猫にひっかかれたり、噛まれたら?2つの人獣共通感染症と予防、対策の方法

猫にひっかかれたり、噛まれたら?2つの人獣共通感染症と予防、対策の方法

猫は可愛いしぐさで私達を癒してくれる存在ですが、猫に噛まれたり、舐められたり、ひっかかれることで、「人獣共通感染症」に感染することがあります。今回は感染した際に出る症状や、その対処法と予防をいくつかご紹介したいと思います。知ることで、むやみに怖がることなく、人と猫たちとの良好な関係が築けたら嬉しいです。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

1.バルトネラ症(猫ひっかき病)

バルトネラ症にかかる原因は、「バルトネラ菌」を持ったノミの吸血やノミの排泄物によって猫に感染します。この菌は猫には常在菌なので症状はでませんが、人が引っ掻かれたりして感染すると人には症状がでてしまいます。ただ軽度の場合、応急処置をしていれば多くの場合、自然に治ることが多いです。

人がバルトネラ感染症にかかった時の症状は?

  • 傷口が赤くなり、腫れてきたり膿を持つ
  • 発疹が出る
  • 発熱し微熱が長く続く
  • 全身の倦怠感
  • 関節痛
  • 吐き気

傷を負った直後には出血したり腫れたりしますが、症状が出るまでには数週間かかることもあります。稀に重症化する場合があり、その時の症状としてはあごの下やわきの下のリンパ節が腫れた数週間後に、痙攣を起こしたり脳症を発症して意識障害を起こすことがあります。

2.パスツレラ感染症

パスツレラ菌は、犬や猫の口腔内に存在している常在菌で、犬は75%、猫は100%保有している菌です。

人がこのパスツレラ症にかかる原因は、引っ掻かれたり噛まれたり、猫にキスをしたり食器を共有した場合です。稀にくしゃみや咳などによる飛沫感染からの場合もあります。猫が感染した場合ほとんど症状は出ませんが、稀に肺炎を起こしたり皮膚病になることがあります。

人がパスツレラ症にかかった時の症状は?

  • 傷が腫れる
  • ぜんそくになる
  • 結核
  • 気管支炎
  • 重篤な肺炎

パスツレラ症にかかると短時間で傷が痛みだし、傷が腫れてきます。この感染症は免疫力が低下した時に症状が現れるため、繰り返し発症することがあります。免疫不全などの基礎疾患があると症状が悪化し、呼吸器疾患、肺血症、髄膜炎、骨髄炎を起こすこともあります。

猫に引っ掻かれた時の対処

猫に引っ掻かれたり、噛まれたとしても慌てず落ち着いて対処することが大事です。

洗浄、消毒

先ずは、流水でしっかり傷口を洗いましょう。その際、出血しているようであれば、止血せず血をできるだけ出して菌を押し出した方がいいでしょう。石けんがあれば、石けんをつけて丁寧に洗います。その後、傷口をアルコールなどの消毒液で消毒します。

重症化しないために

最近の治療方法で、傷口を消毒せずに体液で潤った状態を保ったまま治すというのが主流になってきているようですが、今回の猫の引っ掻かれたり噛まれたりした場合は別の話ですので、きちんと消毒しましょう。

多くの場合、発症することなく応急処置で治る場合がほとんですが、気になるようでしたら病院での検査をおすすめします。

人獣共通感染症を予防するには

ノラ猫をむやみに触らないようにしたり、飼い猫の場合は過度なスキンシップをしないように気を付けることが一番です。

飼い主さんが外からノミや菌を持ち帰ることもあるので、外から帰って来たら手洗い、うがい、着替えを済ませてから愛猫に触れるようにしましょう。愛猫を触ったり、トイレ掃除をした後は必ず手を洗いましょう。

また、居住空間を清潔にするために、空気清浄機の利用や掃除は必要不可欠です。愛猫のノミ駆除やワクチン接種を受けさせましょう。爪が長いと傷を負う事になるので、こまめに爪切りをしておきます。

横たわる猫

私たち自身の健康を保っておくことも大事なことです。免疫力があれば、自然治癒する場合もありますので日頃から健康管理は気を付けましょう。

まとめ

遊ぶ猫

猫は可愛いのでついベッドで一緒に寝たりしがちです。触れていると柔らかく、モフモフした毛が気持ちよく頬ずりしてしまいますよね。

でも、寝ている間に舐められたり、引っ掻かれたり、噛まれたりして傷に気づかないなんてことになると大変です。別々に寝ることが難しい場合は、せめてマスクをして寝ることをおすすめします。

ですが、免疫不全疾患を抱えている方や抗がん剤治療中などの場合は細心の注意が必要です。

バルトネラ症もパスツレラ症も、稀に重篤になる危険性もある怖い感染症です。愛するペットから病気が感染したら悲しいですし、「猫は危険な動物」と世間が理解すると彼らにとっても不幸な結末になりかねません。

猫とずっと幸せに暮らすためにも、私たちが「人獣共通感染症」があること、それについて「知る」ことが大切ではないでしょうか。

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