昔、猫がいなかったからという説もあります。猫はもともとエジプトの動物で、古代エジプトではスフィンクス(神様)として崇められるほど、エジプトの人達にとって馴染み深い動物でした。
古代エジプトはとても栄え、強大な帝国でもありました。そのため、古代エジプトの象徴でもある猫は、他国から嫌われる対象になってしまったのです。他国から嫌われていた猫は、紀元前30年頃まで、他国で飼育されることがありませんでした。猫が飼育されるようになったのは、エジプトがローマ帝国に滅ぼされてしまってからだと言われています。そのため、干支が作られた頃の中国では、猫は庶民にとって馴染みが浅い動物だったのかもしれません。
海外の干支の中に猫がいる!
私達の生活に馴染み深い干支ですが、日本や中国だけでなく、他の様々な国でも活用されています。日本や中国では、干支の中に猫はいませんが、チベット、タイ、ベトナム、ベラルーシの干支には、ウサギではなく猫が仲間入りをしています。
なぜ、ウサギではなく猫が干支になったのかは諸説あります。中国語の発音でウサギは「mao(マオ)」なのが、ベトナム語の猫を意味する発音「meo(メオ)」に近いこと。ウサギはベトナムでは馴染みが薄い動物で、猫はベトナムに暮らし、人間にとってねずみからお米を守ってくれる動物として、身近な存在であったこと。このようなことから、ウサギではなく猫になったのだと考えられています。
その他にも、ブルガリアでは干支の動物達の中に、トラではなく猫が仲間入りしていたりと、干支の動物達も、その国で馴染み深い動物達に変化しています。
干支と猫に関するまとめ
猫が好きな人にとっては、猫が干支に選ばれなかったことに対して、少し悲しい気持ちを抱くと思います。私も子供の頃は、猫が干支に選ばれなかったことを悲しいと思っていました。しかも私はねずみ年なので、おばあちゃんから猫が干支に選ばれなかった理由を聞いて、ショックで泣いてしまいました。おばあちゃんに対して、「ねずみ年なんかなければいいのに!」と怒ったことがあります。
こうして干支について調べていくと、海外では猫が仲間入りしていたり、猫が中国では馴染みの浅い動物であったりと、歴史や文化の違いを感じて、とても面白い発見をすることが出来ました。皆さんもお正月になったら、干支のお話を家族にしてみて下さい。きっと楽しいお正月を過ごすことが出来ると思います。