猫の視界はヒトより広い
かつて、猫は小動物を捕獲して食物を手に入れていました。狩りをするには、広範囲を見渡せることが有利です。そこで、猫の視界はヒトよりも広範囲が見渡せるように広くなっています。では、他の生き物と全体視野を比べてみましょう。
- ヒト:180度
- 犬 :220度
- 猫 :250度
- 馬 :330度
- 鳥(ハトなど):340度
鳥や馬は、ずいぶん視界が広いですね。しかし、視界が広いだけでは困ることもあるのです。狩りをするためには、物体までの距離がわからないと困ります。遠近感は、両目で見なければ感じられません。
鳥の両目の視界は約30度、馬や犬は約90度です。一方、ヒトや猫の両目の視界は約120度です。猫の狩りの成功率の高さは、この両目の視界の広さにあるようです。
草食動物の鳥や馬は狩りをする必要はなく、それよりも敵が襲ってきたときに早く気が付くために視界が広くなっているのです。
ちなみにヒトや犬、猫など視界が狭い動物は、眼球を自分の意志で動かすことで視界の狭さをカバーしています。眼球を動かす筋肉を外眼筋(がいがんきん)と言います。鳥や馬などは、この外眼筋は発達していないので眼球を動かすことができません。
猫の視界はカラフルじゃない
ヒトは赤・青・緑・黄色、更にその中間の色まで様々な色を識別できます。ヒトの目の網膜には、明るいところで色や形を識別する錐状体(すいじょうたい)細胞と、色の識別はできませんが暗いところでも形を認識することができる杆体(かんたい)細胞があります。明るいところでは、この錐状体細胞が様々な色を認識します。そのためその視界は非常にカラフルなものとなります。
猫の場合、この錐状体細胞が発達していなく、ヒトの6分の1~10分の1しかないと言います。これによって猫の視界では、色の違いがハッキリしないということです。青や黄色は認識しますが、特に赤ははっきりと識別できません。猫の視界では、赤いおもちゃも緑色のおもちゃも同じ色に見えているのですね。
また、弱視のため物の形もあまりはっきり見えません。視力は0.1~0.2ぐらいしかなく、更に近いところの物も30cm以内は焦点を合わせることができません。昼間の猫の視界は、ぼんやりとしていて、ほとんど色のない世界が広がっているのです。
猫の視界では動く物ははっきり見える
このように、猫の視界に入る物体はぼんやりとしか見えていないのですが、これは静止した物体を見ているときのこと。一方で、猫の動体視力はとても良く、ヒトの4倍と言われています。猫は視界に入った小さな生き物を素早く見分ける能力が非常に高いのです。
ネズミのような小動物を獲物とする猫にとって、視界に入った獲物の色を見分ける必要はなく、それよりも動く物はどんなに小さなものでも素早く認識し見つけることが大切だったのでしょう。
さらに、猫の視界では、紫外線を感知しているかもしれないという報告もあります。鳥や昆虫、魚は紫外線を感知することが知られています。ヒトの目の水晶体は紫外線をブロックするので、視界に紫外線を見ることはできませんが、猫の水晶体は紫外線を透過させることができます。
そのため、紫外線を感知しているのではないかと言われているのです。けれども、猫の視界に紫外線がどのように映っているかは、まだよくわからない部分が多いとのことです。
猫の視界は夜に更に良くなる
夜、キラリと光る猫の目は美しく印象的です。猫の目は夜美しいだけでなく、その性能も昼より高くなっています。暗所では、猫の視界はヒトよりもはるかに良く、はっきりと鮮やかに見ることができます。暗闇で猫の視界が保たれているのは、夜行性の生き物だからです。
その理由の一つは、猫の網膜の桿体細胞(かんたいさいぼう)にあります。昼間働く錐状体細胞は発達していませんが、桿体細胞は発達しています。この桿体細胞が、暗い中でもよく働いて猫の視界を保ちます。ちなみに、桿体細胞が多い動物は、縦長スリット状の瞳をしているものが多いそうです。猫もそうですね。
さらに、猫の目には網膜の裏に反射板(タペタム)というものがあります。瞳から入ってきた入射光は感覚細胞を刺激します。同時にタペタムに当たって反射し、この反射光もまた感覚細胞を刺激します。
このように、タペタムは少ない光を増幅させるので、弱い光でも猫は視界を保てるようになっているのです。猫は、ヒトの6分の1の光でも視界を保てるそうです。暗闇で猫の目を見たときや写真を撮ったときに猫の目が光って見えるのは、このタペタムに光が当たって輝いたためです。猫の目の美しさは、機能の高さでもあるのです。
夜、猫の写真を撮るときは、フラッシュを使わないようにしてあげた方がよいかもしれませんね。
まとめ
猫の視界はヒトよりも広く、かつ両目による視界も広いため、獲物までの距離を正確に認識することができます。ただし、色を認識する錐状体細胞は少なく、猫の視界はぼんやりとしていて白黒に近い世界を感じているようです。
けれども、猫の動体視力はヒトの4倍あり、暗いところで働く桿体細胞や光を増幅させる器官もあり、猫は夜の薄暗い中では物体がはっきり見えるようです。このような猫の視界の特性を知ると、かわいい猫を見る目も変わってきますね。
40代 女性 ママにゃん師走
しかし、猫ちゃんの視力が0.1〜0.2という値にびっくりです。視力と言う点では人間の方が見えているのですね。以前エスキモーの本を読んだ時に、視力が約4.0〜6.0と書いてあり衝撃でしたが、近視の猫ちゃんの視力にも驚きました。
動体視力は、野生の動物にとっては大切ですよね。
家猫は狩りをする必要がないので、もしかしたら動体視力は野良猫ちゃんより低下しているのでしょうか。
猫ちゃんにとってテレビは一秒間に約30回点滅し、蛍光灯は一秒間に約100回点滅しているように見えるそうです。そのかわり、LEDライトは蛍光灯より点滅が少ないそうで、人間にとっては料金が経済的で助かり、猫ちゃんにとっては身体に優しいという事で、一石二鳥なのですね。
我が家の子は、毎朝日の昇らない内にご飯を食べて、窓際に陣取り下の道路を通行している車のライトを楽しそうに見ています。きっとパチパチと点灯して見えているのですね。眺めている後ろ姿をとても愛らしく感じながらも、視界を想像し複雑な気持ちにもなりそうです。
同じ地球に生きる物同士、飼い猫ちゃんだけでなく他の動物たちの気持ちも考えたくなりました。
女性 ここにゃん
まず、驚いたのは「視界の広さ」・・・約250度って? 想像がつきませんが、かなり ぶぁ~んっと見えているということなんですね。
「色の認識」ができにくく、「弱視」。 視力は0.1~0.2ぐらいで、昼間の彼らの視界は ぼんやりとしていて白黒に近い世界、、とは、意外でした。
「色」に関しては、我が家の愛猫は女のコなので 首輪・おもちゃ・爪とぎなどは 喜んでいると(勝手に)思い、「赤」を基調に選んでいましたが、、「特に赤は はっきりと識別できません」には ガッカリ。 また、冬 初めて庭が雪景色化した時「雪ッ! キレイだね!!」なんて話しかけていたのですが、、カノジョの目には「いつもと変わらない白黒の景色(一場面)」だったのね、これまた ショックでした。。。
「動体視力」と「暗闇での視力」のスゴさは、カノジョの日々の動きで実感しています。 おもちゃや小さなボールを投げてあげると、上手にキャッチ! 暗闇では 目がキラーン!状態。(笑)
本記事に限らず、猫飼い初心者の私にとって このサイトでの「知らない猫の世界(習性?)」の話はとても参考になり楽しみにしています。
女性 まるきりはれ
『視界』ー狩りの必要性から、両目の視界は、猫さんの方が広いです。
『色、視力』ーはヒトのおよそ1/10。色の違いははっきりせず、白黒の世界みたいです。我が家では、家猫の子猫が2匹います。毎日窓の外の庭や木々を見ているので、「”緑が目にしみる”のは、ヒトも猫も同じ感覚かなぁ?癒されているのかな?」なんて思っていましたが、色の違いはないのですね。グリーンの猫じゃらしへの食いつきが一番いいのも、それかしら?なんて思っていましたが、どうやら私の勘違いみたいですね。しかも、いつも鼻と鼻を合わせて、お話していたのですが、私の顔はかなりぼんやり、見えているのですね。これはむしろ、助かるかも(笑)
『動体視力』ーこちらはヒトの4倍、想像はしていましたが、すごいですね!確かに、食事中にテーブルの上からポロッ、誰かさんが小さな小さなパンのかけらを落とそうものなら、2匹同時、音もなく瞬時に飛びつきます。
『暗闇での視力』ー夜目もやはり、ネコさんはハイレベルです。人の1/6の光でも視界を保てるなんて、、、。あのキラーンっは、伊達じゃない。よく、フラッシュの写真で目がビカーッと映る、レーザービームのようなあの光線の正体は、反射板(タペタム)という名称なのですね、初めて知りました。真っ暗だと、まるで足元がおぼつかない私とは、えらい違いです。
以前、渡辺佑基先生のバイオロギングで、野生のツキノワグマの視界の映像を見たことがあります。小型カメラをツキノワグマの目付近に装着して記録した映像からは、木々の間を4脚で颯爽と駆け巡る感覚、大好きなメスのヒグマを見つけて飛びかかる躍動感、映像ですが、クマの目を通して追体験するような貴重な感覚に、自分とは違う生き物になれたような感動を覚えました。同じ方法で、我が家のネコの視界も見てみたいものだなあと思います。きっと、野生の動物とは異なる、お家の中での日々の小さいけれども大切なあれこれが、写っていることでしょう。違いを知ることで、助け合って生きていけることは、たくさんあると思います。ネコさんの特徴をより深く知ることで、快適な環境にしてあげれたらな、と思います。これからも参考にさせてください。ありがとうございました。
※バイオロギング…「バイオ(bio=生物)」+「ロギング(logging=記録)」。
野生動物に小型の記録計やビデオカメラを取り付けて、動物の行動を動物自身に測らせる手法。
40代 女性 くま
真上をあまり見ないと聞きますがよく上を向いています。よく色盲だと言われてきましたが、赤色がわからないだけなのですね、青色や黄色はわかるようで驚きました。おもちゃの色などをわかっているのでしょうね。猫ちゃんの世界も広がりますね。実家の猫ちゃんは、光るものによく気が行くのとやはり黄色を好むようで両親が黄色の小物をよく買ってくるのですが、その小物類を大切そうに抱き締めていたり、します。たまたまかと思いましたが、色ちがいには興味がないようです。ますます、猫ちゃんの生態に興味が湧きます。
女性 匿名
でも、動体視力は素晴らしくて獲物を逃がすことなく追いかけることができますね。
夜になると、もっと視力がよくなるらしく夜中にねずみをくわえて帰ってくるとよく聞くのはこうゆうことなのですね。
猫ちゃんは、おもちゃの色があまりわからないみたいなので、好きそうな色を選んであげていますがあまり、意味がないのですね。
形を認識する能力が人間のようには備わっていないので、ぼんやりと見える程度のようですね。
人間の視界と猫ちゃんの視界のちがい、とても勉強になりました。