猫に有害な不凍液(エチレングリコール)について
不凍液は、寒冷地や冬季などの気温が低い環境下でも、水を凍らせないために利用されています。車のエンジンの冷却水に使用されていることで有名ですよね。
不凍液の中でも、エチレングリコールが主成分となっているものは毒性が強く、猫の誤飲に特に注意が必要です。ここでは便宜上、「エチレングリコールが主成分の不凍液」を、「不凍液」と略してご説明していきたいと思います。
保冷剤にも使われている不凍液(エチレングリコール)
実はこの不凍液、夏場によく使うジェルタイプの保冷剤などにも入っていることがあります。ジェルタイプの保冷剤というと、アイス枕やおでこに貼るシート状のものなど、いろいろと売られていますよね。
暑い季節には強い味方の保冷剤ですが、使う時には猫の誤飲に要注意です。猫が保冷剤の袋を破いて、中身を舐めたりすることのないよう、常に気を配りましょう。不凍液は甘い香りや味がするので、猫が喜んで舐めてしまうことがあります。
不凍液は猫にとってだけでなく、その他の動物や人間にとっても有害です。しかし、猫は特に不凍液の影響を強く受ける動物です。同じ体重の犬と猫がいたとしたら、猫のほうが少ない量の不凍液でも、中毒を起こしやすいのです。たとえ少量でも重篤な症状になる可能性が高く、致死率も高い危険な液体だと言えます。
不凍液(エチレングリコール)かどうかの見分けが困難
不凍液は見分けられる?
猫が保冷剤を破いてしまい、中身を舐めてしまった時。中身が不凍液かどうかがわかれば良いのですが、実際には見分けるのは難しいです。
一応の手がかりとしては、凍らせた時にカチカチにならず、柔らかい状態を保っていたら、不凍液が入っているかもしれないと考えたほうがよいでしょう。
次に独特な甘い香りです。甘い味もしますが、毒性が強いため、確認のために舐めることは絶対にNGです!また、不凍液には誤って飲んだりしないように、他の液体と見分けがつくように色がつけられています。しかし、決められた色は無いため、「赤い色だから不凍液だ」といった見分け方はできません。
不凍液を使用した商品は減少傾向
現在新しく発売されている保冷剤には、不凍液を使用したものはあまり見られなくなりました。特に食品を冷やすために用いられる保冷剤には、現在ではほぼ使われることはないようです。しかし何年も前に買ったものや、今売られているものでも不凍液を使用した保冷剤は存在するので、しっかりと確認をしてから購入、使用しましょう。
猫が不凍液(エチレングリコール)を飲んだときの症状
不凍液(エチレングリコール)が体内に入り、肝臓で分解・代謝されると、シュウ酸を始めとするいくつかの毒性物質が発生します。これらが急性腎不全や低カルシウム血症を引き起こし、猫の命を奪うことがあります。
猫によって差はありますが、不凍液を飲んでから30分から1時間くらいで、最初の症状が出始めるのが一般的なようです。
主な症状としては、次のように多岐に渡ります。
- 元気がなくなる
- 多飲多尿
- ふらつき
- 嘔吐
- 下痢
- 震え
- 尿が出なくなる(症状が進んだ場合)
- けいれん
- 失神
- 昏睡
症状が進むにつれて、出てくる症状が変化していきますので、多飲多尿や嘔吐などの初期段階のうちに治療を受けることが大切です。
猫が不凍液(エチレングリコール)を飲んでしまった時の処置
もしも猫が不凍液を飲んでしまったら、すぐに動物病院へ連れて行きましょう。時間がたてばたつほど、回復の可能性が薄くなってしまいます。
不凍液の中毒は、症状だけを見ると、獣医さんが他の病気と間違えてしまうこともあります。焦って頭が真っ白になってしまうかもしれませんが、診察時には「不凍液を飲んだ」や「保冷剤の中身を舐めた」ということを必ず伝えるようにしてください。
治療方法は、早い段階なら飲み込んだ不凍液を吐かせたり、胃洗浄を行ったりします。その他、不凍液誤飲後の経過時間や症状に合わせて、エタノールや輸液の投与などを行います。
まとめ
夏場は保冷剤が大活躍する時期ですので、猫が不凍液を誤飲しないよう特に注意が必要と言えるでしょう。不凍液の中毒は、その症状(ふらつきや嘔吐など)から、熱中症と間違ってしまうことも考えられます。軽い熱中症なら、涼しくして休ませれば治るから……と、誤った対応をしているうちに、症状が進み、手遅れになってしまう危険性もあります。
保冷剤を猫がイタズラできない場所に保管すること。万が一猫が不凍液を舐めてしまった場合は、速やかに病院へ連れて行くこと。この2点を心に留めて、猫と一緒に暑い夏を乗り切りましょう!