猫が誤飲しやすい物の特徴や飲み込んだ時の症状、対処法まで

猫が誤飲しやすい物の特徴や飲み込んだ時の症状、対処法まで

猫は元々吐きやすい動物なため正常でも吐くことがあります。しかしいつもと違い頻繁に吐く、常に吐きたそうな様子の場合食べてはいけないものを誤飲している可能性が高いです。猫を飼育する上で1番多い事故が異物誤飲であり、私たちにとっては何気ないものを誤飲してしまうことがあります。人と共に生活している猫にとっては家の中は危ないものがたくさんあるのです。そこで今回は猫はどんなものをよく誤飲してしまうのか?また誤飲した際に見られる主な症状や対処法などをお話ししたいと思います。

SupervisorImage

記事の監修

日本獣医生命科学大学卒業。北海道の大学病院で獣医師として勤務。一般診療をメインに行いながら、大学にて麻酔の研究も並行して行う。「動物と飼い主さんに寄り添った治療」を目標に掲げ、日々診療に励んでいます。

猫が誤飲しやすい物

オモチャを咥えている猫

紐や糸状のもの

  • 羽根

猫の舌はザラザラと突起状になっており、「糸状突起」とも呼ばれています。その糸状突起は、猫の舌から喉に向かうようになっているため、糸状のものなどはひっかかりやすく飲み込みやすい構造となっています。

ふだんは毛づくろいや肉をそぎ落とす役目として働いてくれていますが、逆にその糸状突起は糸や紐類に絡まりやすいためそれらを誤飲しやすい原因の一つにもなっています。特に紐状のものは猫の誤飲するものの中でも多いものになるので、注意が必要です。

料理で使ったタコ糸やオモチャの紐・リボン、などの他にタオルや毛布などのほつれ糸も猫が誤飲することもあります。元々猫は食べ物を噛み砕いて食べず、5cmほどの小さいものであれば噛まずに丸飲みする動物です。そのためネズミのオモチャや猫じゃらしに付いている装飾なども誤飲しやすいです。

ビニール袋・ラップ

日常生活でどこの家庭でもあるビニール袋やラップも、猫が誤飲しやすいため注意が必要です。特に使い終わったラップは食べ物の匂いがついているのでよく誤飲しやすいです。

ビニール袋をかじって飲み込んでしまったり、お菓子の包装のフォルムも誤って誤食したりするケースも多いです。

輪ゴム、ヘアゴム

猫は紐状なものが好きなため、輪ゴムや包装用テープも誤って食べてしまうため危険です。髪ゴムも飼い主さんの匂いがついていたり、リボンなど装飾をついていたりするものも口に入れやすく、誤食を招く恐れがあるため注意です。

スポンジ

他にもスポンジを猫がかじって誤飲するケースもあり、消化できず詰まりやすいため危険です。

先が尖っているもの

  • 魚の骨
  • つまようじ

猫の誤飲事故で、魚の骨や串など先が尖っているものも誤飲することがあります。特に魚の骨は身がついていて匂いもあるため、魚好きの猫にとってはターゲットとなってしまいます。鋭利なものだと場合によっては、口の中に刺さってしまったり胃や腸など体内のどこかにも突き刺さったりする恐れがあるため大変危険です。

特に好奇心旺盛な子猫は何でも興味をもつため、誤飲しやすく注意が必要です。焼き鳥の串やつまようじも食べ物の匂いが付いているので、ゴミ箱や生ゴミをあさって誤飲するケースも多いです。

中毒をおこす危険があるもの

  • 人間の薬
  • 洗剤
  • ボタン電池
  • 観葉植物
  • ネギ類やチョコレート類など
  • タバコ

猫が誤って口にし、中毒症状をおこし命の危険があるものもたくさんあります。ネギ類やチョコレート類など人には害がない食べ物でも、猫にとっては中毒をおこしてしまうものがあります。

他にもユリなどの植物・観葉植物や洗剤を舐めただけでも一気に中毒をおこし、最悪の場合は命を落とす場合があったり、命が助かったとしても腎臓に障害をあたえ腎不全を引き起こしてしまったりするなど、後遺症をもたらすこともあります。

考えられるケースとしては風呂場などを歩いたときに床に溢れた洗剤が猫の肉球に着き、舐めてしまうことで中毒症状をおこすことがあります。

洗剤に含まれている界面活性剤は消化管の粘膜を損傷してしまい、特に濃縮タイプは重症になりやすいです。

電池やピアス

危険なのがボタン電池であり、飲み込んでしまうと体内で放電しアルカリ性の液体が流れ出してしまい、胃や腸を破壊し穴を開けてしまう恐れがあります。

猫は有害がどうか判別することはできませんので、猫ちゃんによっては何でも口に入れてしまう可能性が高いです。遊んでいて誤って…ということも少なくありません。ボタン電池やピアスなどの小さいものを誤飲することがあります。

猫が誤飲したときの症状

フードを吐く猫
  • 食欲不振
  • 元気がない
  • 嘔吐
  • 呼吸が苦しそう
  • 下痢や便秘

猫が誤飲したときにみられる主な症状として食欲不振で全く食べない、ぐったりして元気がない、何回も嘔吐したり何度も吐き出そうとする、呼吸が苦しそう(チアノーゼなど)、下痢や便秘などがあげられます。

誤飲したものが喉元に引っかかってしまい、詰まってしまうと気道が詰まってしまい、息ができず窒息してしまいます。胃に誤飲したものが詰まった場合は、胃の粘膜が傷ついてしまったり、腸閉塞をおこしてしまったりしてしまいます。

中毒を起こしているときの症状

  • 貧血
  • ヨダレ
  • 嘔吐
  • 呼吸が早い
  • 意識がない
  • 嘔吐や下痢
  • 不整脈
  • 呼吸困難

また猫の誤飲事故で非常に危険なのが中毒症状をおこしてしまうことです。玉ねぎや長ネギ、ニラなどのネギ類を猫が食べてしまうと中毒症状をおこすことは多くの飼い主さんが知っていると思いますが、これらのネギ類にはアリルプロピルジスフィドルという成分が含まれており、赤血球を破壊してしまうため溶血性貧血を引き起こします。

たばこ、観葉植物にも注意

喫煙者がいる家庭ではタバコによる誤飲事故も少なくはありません。ヨダレが多く出たり、嘔吐、呼吸が異常に速くなったりする、意識が朦朧となるなどの症状が起こり命を落とす場合もあります。

また家の中に飾っている観葉植物の中にも猫にとって中毒症状をおこすものがあり、ユリやスズラン、サフラン、アジサイ、スイセンなど多くの植物があげられます。誤飲した植物にもよりますが嘔吐や下痢、不整脈、呼吸困難などを起こします。特にユリ科の植物は非常に危険です。ユリが入っていたお水を舐めることでも中毒症状を引き起こしますので十分に気を付けましょう・

人用の薬でも風邪薬や正露丸などを誤って誤飲してしまうと重度な貧血を引き起こしてしまったり、肝臓に障害をあたえてしまったりします。

猫が誤飲したときの対処法

タオルにくるまっている猫と薬

吐かせようとしない

猫が誤飲しても飼い主さんが気づかないケースが多いです。そのため猫が何らかの症状をおこし、誤飲していると気づいたとしても何を誤飲したのか分かりません。

「吐かせないと」と焦ってしまうと思いますが、何を誤飲事故してるかわからないのに飼い主自身の独断で応急処置をしてしまうと、返って危険性を高めてしまう恐れがあります。

串や針、魚の骨など逆に吐かせてしまうと危ない物もありますし、猫の口から出ている紐や糸をむやみに引っ張ってしまうのも大変危険です。無理やり吐かせてしまうことも喉に詰まって窒息する恐れもあるため、自己判断での処置は大変危険です。

すぐに動物病院に連れていく

猫の誤飲事故で吐き続けている、常に吐きそうな様子などの何らかの症状が見られた際は直ぐに動物病院に連れてきてください。誤飲したものによっては腸閉塞を起こしている場合もありそういった場合は緊急手術が必要になることもあります。

また中毒に関しても、誤飲した量や大きさによって異なることもありますが、臓器に大きな障害をあたえてしまったり、神経症状が出てきたりすることがあります。「まだ大丈夫と」安易に様子を見すぎてしまうと最悪な事態を招いてしまい、その結果猫の命を落としてしまいます。

誤飲は時間との勝負

中毒の場合は症状が早く現れてきますが誤飲の場合は胃や腸など、どこかに閉塞がおきたことで症状が出てきますので、場合によっては時間が経過してからわかる場合があります。

腸閉塞の状態が長く続いてしまうとその部分の腸を切除しなければいけません。そのため誤飲してから時間が経過する分、どんどん危険性が高まっていくので少しでもおかしいと感じた場合は速やかに受診すべきです。

少しでも迷ったら連絡する

猫が誤飲したものが小さい場合、胃や腸に詰まることせずそのまま便と一緒に出てくることがあります。猫が誤飲した現場に遭遇した場合、ほんの少しであれば猫が元気な様子で変わりなければ様子を見てもいい場合があるとは思いますが、場合によっては少量の紐や糸、ビニールなどが胃の中で塊となり詰まってしまったり、どこかに引っかかってしまったりする可能性もあるため注意深く様子見ること、少しでも迷ったら動物病院に連絡してください。

猫の誤飲から発病する病気

病院に入院中の猫

腸閉塞

猫の誤食が原因でおこるものとしては腸閉塞があげられます。猫が紐や糸、ビニールなどを誤飲したことが原因で、腸に詰まってしまう状態のことを腸閉塞といいます。猫の腸閉塞をおこす原因として、自分の毛を飲み込んだことによる毛球症や腸の腫瘍などもあげられますが、異物の誤食も原因の一つになります。

主な症状

腸閉塞を起こすと食べ物や胃液が流れなくなってしまうため、嘔吐や吐き気が何度もおきます。
食欲もなく、ぐったりします。また便秘になることもあります。

異物誤飲により腸閉塞を起こしてしまうと、その部分の血流が流れなくなるため壊死してしまいます。場合によっては壊死した部分から穴があき、便や大腸菌などの細菌類がお腹の中に漏れ出してしまう恐れがあり危険性が非常に高くなります。腹膜炎を発症し激しい腹痛や発熱、細菌が全身に行き渡ることで体全体に炎症がおき命を落としてしまいます。

処置の方法

異物誤飲で腸閉塞になった場合は手術で誤飲した異物を摘出しなければいけません。また長時間腸閉塞の状態が続いている場合は腸の一部が壊死している可能性があるため、壊死している一部の腸があればその部分を切除します。

中毒による急性腎不全

洗剤やユリなどの観葉植物などが原因で中毒を起こすと、急性腎不全を発症する恐れがあります。急性腎不全は何らかの原因により、急激に腎臓機能が著しい低下を起こし様々な重篤な症状を引き起こします。

猫が急性腎不全を起こす原因として代表的なものとしては、おしっこの通り道に石などが詰まることでおこるものがあげられますが、中毒の場合は腎臓自体に直接ダメージが与えられ腎単位であるネフロンが破壊され腎臓自体が障害が起こることで発症します。

主な症状

猫が誤飲事故により中毒を起こし急性腎不全を発症した場合、腎臓機能が急激に低下するためオシッコの量が著しく減少したり、元気喪失、食欲低下したりするなどの症状が現れます。重度だと嘔吐やケイレン発作などの意識障害、低体温などがおこります。

処置の方法

中毒の場合は体内に溜まっている毒素を薄める、電解質などの体液のバランスを戻すために点滴治療を行います。急激に腎臓機能が低下するので、治療が遅れてしまうと命を落とす危険があります。

猫が誤飲したときの治療法やかかる費用

病院で手術を受ける猫

猫が誤飲したときの治療費

動物病院によっても治療費が異なってきます。開腹手術となった場合は数日間入院が必要であり、そのため手術費の他に入院費や検査代、点滴・注射代などトータルで10万ほどかかる場合があります。しかし誤飲したものや猫の状態によってはそれ以上かかる場合もあります。

誤飲の処置前の検査

処置や手術を行う前に猫が何を誤飲したのか、誤飲した異物が体内のどこにありどれくらいの大きさや量なのかレントゲン検査をしたり、バリウム検査で消化管の通過障害がないか確認したりする必要があります。

内視鏡処置や開腹手術は全身麻酔をかけるので猫の一般状態に問題はないか知る必要がありますし、中毒を引き起こすものを誤食した場合体の中がどうなっているのか血液検査をする必要もあります。

猫の誤飲の治療法

開腹手術

ほとんどが開腹手術となり胃や腸を切開し、直接誤飲した異物を摘出します。誤飲したものや量、長さによっては複数箇所切開しなければいけない場合があります。誤飲した異物が腸に詰まり腸閉塞を起こしている場合、腸の一部が壊死しているならば異物摘出とともに壊死した部分の腸を切除しなければいけません。そのため猫の体に大きな傷ができ、大きなダメージをあたえてしまいます。

内視鏡

誤食したものによっては内視鏡でとることも可能です。また猫が誤飲した物が胃の中にあり、吐いても問題ない物であれば催吐処置を行います。しかし誤飲した物が紐や糸状なもの、串や針などの鋭利なものは吐かせることで消化管を傷ついてしまうため催吐処置を行うことはできません。

また誤飲した物が胃にある場合、内視鏡により異物を取り除く方法もありますが催吐処置と同様に紐や糸状なものは無理に引っ張っしまうと危険性が伴い、串や針などの鋭利なものも胃や食道を傷ついてしまうため、猫が誤飲したものによっておこなえるかどうか変わります。

まとめ

毛糸と遊ぶ猫

猫の舌には糸状突起がありザラザラしています。またそれらは舌先から喉の奥に向かうような構造をしているため、紐や糸状のものが絡まりやすく誤飲しやすいです。そのことから猫の誤飲事故で多いものは特に紐や糸、リボンなどです。

しかし洗剤やユリなどの観葉植物などによって中毒症状をおこしたり、串などの鋭利なものを飲み込んでしまうこともあります。

ですが誤飲したものによっては症状が異なったり、現れてくるまで時間がかかったりする場合があります。誤飲したものがほんの小さければ便と一緒に出てくることもありますが、場合によっては胃の中で塊となり詰まってしまう恐れがあります。

もし誤飲したものが腸に詰まり腸閉塞を起こすと血行不良により壊死してしまうため、少しでも猫に異変が生じた場合は直ぐに動物病院に連れてきてください。誤飲したものにより治療法が変わることがありますが、ほとんどが開腹手術となり、胃や腸に切開し直接異物を摘出するので、猫の体に大きなダメージをあたえてしまいます。

そのため、猫が誤飲事故を起きないように、安全な生活環境作りを心がけることが大切です。オモチャを出しっぱなしにせず遊び終わったら片付けたり、猫が手に届きそうな危険なものは排除したりするようにしましょう。

スポンサーリンク