猫ひっかき病の症状、感染経路、治療の方法や予防法まで

猫ひっかき病の症状、感染経路、治療の方法や予防法まで

猫ひっかき病は、猫から人にうつる感染症の代表的なものとしてあげられます。猫ひっかき病は名前の通りに、猫にひっかかれたり咬まれたことでうつる感染症です。主にリンパの腫脹が起こり、場合によっては意識障害をもたらすこともあります。特に若い年齢の発症率が高い傾向にあり、日本のみならず世界中でも発症している感染症でもあります。この猫ひっかき病は猫を飼っている飼い主さんに必ず知ってもらいたい感染症でもあるため、具体的にどのようにして猫ひっかき病に感染するのか、猫ひっかき病の症状や感染を防ぐ予防法も含めてお話ししたいと思います。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

猫ひっかき病は人獣共通感染症

威嚇している猫の顔アップ

猫ひっかき病は、名前の通りに猫にひっかかれたり、咬まれたりすることで人に感染する人獣共通感染症(ズーノーシス)です。

猫ひっかき病の原因である、バルトネラ菌を保有しているノミに吸血し感染された猫によって人にうつります。

猫ひっかき病の原因であるバルトネラ菌は、猫にとっては常在菌なため感染しても無症状ですが、人に感染すると主にリンパ節の腫れが起こり、痛みを引き起こします。

そのため、ノミが発生する夏〜秋、初冬にかけて猫ひっかき病の発症率が増加しています。

猫ひっかき病の症状

女性の手を咬む猫
  • 腕や脇の下などのリンパ節が腫れる
  • 発熱
  • 疼痛
  • ケイレン発作や意識障害により脳炎の併発
  • 発疹
  • 食欲低下
  • 寒気
  • 関節痛
  • 結膜炎や視神経網膜炎、ぶどう膜炎など

猫ひっかき病は、猫にひっかかれたり、咬まれたりしてから数日〜約2・3週間の潜伏期間後にリンパ節が腫れて痛みを伴います。

腫れの部位は猫にひっかかれたり、咬まれたりしたところによって異なりますが、腕や脇の下、首、足の付け根などが多くみられます。大きく腫れあがることがあり、押すと激しい痛みに襲われます。

猫ひっかき病は、リンパ節の腫れから約1か月後に突然、ケイレン発作を起こしたり、意識障害により脳炎を併発したりすることがあります。

また発熱やそれに伴い、食欲低下や元気喪失、寒気を感じます。ひどい場合は発疹が出てきたり、関節痛も起こったりすることがあります。

猫ひっかき病により、耳前リンパ節が腫れることが原因で結膜炎や視神経網膜炎、ぶどう膜炎などの眼の合併症を起こすことがあります。眼の炎症によっては、視力低下など大きなダメージをあたえてしまいます。

猫ひっかき病は軽症であれば自然治癒することが多いですが、元々HIV(ヒト免疫不全ウイルス感染症)などの免疫系疾患を抱えている人や子供、高齢者など免疫力が低い人は症状が悪化しやすく、死亡例も報告されています。

猫ひっかき病の感染経路

こちらに向かって歩いてくる野良猫

バルトネラ菌に感染している猫による咬傷やひっかき傷

猫ひっかき病は、バルトネラ菌を保有したノミに吸血された猫にひっかかれたり、咬まれたりしたことにより、傷口から人に感染します。

日本でこの猫ひっかき病の原因であるバルトネラ菌を持っている猫は、全体の約9〜15%といわれており、特に外に出る機会がある猫、野良猫、年齢が若い猫、温暖な気候に住んでいる猫は感染率が高いといわれているため、猫との接触により猫ひっかき病になりやすいので注意が必要です。

バルトネラ菌を保有しているノミによる刺咬

猫にひっかかれたり、咬まれたりしたことで感染する以外に、直接バルトネラ菌を保有しているノミに刺されたことで人にうつり、猫ひっかき病になることがあります。

そのため猫を飼っていなくても猫ひっかき病になる可能性はゼロではありません。

猫ひっかき病なのかどうか確定診断する際には血液を採取し、血清バルトネラ抗体価を調べる血清生化学検査を行います。また、超音波検査などによる画像診断でリンパ節の腫脹を確認することができます。

猫ひっかき病に感染していた場合、血液検査にて炎症反応を示す白血球やCRTが上昇していたり、AST、ALT、LDHなどの数値も高くなったりします。

猫ひっかき病の治療法

病院のカルテと注射器と聴診器

軽症の場合は対症療法

成人や免疫疾患を抱えていない場合は、猫ひっかき病になったとしても比較的症状が軽症で済み、自然と治ることが多いため、鎮痛薬や解熱剤、抗生剤の投薬などの対症療法を行います。

傷口を綺麗に洗い流し、消毒する

猫ひっかき病はほとんどの場合が自然治癒で治るため、対症療法とともに傷口を水でしっかり洗い流し、アルコールなどで消毒を行います。

抗菌薬の投薬

免疫疾患を抱えていたり糖尿病、肝硬変など基礎疾患があったりする場合や、小さい子供は猫ひっかき病を発症した場合、重症化になりやすいです。

そのため、猫ひっかき病に対する対症療法を行っても症状が長引いている場合は、抗菌薬の投薬を行います。また猫ひっかき病の重症患者は、病院の集中治療室での治療・入院する必要があります。

猫ひっかき病の予防法

キャットタワーの上でくつろぐ三毛猫

完全室内飼いにする

猫ひっかき病は、主に原因であるバルトネラ菌を持っている猫にひっかかれたり、咬まれたりすることで人にうつります。

そのため猫がバルトネラ菌に感染していなければ、もし咬まれたりしても大きく腫れあがることはありません。猫ひっかき病はノミの媒介によって感染するため、猫を完全室内飼いにし、ノミに感染しないようにします。

定期的にノミの駆除薬を投与する

猫ひっかき病の予防のため、猫を完全室内飼いにしたとしても人の衣服に猫ひっかき病の原因であるノミが付着し、室内に持ち込んでしまうことがあります。

住んでいる地域にもよりますが、ノミは13度以上あれば生存・増殖することができます。寒い冬の時期でも暖房をつけるため、ノミにとっては好都合の良い環境でもあるのです。

特に年中温暖な地域では増殖しやすいため、猫にノミの駆除薬を定期的に投与することで感染を防ぎ、人が猫ひっかき病になるリスクを減らすことができます。地域によって投与期間が多少異なるので、動物病院にて確認してください。

過剰なスキンシップを控える

猫の性格や性別などによって多少異なりますが、猫はべったりと過度に触れられるが嫌いな動物です。過剰なスキンシップにより突然咬みついてきたり、猫パンチしたりしてきます。それにより傷口から感染し、猫ひっかき病になるケースが非常に多いです。

なかなか猫の表情だけで気持ちを読み取ることは難しいかもしれませんが、1番分かりやすいのがシッポの動き方です。大きくバタバタと動かしているときはかなりイライラしており、反撃してくる可能性が高いです。

シッポの動き方で猫の気持ちを読み取るのと同時に、猫と触れ合う際は基本的に猫から近づいてきたときに抑え、過剰なスキンシップを控えることも猫にひっかかれたり、咬まれたりする危険性がなくなるため、その結果、猫ひっかき病を防ぐことに繋がります。

また、猫に触れた後は猫ひっかき病以外の予防のためにも、毎回手洗いすることも大切です。

こまめな清掃を心がける

猫ひっかき病はノミの媒介によって人に感染をおこしますが、ノミの成虫は全体のわずか5%ほどにしか過ぎず、残りの95%はノミの虫卵や幼虫などです。そのため成虫を駆除しても、虫卵や幼虫がいる限りは意味がありません。

猫ひっかき病だけではなく、ノミが原因でアレルギー性皮膚炎を引き起こすこともあるため、ノミを完全に駆除するためには虫卵や幼虫に対しても、駆除する必要があるためこまめな掃除が大事です。

特にソファーやカーペット、布団、毛布、カーテンなどはノミが付着しやすく、また猫の寝床やお気に入りのスペースは注意です。

タオルやマット類は虫卵が増殖しやすいため、熱湯消毒をしたり、あるいは新しいのに替えたりするとよいです。

まとめ

ソファーで横になる男の子と子猫

猫から人にうつる人獣共通感染症の中に、猫ひっかき病があげられます。猫ひっかき病とは名前の通りで、猫にひっかかれたり咬まれたりしたことで人にうつる感染症です。猫ひっかき病は、主に腕や脇の下、首などのリンパ節の腫脹が起こり痛みを伴います。

健康な大人であれば軽症で済み、自然治癒で良くなりますが、免疫力が低い人や何らかの基礎疾患を抱えている人は重症化しやすく、高熱が続いたり、突然のケイレン発作や意識障害により脳炎を併発したりすることがあり、死亡例も報告されています。

猫ひっかき病の症状が軽症であれば、対症療法で状態が良好になりますが、ひどい場合は入院する必要があります。

この猫ひっかき病はノミが媒介するバルトネラ菌が原因で発症します。しかし猫にとっては常在菌であるので、猫に感染しても無症状なため気づきにくい欠点があります。

そのため猫ひっかき病の感染リスクをなくすために、猫を完全室内飼いにしたり、怪我防止のためにも過剰なスキンシップを控えたりすることが必要です。

また、猫ひっかき病ウイルスを持っているノミが人の衣服に付着して室内に持ち込んでしまうケースも考えられます。

ノミは13度以上あれば生存・増殖することが可能なため、年中温かい室内はノミにとっては好都合となってしまいます。

ノミ全体の95%ほどが幼虫や虫卵なため、こまめな清掃をすることで撲滅することができます。

猫ひっかき病の原因であるバルトネラ菌に感染したとしても無症状ですが、ノミの感染によりアレルギー性皮膚炎などを起こすことがありますので、猫に対してノミの駆除薬を定期的に投与することで感染を防ぐことができます。

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