猫に炭水化物は必要なの?
愛猫の健康のため、毎日の食事に気を使いたいという飼い主さんは多いはず。市販されているキャットフードには炭水化物を多く含むものがありますが、肉食動物の猫にとって炭水化物は必要なのでしょうか?
結果から言えば、猫に肉に含まれるタンパク質から体を動かすためのエネルギーを取り込むので、炭水化物は本来必要のない栄養素です。
しかし、肉食で得られるタンパク質や脂質だけではバランスが偏ってしまうため、少量の野菜や炭水化物も摂取することで不足しがちなビタミンやミネラルを補います。
炭水化物はエネルギー源やお腹の調子を整える働きを持つ
炭水化物は、お米やパンなどに含まれるデンプン・ブドウ糖・オリゴ糖などの糖質と食物繊維(繊維質)の2つの成分で構成されている栄養素です。
糖質は消化・吸収ができて体を動かすエネルギー源になり、食物繊維は消化されず消化器や腸の調子を整えてくれる働きを持っています。
野生の猫は小動物を食べて炭水化物を摂取する
飼い猫はキャットフードに含まれている炭水化物を摂取できますが、野生の猫は小鳥やネズミを丸々1匹食べることで必要な分だけの炭水化物を摂りながら生きています。
小動物に含まれる炭水化物は10%程度で、このくらいであれば猫にとって健康の問題は出ないと言われています。
猫は炭水化物を消化するのが苦手
猫は炭水化物を消化するのが苦手なため、うまくエネルギーとして取り込めず、糖質の30〜40%ほどしか活用できていません。
食べ物を消化する過程では、口に入れてから細かく分解する作業をします。人は食べ物を歯で噛んですり潰すことで小さくしてから体内の消化酵素でより細かくする一方で、猫は咀嚼をほとんどせず丸呑みに近い食べ方をし、大半を体内の消化酵素で細かくしています。
また、人は穀物や芋などが主食で炭水化物の消化に適した体の作りになっていますが、猫は肉食に適した体の作りになっているため、炭水化物中のデンプンを分解する酵素のアミラーゼがごくわずかしか出ないのです。
消化自体はできても、有効活用できないまま体外に出ていってしまうので、炭水化物がたくさん含まれるフードを食べ続けている猫のうんちは臭くなり量も多くなります。その点でも低炭水化物に切り替えるのがベストと言えますね。
ちなみに、炭水化物中の食物繊維は動物の体内にある消化酵素では分解できませんが、猫のお腹の調子を良くするのに一役買ってくれます。
キャットフードに含まれる炭水化物は問題ない?
「猫は炭水化物を消化するのが苦手」と聞くと、キャットフードに含まれている炭水化物は大丈夫なのかと心配になりますよね。その点も確認しておきましょう。
キャットフードに含まれる炭水化物は消化しやすくなっている
炭水化物で猫が消化しづらいのは、デンプンであると説明しましたが、デンプンには生の状態と糊化(α化)した状態があります。
お米で例えると、生米と炊いたお米のような感じで、生のデンプンに水分を加えて加熱するとα化してスムーズに消化できるようになるのです。人間も炊いたお米なら難なく食べられますよね。
キャットフードに含まれる炭水化物は、猫が食べても消化しやすく吸収されやすいものになっているので含まれていても問題はありません。
キャットフードに炭水化物が使われる理由
穀物などの炭水化物は主にドライフードに多く使われていますが、それには以下の理由があります。
- カリカリした食感を出す
- 粒の形を長い時間保つ
- フード製造時のコストを抑える
人間にとっては、フードが安価で買えたり保存がしやすくなったりと都合が良くなりますが、炭水化物が30〜40%も入っているキャットフードを食べ続けるのは猫の体に悪影響を及ぼしかねません。
まず購入する前にキャットフードの成分表を確認して、高タンパク・低炭水化物なものを選びましょう。
炭水化物(糖質)は表示義務がなく、どれだけ含まれているかの割合が書かれていないことが多いですが、1つの目安としてタンパク質が35〜40%以上含まれているものがおすすめです。
もし、おおよその含有率を判断したい場合は、100から【タンパク質・脂質・食物繊維・灰分(ミネラル)・水分】の合計を引くと分かります。
猫に炭水化物を与える時の注意点
少量であれば猫が食べても問題ない炭水化物ですが、健康状態や生まれ持った体質によっては、与える量に注意が必要になったり、健康な猫でも体調が悪くなってしまったりするケースがあります。
炭水化物の与えすぎには要注意
炭水化物(糖質)が多く含まれるフードを大量に与えてしまうと、分解するために腸に負担がかかってしまい消化機能の低下を引き起こします。
さらには消化不良を起こしてしまい、下痢や嘔吐の症状が出ることも十分に考えられます。
「なんだか最近愛猫のお腹の調子が悪いかも?」と思ったら軽視せず、症状がひどい時は動物病院に受診した上で、普段食べるフードの相談や見直しを行ってみてください。
猫の健康状態によっては炭水化物を避ける
猫の体調や体質によっては、与えるキャットフードを変える必要が出てきます。以下に当てはまる場合は、できるだけ低炭水化物のものを選ぶようにしましょう。
- 肥満
- 糖尿病
- すい臓疾患
- 悪性腫瘍
肥満はもはや言わずもがなですが、炭水化物の摂りすぎは糖尿病のリスクが格段に上がってしまうのも怖いところです。
猫はもともと糖尿病になりやすいと言われている動物で、そこに加えて炭水化物をたくさん摂ってしまうと、血液中の糖が増えてしまい余計に糖尿病の危険が高まります。
日々の食事が健康を作る
日々与える炭水化物の量を減らしていくことにより肥満の解消になるだけでなく、肥満が元になって起こる疾患や病気の対策にもつながります。
もし、愛猫の体重が気になっている方は、毎日の食事から変えてみてはいかがでしょうか。
また、血糖値のコントロールが必要な糖尿病の療法食や、ブドウ糖を栄養として増大してしまう悪性腫瘍のケアにも低炭水化物のフードが用いられます。
ただし、合併症や病状によって変わることもあるので、かかりつけの獣医さんとよく相談して決めてください。
グレインフリーのフードで穀物アレルギーにも対応
人に様々なアレルギー反応があるのと同じく、猫もアレルギーを起こすことがあり、中には穀物に対して反応が出てしまう猫もいます。
その場合、穀物を使っているキャットフードを食べさせるのは危険なので、穀物アレルギーを起こしてしまう猫には「グレインフリー」「ノーグレイン」といった穀物不使用のものを与えましょう。
愛猫は穀物アレルギーではないけれど、穀物を使っているフードは不安だという方も、穀物不使用を選んでおくと無難です。
まとめ
猫にとって、炭水化物は本来必要ないものの、栄養のバランスを取るために少量あると良い栄養素です。キャットフードで言えば30%以下の割合が望ましいので、成分表の確認を癖づけてみてください。
多量の炭水化物を摂ると下痢や嘔吐の症状がでたり、健康状態によっては悪化させてしまったりするので要注意。適切な摂取量を守り、愛猫の健やかな体づくりのサポートをしていきましょう。