肥大型心筋症(HCM)は見つかりにくい
HCMの一般的な症状
HCMは、人間でも見つかっている心筋症の一種です。心臓の筋肉が厚くなり、血液を送り出す心室が小さくなってしまいます。その結果、今まで通りの運動ができなくなったり、ぜえぜえと喘いだりといった症状が出てきます。
また、心疾患からできた血栓が血管に詰まり、痛みと共に足を引きずったり、脳梗塞を起こして気が付かれることもあります。(この場合は昼夜を問わず緊急受診してください)
好発品種としてメインクーンが有名ですが、ペルシャ、アメショでも多いとされており、また、ミックスちゃん(雑種)であっても普通に見られる病気です。
猫のHCMを早期発見する新たな方法
いままでは、早期発見は定期健診で心雑音がして偶然見つかったり、心不全兆候が現れて初めて病気が発覚することが多かったです。。
しかし最近、スクリーニングとして血液検査で診断の助けとなる検査方法が出てきたようです。
その検査とは、心臓の機能にかかわるタンパク質、【心筋トロポニンI】と言われる物質を測定することです。
心筋トロポニンIは高感度かつ、特異的に、他の点で健康な猫(基準値0.06ng/mL)からHCMを診断するスクリーニングテストとして利用することが可能であろう。しかし、確定診断には心エコーが必要である。
出典:Cardiac troponin I can be used as a sensitive and specific screening test for the diagnosis of HCM in otherwise healthy cats (cutoff, >0.06 ng/mL). However, echocardiography is needed to confirm the diagnosis.
(Journal of veterinary internal medicine2019May01Vol. 33issue(3))
HCMの早期発見でそなえられること
気になる品種、症状の子は早めに検査
早期に発見し、病態を正確に把握することでACE阻害剤やARBと言われる薬、血栓を抑えたり不整脈のケアなど的確なお薬を使い始めることができます。
また、日常でも体重を適正に保ったり、ストレスをさけ、心臓に負担の少ない生活にすることができます。これは、猫の生活の質をあげ、健康な時間をのばしてあげることにもつながります。
心臓のバイオマーカー(血液検査)は近年、スクリーニング検査で用いられるようになってきました。一般の動物病院でも外注検査で心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、心筋トロポニン(cTn)、NT-proBNPなどを測定することができ、特にNT-proBNPは簡易検査キットが販売されているので院内で即座に結果がわかります。
しかし、あくまでスクリーニングを目的とした検査なのでそれ単独で診断することは危険であり、確定診断には心エコー検査が必要となります。ですので精密な検査を行うにあたってのきっかけとなればバイオマーカーの意義は大きいでしょう。
また、バイオマーカーは他の様々な要因で変動し、腎不全や甲状腺機能亢進症などがある場合は特に影響を及ぼすので検査結果の解釈には注意が必要です。