猫の食生活の変遷
一昔前の猫は、いわゆる「ねこまんま」と呼ばれる食事が中心でした。家庭での残り物を食べさせる習慣は、現在ほどキャットフードが普及していなかったことも、理由として挙げられるでしょう。確かに「ねこまんま」でも生きることは可能です。しかし、猫が健康的に長生きするという点ではデメリットが生じます。
人間との食事の違い
例えば塩分量。人間の残り物ということは、猫にとっては塩分が多い食事になります。また、猫が必要とする栄養素も十分に摂取することができません。基本的に人間にとって身体に良いとされる食事と、猫にとってのそれには違いがあるのです。
キャットフードの進化
現在のキャットフードは年々進化し、健康に気遣った商品も豊富に揃っています。猫の平均寿命が完全室内飼育の場合で約16歳にまで延びた背景には、医学の進歩の他にこのような食生活の変化も関係しているといえるのではないでしょうか。
キャットフードの分類
キャットフードは大別すると次の4つに分類できます。
- 総合栄養食
- 一般食
- その他の目的食
- 療法食
さらに、この4種類のフードには、「ドライタイプ」と「ウエットタイプ」の2種類が存在します。これらのフードはそれぞれ別の役割を果たします。
総合栄養食
総合栄養食は猫にとって主体となる食事です。必要な栄養素が全て含まれており、総合栄養食と水を摂取することで満遍なく栄養を摂ることができます。フードを購入する際は、必ず「総合栄養食」と記載されていることを確認しましょう。そして、年齢や特定のケア(肥満対策や毛玉対策)など愛猫にあわせて選択しましょう。
一般食
これは、特定の栄養素を補う役割を果たす食品です。つまり、一般食のみでは1日に必要とする栄養素を網羅することができません。フードにも「総合栄養食と併用してお与えください」と必ず記載されています。よく確認してから購入するようにしてください。
その他の目的食
これは、いわゆるおやつです。間食やご褒美としての位置づけになります。嗜好品ということもあり、比較的猫が好んで食べる傾向にあります。しかし、食べ過ぎには要注意です。栄養が偏らないようにするためにも、「1日に必要なカロリー量の10%程度」に留めておきましょう。
療法食
これは、病気の治療や予防を目的とした食事です。個々の疾患において控えるべき成分を抑えたり、補ったりと普通の食事とは明らかに異なるものです。療法食には必ず獣医師による診断が必要です。食事療法が必要な場合のみ食べさせるようにしましょう。
長生きするためのポイント5つ
これまでのことを踏まえ、愛猫が長生きする食生活とは何かを考えてみたいと思います。大切なことは「猫にとって健康的な食事」です。いくつかポイントをご紹介いたします。
1. 食事量の目安を知る
食事量の目安を知り、それを超えないように心がけることは長寿への第一歩です。少しぽっちゃりしているほうが健康的と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、猫にとっての肥満は命に関わる重大な病気を招く恐れがあります。病気による苦痛を与えないためにも、目安を覚えてあげましょう。一般的に好ましい食事量は以下の通りです。
- 標準的な成猫(体重3kg):109~157kcal
この範囲を超えない程度に、愛猫の運動量を見ながら調節しましょう。
2. 食事の回数を検討する
猫は、少ない量を数回に分けて食べる習性があります。また、空腹の時間が長時間にわたると脂肪を溜め込みやすい体質になってしまい、肥満の原因にもなります。回数を分けることは、肥満の予防や内臓への負担を軽減させることにつながります。目安は以下の通りです。
- 子猫:1日3~4回(少量ずつ)
- 成猫:1日2回(普通量)
- 老猫:1日3~4回(少量ずつ)
回数はあくまでも目安になります。猫によっては、成猫になっても2回では上手に食べられない場合があります。1日に必要なカロリーの範囲内であれば、2回以上に分けて食べさせても大丈夫です。ストレスなく食べられる回数を検討してみてください。
3. ライフステージごとに必要な栄養状態を把握する
各ライフステージにより、必要とする栄養は異なります。育ち盛りな子猫、やや落ち着きが見られる成猫、ゆったりと過ごす老猫と、それぞれの生活リズムに必要な栄養状態を把握しましょう。
- 子猫:栄養価の高い食事
- 成猫:健康維持を目的にバランスの良い食事
- 老猫:食べやすい食事の中で健康維持を目指す
特に高齢期に突入した老猫の場合は、若い猫のようなドライフードが食べられなくなります。柔らかいウエットフードや、ペースト状のフードなど食べやすい食事のなかで、健康維持を目指しましょう。そして老猫の場合は様子を見守ることも大切です。
4. ドライフードとウエットフードを上手に活用する
ドライフードはある程度保存ができ、置き餌にも活用することができます。フードの中でも手軽さが最大のメリットです。しかし、あまり水を飲まない猫の場合は水分が不足してしまいます。水分不足は腎臓や尿路系の疾患の原因につながります。そこでウエットフードも活用することで、ある程度水分を補うことができます。
ただし、ウエットフードは腐敗が早く保存ができません。その場で食べる量のみを食べさせるようにしましょう。また、歯に汚れが残りやすく、歯周病になりやすいというデメリットを持っています。ウエットフードを活用する場合は、歯磨きをする習慣をつけると良いでしょう。
5. 人間の食べ物を食べさせない
むやみやたらと人間の食べ物を食べさせないことも、長生きには重要なポイントになります。人間にとって良いとされる食べ物が、猫にとっては害になる場合もあります。
また、たとえ害にならないとしても、猫にとっては害になるか否かを判断することはできません。人間の食べ物を食べる習慣は、後にキャットフードを食べなくなることや、誤って危険な食べ物を食べてしまうという危険性があるのです。よって、人間の食べ物は食べさせないのがベターです。
まとめ
今日のねこちゃんより:ミーコ / ♀ / 3歳 / キジトラ / 2.8kg
今回は、猫が長生きするための食生活に関するポイントを紹介させていただきました。ここで紹介したことはあくまでも目安であり、それが全てというわけではありません。
最も重要なポイントは「愛猫を理解すること」です。人間が皆異なる存在であるように、猫にも個性があります。食生活の習慣もそれぞれ異なるでしょう。
ここで紹介したことを参考にしながら、愛猫にとっての最善策を模索してみてください。