猫に危険な秋の食べ物
人間にとっては食欲の秋。でも猫にとっては注意が必要な食べ物があります。ここでは秋が旬の食べ物の中で、猫が口にしてしまうと危険なものを、危険度が高い順にご紹介いたします。
1.イチジク
猫がいる家庭では、イチジクはとても危険な食べ物です。猫の手が届かない場所で保管し、食べるときも猫が触れてしまわないように注意が必要です。イチジクが危険な理由には、イチジクに含まれる「フィシン」と「フロクマリン」という成分が関係しています。
これらの成分は中毒症状を引き起こします。触れるだけでも症状が現れる可能性が高く、果実だけではなく枝や葉、イチジク属の観葉植物も危険です。万が一食べてしまうと次のような症状が現れます。
- 下痢
- よだれが多くなる
- 皮膚の炎症
- 頭を振るなど
このような症状が見られたら動物病院を受診しましょう。
2.里芋・長芋
里芋や長芋など、粘り気のある芋類に触れると手が痒くなったという経験はありませんか?痒みを引き起こす成分の正体は「シュウ酸カルシウム」です。これは加熱をすることで、無害なものへと変化します。人間が食べても問題ありません。しかし、猫にとってはリスクのある食品です。猫が食べてしまうと次のような不調を引き起こす可能性があります。
- シュウ酸カルシウムによる尿路結石のリスク
- 豊富な食物繊維が原因になり便秘が引き起こされる
- 生の里芋を食べることによる体調不良
尿路系疾患に注意が必要
猫は腎臓系や尿路系の病気を患いやすい動物です。これは、猫種に関係なく注意が必要な病気です。よって、加熱調理により無害になるシュウ酸カルシウムも猫にとってはリスクがあるのです。そして本来、食物繊維は便秘に良い成分ではあるものの多く摂取することで、逆に便秘を助長してしまうことがあるのです。
猫は本来肉食動物
肉食動物である猫にとって野菜に含まれる食物繊維は、不調を招く可能性を秘めています。また、生の里芋を食べてしまった場合、嘔吐・下痢・口内炎・皮膚炎などの症状を呈することがあります。里芋は生の状態ではエグミが強く、誤飲する可能性はそれほど高くはありません。それでも注意するに越したことはありません。
万が一、生であっても加熱されたものでも、里芋を猫が食べた後に体調不良が見られた場合は、動物病院を受診しましょう。その際、口にした量も分かる範囲で、獣医さんに伝えるようにしてください。長芋に関しても最初に説明したように、痒みを引き起こす成分が里芋と同様であるため、避けなければなりません。
3.ナス
「秋茄子は嫁に食わすな」という言葉があります。この言葉の意味には諸説ありますが、猫と暮らす飼い主さんは「秋茄子は猫に食わすな」と覚えておきましょう。これは、もったいないからではありません。危険だからです。
季節に関係なくナスをはじめとするナス科の野菜(トマト・パプリカ・ピーマンなど)は、猫に食べさせてはいけません。これはナス科の野菜に含まれる「アルカロイド」という成分が神経毒性を持っているからです。猫がアルカロイド中毒を発症すると、次のような症状が現れます。
- めまいや痙攣(けいれん)
- 心拍数の上昇
- 血便など
これは中毒の中でも重篤な症状です。これら以外にも、下痢や嘔吐を繰り返す・よだれを垂らし呼吸困難になるなどの症状がある場合は、速やかに動物病院を受診してください。
家庭菜園に注意
そして、大切なことは一般的に販売しているナス科の野菜だけではなく、熟していないナス科の野菜にも危険があるということです。ナスやトマトは家庭菜園でも栽培できる身近な野菜です。もしもご家庭で栽培している場合は、猫が誤飲しないように注意してください。
4.根菜類(ごぼう・レンコン)
ごぼうやレンコンなどの根菜類も、猫にとっては避けるべき食品です。根菜類には「タンニン」という物質が含まれています。これは渋みのある成分です。この渋み成分であるタンニンを猫が摂取すると肝機能・腎機能に障害を引き起こす可能性があります。
5.ふどう(レーズンも含む)
ぶどうは、犬が食べると最悪の場合命を落としてしまう可能性があるほど危険な果物です。生のぶどうはもちろん、加工したレーズンも非常に危険な食べ物となっています。猫の場合も同様であるという事例はまだないのですが、注意するに越したことのない食品です。
考えられるリスクとしては、中毒による急性腎不全です。とくに果肉よりもぶどうの皮にその危険がある可能性が示唆されています。ぶどうやレーズン、ぶどうを使用した食品には中毒してください。
注意の必要な食べ物
先ほどの危険な食べ物のように、絶対に避けるべき食品ではないものの、注意が必要なものを紹介いたします。
さつまいも
優しい甘みのあるさつまいもが好きという方も多いでしょう。秋の味覚としても代表的な食品だと思います。さつまいもは、加熱をしたものであれば猫が食べても危険が及ぶものではありません。
食べさせる場合は、窒息を避けるために細かくしてあげましょう。ただし、糖分を含むさつまいもは肥満のリスクがあります。くれぐれも食べさせすぎないようにしてください。
かぼちゃ
かぼちゃも、さつまいと同様に、少量であれば食べせても大丈夫な食品です。ただし、伴うリスクもさつまいも同様であることに注意しましょう。そして生のかぼちゃと種は食べさせてはいけません。
栗
栗は少量であれば食べさせても良いとされています。ただしマグネシウムを含む栗には、尿路結石のリスクがあります。尿路結石の発症リスクが高い猫の場合は避けなければなりません。そして必ず摂取すべき食品ではないため、無理に食べさせなくても良いでしょう。万が一食べてしまっても命の危機に直結するものではないと認識するに留めておくのが無難です。
クランベリー
クランベリーは少々複雑です。尿路結石の予防にも悪化にも繋がる食べ物なのです。以下のことを覚えておいてください。
- 膀胱炎やストルバイト結石の予防になる
- シュウ酸カルシウム結石を悪化させる
要は、結石の種類によって正反対の効果をもたらすものということです。これには「キナ酸」という成分が関係しています。
キナ酸に注意
キナ酸は、膀胱炎やストルバイト結石の予防効果が期待できます。実際にサプリメントも存在します。しかし一方ではシュウ酸カルシウム結石の猫は絶対に食べてはいけません。pHの数値が高くなることで起こるストルバイト結石と、低くなり過ぎることで起こるシュウ酸カルシウム結石は元々正反対のものだからです。
また、頻繁に繰り返す膀胱炎やストルバイト結石に悩む飼い主さんにもお願いがあります。治療の基本は投薬治療や療法食です。クランベリーを食べることで完治するわけではありません。自己判断で基本の治療を中止することはしないでください。もしクランベリーやそのサプリメントを試してみたい場合は、必ず獣医さんに相談してください。
季節に関係なく危険な食べ物「ネギ」
長ネギも秋の味覚のひとつです。しかし、ネギ及び玉ねぎは季節に関係なく非常に危険な食べ物です。ネギには以下のような症状を呈する危険性があります。
- 嘔吐、下痢などの消化器症状
- 貧血
- 肝障害(黄疸肝臓肥大)
- 尿が赤くなるなど
たとえ加熱したものであっても危険なことに変わりはありません。ネギや玉ねぎは次のような病気を引き起こし、最悪の場合は死に至ることがあります。
溶血性貧血
ネギや玉ねぎ、ユリ科の植物などに含まれる「アリルプロピルジスフィド」という成分は、赤血球を破壊する作用を持っています。溶血性貧血とは、赤血球が壊されることで引き起こされる貧血なのです。原因を取り除くことで自然治癒することもありますが、命を落としてしまうこともあります。
急性腎不全
赤血球の色素が腎臓を破壊し、突然腎機が機能しなくなってしまいます。急激に腎機能が低下している場合は、直ちに投薬や点滴治療を行います。数日間で命を落としてしまうこともあるため、異変があれば至急、動物病院を受診してください。
万が一、猫がネギや玉ねぎを食べてしまった場合は、かかりつけの動物病院に指示を仰ぐことが重要です。そこで、飼い主さんによる応急処置を必要とする場合は、指示通りの行動を実行しましょう。何もせずに受診をするように指示された場合は、すぐに病院へ連れて行きましょう。
秋のイベント「ハロウィン」に潜む危険な食べ物
この頃は、日本でも「ハロウィン」というワードが定着しました。そして、猫モチーフの可愛らしいお菓子も増えています。自分へのご褒美として購入したり、猫好きの仲間同士でプレゼントしたりと、この時期が楽しみという方もいらっしゃるでしょう。このハロウィンのお菓子にも、猫にとっての危険があります。
チョコレート
お菓子の定番であるチョコレート。ハロウィンの時期には猫モチーフのチョコレートや、チョコレートを使用したお菓子などが多数販売されます。人間にとっては美味しいチョコレートでも、猫にとっては非常に危険な食べ物です。チョコレートは次のような中毒症状を引き起こす可能性があります。
- 消化器症状(嘔吐下痢)
- 尿のトラブル(排尿障害尿の増加)
- 興奮
- けいれんなどの神経症状
- 脱水症状
- 筋肉低下
猫が誤って食べてしまった場合、4時間以内に症状が出現します。ただし、猫が空腹だった場合はそれよりも早く症状が出ることもあり得ます。最悪の場合、命を落としてしまうほど危険なものです。万が一食べてしまった場合は、ネギのときと同様の行動を実施してください。
まとめ
猫にとって危険な食べ物、注意が必要な食べ物について紹介させていただきました。どれも身近な食品で、人間にとっては秋の楽しみのひとつだと思います。ここで紹介した食品にはひとつ共通点があります。
それは、肉食動物である猫は本来ならば食べる必要性のない食品ということです。食べること自体に問題のない食品でも、動物病院でのアドバイスや猫の栄養に関する専門家のアドバイスのもと、慎重に扱わなければなりません。
また、非常に危険な食べ物に関しては保存方法をはじめ、食べる際にも誤って食べてしまわないようによく注意するように心がけましょう。