猫が飼い主さんに発するラブサインとは?
猫は飼い主さんをどう思っているのでしょうか?猫と暮らしていると、ふとそのようなことを考える瞬間があるでしょう。猫は人間のように、言葉で気持ちを伝えることができません。そして、表情筋も人間のように発達していないことから、想いを表情によって表現することが困難です。このような猫の特性から、一緒に暮らしていながらもその想いを汲み取ることは意外と難しいのです。
よって、野性的な行動やルックスから、猫は人間に関心がないと思われがちです。しかし、現実は全く異なります。幼い頃から人間と暮らす猫をはじめとし、成猫になってからでも人間に優しくされた猫は人間に心を開くようになります。そして、飼い主さんのことを母猫やきょうだい猫のように身近で大切な存在として慕うようになります。
猫が飼い主さんに心を許し、特別な相手になることで、その気持ちを猫なりの方法で表現するようになります。猫の愛情表現は独特なものではありますが、日々の生活の中でよく目にする行動や仕草です。愛猫からのラブサインを見逃さないためにも、猫の愛情表現をいくつかご紹介いたします。
1.見つめてくる
猫が直接目を見つめる相手は限定されています。それは主に、母猫・きょうだい猫・飼い主さんを含む親しい人間です。ここで挙げた相手以外に対しては、直接目を見つめることはありません。猫の社会におけるルールの中に、目を見つめることは喧嘩を売っている行為にあたるというものがあります。
初対面の猫や、人馴れしていない猫に遭遇し、可愛らしさから目を見つめると猫に目を逸らされてしまうのはこのためです。特に人間の場合は、自分よりも何十倍も体が大きく、喧嘩になれば勝ち目がないと判断します。そこで、人間が喧嘩を売ってきても(人間にその意思がなくても)、自分は弱いので勘弁してほしいという思いを込めて目を逸らすのです。それほど猫社会では目を見つめる行為が御法度とされているのです。
そのようなルールが存在する中で、猫が我々を見つめてくるということは、心を許している証になります。逆に喧嘩を売られているのではないかと疑問に思うかもしれません。先の行動がそう断定できるのには根拠があります。
更に耳でもサインを送っている
それは人を信頼している場合、目を見つめるだけではなく耳が正面を向き、姿勢も普通です。一方で警戒している場合には、耳が後ろに倒し(いわゆるイカ耳)身を縮め、唸り声を発してきます。両者には明らかな違いがあるのです。
また、猫は観察力の優れた動物です。人と接点を持つことで、人間同士のコミュニケーションにおいて、目を見ることが一般的な行為であると理解します。よって、人の目を見ることができるようになり、人から見つめられることにも慣れるのです。
さらに愛猫が目を見つめてくるだけではなく、ゆっくりと瞬きをしてきた場合は「大好き」のサインになります。これも些細な行動なので、真意を知らないと特に気にならないことでしょう。だから意外と見落としがちなサインなのです。
2.頭突きをしてくる
愛猫が接近してきたかと思ったら、頭をゴツンとぶつけてくることはありませんか?動物の頭突きといえば、ヤギや鹿が喧嘩をするシーンを想像するかもしれません。しかし猫には彼らのように角が生えているわけではなく、頭突きといっても痛いと感じるほど激しいものではありません。
猫の場合は、ヤギたちのように喧嘩をしようとしているわけではありません。この頭突きも愛情表現なのです。猫の顔周辺には自らのにおいを放出する「臭腺」が多く存在します。頭突きをしながら飼い主さんにマーキングしているのです。マーキングというとネガティブなイメージが湧くかもしれませんが、これは汚い行為ではありません。
頭突きや頬ずりをされても人間にはそのにおいを感知することはできず、特に弊害はありません。これは猫同士のみで感知できる特別なにおいになります。例えるなら、特殊なライトを照らさなければ文字が浮かび上がらない蛍光ペンのようなものです。一体、なぜ猫は愛情表現としてマーキングをするのでしょうか?
それは飼い主さんを自分だけで独占したいからです。自分のにおいをつけておき、「この人は私だけのものだから横取りしないでね」とアピールしているのです。ことの真意を知ると嬉しくなりますね。
3.お腹を見せてゴロンと転がる
猫にとって腹部はは急所です。警戒している状況では決して見せることはありません。猫が意を決してお腹を見せるということは、とても信頼しているということなのです。愛猫が飼い主さんの目の前でお腹を見せてゴロンと転がったら、次のような気持ちが込められています。
- 遊んでほしい
- 甘えたい
- 飼い主さんが喜んでくれる
愛猫が飼い主さんに心を許し、大胆な方法で遊びに誘ってきています。また、甘えたいという気持ちからもこのような行動に出ることがあります。何れにしても急所を晒すということは、少しでも疑念を抱く相手にはできない行動です。
飼い主さんの反応を覚えている
また、猫は人間のように体験したことを記憶することができます。その記憶を元に、今後似たようなシチュエーションにおいて取るべき行動を判断しているのです。猫が突然ゴロンと転がって腹部を見せたところ、飼い主さんがとても喜んでくれたという経験を持つ猫は、また喜んでくれると思い継続して行うようになります。
4.飼い主さんの顔を見ながら爪を研ぐ
猫にとって爪研ぎは日課のひとつです。その爪研ぎを飼い主さんを見つめながらしているときは、一種の愛情表現になります。この一見するとラブサインとはかけ離れたような行動には「さぁ、大好きな飼い主さんといっぱい遊ぶぞ!」という思いが込められています。簡単にいえば気合を入れているのです。
真相を知らずにこの行動を目にすると、奇襲をかける準備をしているように見えるでしょう。機嫌よく爪研ぎをしていても、まるで悪魔の微笑みのような顔すら浮かんできます。しかし、安心してください。猫があなたのを見つめながらバリバリと音を立てて爪を研いでいても、攻撃する意思は全くありません。むしろ遊びたいと思っているところなので、お気に入りのおもちゃを用意して一緒に遊んであげましょう。
5.顔や手を舐めてくれる
猫はよく毛繕いをします。恐らく、眠っている姿の次に多く見受けられる行動でしょう。猫と暮らしていても、猫自体から目立った体臭を感じないのはこの毛繕いのおかげなのです。猫は天敵に自分自身の居場所を悟られないために、毛繕いをしてにおいを消しています。通常は自分自身の被毛を手入れするセルフグルーミングが中心です。
しかし、母猫やきょうだい猫のように身近な相手に対してはお互いにグルーミングをし合うことがあります。これをアログルーミングといいます。このアログルーミングを人間にもしてくれるときがあります。それはまさしく親愛の証です。猫にとって顔や頭部はグルーミングしにくい部分になります。これをアログルーミングによって補っているということもあり、人間に対しても顔や手などを中心に舐めてきます。愛猫による愛とおもいやりが込められているのです。
猫が嬉しいと感じる部分
猫がある程度心を許した相手に撫でられて嬉しいと感じる部分は、顔周辺と耳の後ろ、そして背中になります。これらの場所を撫でる行動はアログルーミングに通じる部分があり、理にかなっているのです。猫同士であればグルーミングをしてもらったら、お返しに自分も相手の体を舐めてあげるのがマナーです。
しかし、さすがに毛むくじゃらの被毛を舐めるわけにはいきません。そこで愛猫がグルーミングをしてくれたときは、飼い主さんは撫でることでお返しをしてあげましょう。ちなみに時々、人間の毛髪を舐めたり噛んだりする猫がいます。これもグルーミングの一種であり、愛情表現になります。これは、本当に大好きな相手にのみ行われます。少々迷惑ではありますが名誉なことなのです。
猫からの愛情表現に応える
以上、代表的な愛情表現を5つ紹介させていただきました。中には愛情表現としては意外なものもあったでしょう。しかし、どれも一度は見たことがある行動なのではないでしょうか?猫は我々が気づいてあげられないだけで、感謝の気持ちや愛情を伝えてくれているのです。愛猫からの気持ちを受け取り、それに応えてあげることが大切です。とはいえ、どのようにこちらからは愛を伝えばよいのでしょうか?それは、次の項目でご紹介いたします。
愛猫の気持ちに応えてあげよう!~愛情の伝え方~
愛猫が我々に愛を伝えてくれているサインは、先程ご紹介した通りです。次は、我々が愛猫に対して愛情を伝える方法についてご紹介いたします。
優しく声をかける
猫は飼い主さんに声をかけてもらうことが大好きです。言葉の意味そのものは、残念ながら全てを理解することはできません。しかし、日常的に耳にしている言葉については、音や雰囲気から状況を推測することが可能です。猫が理解していて、特に喜ぶワードは次のようなものが挙げられます。
- ご飯
- 可愛いね
- 大好きだよ
- 愛猫の名前
- いい子だねなど
これらのワードに共通することは、「ポジティブな意味を持つ言葉」ということです。その一言がかけられると良いことが待っている言葉や、褒め言葉などは猫にとっても嬉しい一言なのです。
名前や褒め言葉をかける
名前も、愛情を込めて読んで貰えることで愛着がわくのです。ユニークな猫では、大人気のおやつである「ちゅーる」の歌を飼い主さんが歌うとどこからともなくやってくるという現象が起きています。必ずしも単調な言語に限らず、日常的に聞いている歌と美味しいおやつが結びつくことで、反応せずにはいられないのでしょう。
猫から絶大な信頼を得ている動物カメラマンの岩合光昭さんも、「いい子だね~」という褒め言葉を穏やかにかけています。愛猫に声をかけるときはやや高めの声で、優しく話しかけてあげましょう。ちなみに名前は叱る名場面では絶対に使用しないでください。
言語によるコミュニケーションが取れない猫にとって、人間の言葉は雰囲気を頼りにしています。叱る際に名前を呼んでしまうと、それ以降は名前を呼ばれる度に叱られるのではないかと身構えてしまいます。名前はポジティブ名場面のみで呼ぶように心がけましょう。
ゆっくり瞬きを実践する
ボディランゲージによる猫の言葉、いわゆる猫語を覚えたら積極的に愛猫に対して使ってみましょう。中でも「ゆっくり瞬き」は人間にも実践可能な猫の愛情表現です。愛猫と目が合ったときにゆっくり瞬きをします。こうすることで、愛猫には相思相愛であるとはっきり伝えることができるのです。また、人馴れの訓練中の猫に対してもこの方法で愛情を伝えてあげると理解しやすいでしょう。
遊びの誘いに応え、一緒に遊ぶ
猫は自分の要求に応えてもらえることで、安心感を得ることができます。遊びの要求も、サインを見逃さずにいることで猫が遊んでほしいタイミングに合わせることができます。遊びは、お気に入りのおもちゃを使って狩りに見立てたごっこ遊びをしてあげると良いでしょう。
室内飼育の猫にも野生の本能は備わっています。本能を好ましい形で満たすことは、飼い主さんが望まないイタズラを減少させる役目を果たします。これは飼い主さんにかかるストレスを軽減させることができます。また、愛猫も欲求不満によるストレスが軽減されるので一石二鳥です。
ソフトに撫でる
愛猫からのアログルーミングに応えることについては先ほど紹介しました。猫の舌はザラザラとした突起が付いており、舐めてもらうとその感触が印象に強く残るでしょう。中には軽く痛みを伴うほど激しい場合もあります。しかし、あくまでもお返しをする際はソフトに撫でましょう。爪を立てたり、同じ場所を擦るように撫でて摩擦を起こさないように注意します。
通常は指の腹や掌を使って優しく撫でます。人に撫でられることに慣れていない猫の場合は、手のひらよりも甲のほうが好む場合もあります。愛猫の反応をみながら試してみましょう。気持ちいいと感じているときは目を細めます。中にはうっとりとした表情を見せてくれる場合があるので、注目してみましょう
愛情表現のポイントは
猫に対する愛情表現は、人間流・猫流と両者の方法を上手に組み合わせることがポイントです。人間にはしっぽが生えておらず、耳も猫のように巧みに動かすことはできません。この不可能な部分は人間流の愛情表現で補うようにしましょう。猫はクールであっけらかんとした印象が強いですが、心の中では愛情をしっかりと受け止めてくれています。
また冒頭で、猫は表情による表現が困難であると紹介しましたが、長い付き合いになると微細な表情を読み取れるようになります。愛猫との絆を深める意味でも、日頃からよく観察してみると面白い発見があるかもしれません。
猫に愛される人の特徴
猫は人との暮らしに何を求めているのでしょうか?せっかく愛らしい猫と暮らすのであれば、楽しく幸せな生活を送りたいですよね。そこで、ここからは猫に愛される人の特徴を紹介させていただきます。愛猫にとって理想の飼い主さんとは次のような特徴を持った人です。
猫に愛される人はこんな人
- トイレ掃除を怠らない人
- 健康管理をしてくれる人
- 猫の習性や本能的な行動を理解している人
- 猫語が分かる人
- 遊んでくれる人
- 愛情をかけて大切にしてくれる人
- 体調不良にいち早く気づいてくれる人
- 苦手な香りをまとっていない人
猫は天敵から身を隠し、居場所を悟られないようにと常に「におい」を気にしています。排泄物も猫の居場所を特定するための手がかりになってしまいます。よって、排泄物に砂をかけるのはは本能的な行動になります。猫はにおいを気にするという習性上、特定の場所で排泄する特徴を持っています。猫が比較的トイレを覚えやすいのは理にかなった行動なのです。
人間と暮らす場合、砂をかけた排泄物を撤去するのは人間に任された重要な任務です。これを怠っていまうと、その場所で排泄することができなくなってしまいます。それが粗相の原因や、我慢からくる泌尿器系の病気の原因に繋がるのです。日頃からこまめに掃除をしてくれる飼い主さんは、猫にとっては心強い存在です。
愛情と甘やかしは異なる
また、愛猫に合わせた栄養価のある食事を用意して、甘やかしすぎない飼い主さんも頼りになる存在です。愛情は先ほど紹介したように、言葉や行動によって示すものです。過剰におやつを食べさせることで得る信頼は、ある意味偽物です。猫が心から求める愛情は、元気に過ごせることです。そして猫語を学ぶ姿勢を示し、猫の習性や本能的な行動について理解することで、猫も飼い主さんを心から信頼してくれるようになります。
信頼関係築かれていれば、弱い部分も見せやすくなるのです。猫は単独で逞しく生き抜いてきたことから、少々の不調は隠してしまう傾向にあります。とても忍耐強いのです。これは警戒する相手ではないと理解していても発揮されてしまう本能です。だからこそ、できるだけ弱い姿を見せやすい環境を整え、こちらもよく観察することが重要なのです。
飼い主さんを母親のように思っている
幼い頃から人間と暮らしている猫にとって飼い主さんは、母親のような存在です。また、本来の猫らしい生活とは異なり、完全に独立する必要がありません。よって、体は大きく成長しても心は子猫のままであることがほとんどです。
可能な範囲で要求に応え、愛情を注いで育てるようにしましょう。猫に愛される人は、優しくて頼りになり、猫が心から望んでいることを察することができる人なのです。
まとめ
今日のねこちゃんより:ミモ / ♂ / 1歳 / 茶白トラ / 4.8kg
猫は人間に例えるなら、物静かで無口な人をイメージするでしょう。でも、打ち解ければ会話が弾むタイプです。愛猫との会話を弾ませるためには、猫語について理解することがはじめの一歩になるでしょう。
愛情表現も、不器用に見えてしまうのは猫語をよく知らぬが故の結果なのかもしれません。猫は飼い主さんに愛を求め、愛を伝えてくれています。そのサインは分かりにくいものですが、よく観察し、耳を傾け、寄り添ってあげましょう。
我々人間が安心できる環境を整えることで、打ち解け合い、楽しいお喋りができるようになるでしょう。