猫から人間にうつる病気
1.猫ひっかき病
症状
人間が感染した場合、猫に噛まれ、ひっかかれてから数日~約2週間後に傷口が赤く腫れ、膿が出てくることがあります。また、数週間~数ヶ月に渡りリンパ節も腫れて激しい疼痛も伴います。
場合によってはリンパ節の腫れがおきてから1~3週間後に脳症を引き起こすことがあり、体が硬直するケイレン発作や意識障害などの神経症状がおこります。また発熱や食欲不振になることがあり、体全身に発疹が現れ、関節の痛みもおこることがあります。
原因
猫ひっかき病は猫に噛まれたり、ひっかかれることで人間に感染する病気でありズーノーシス(人獣共通感染症)でもあります。病気の原因であるバルトネラ菌を保有したノミに吸血されることにより猫に感染し、その猫に人間が噛まれ、ひっかかれたことによりできた傷口から、バルトネラ菌が侵入し感染をします。
またバルトネラ菌を保有しているノミに、直接人間が刺され吸血されることでも感染し病気を発症します。
治療の方法
人間が猫ひっかき病に感染した場合、症状が軽い場合は人間が元々持っている自然治癒力で自然と症状が改善することがあります。しかしリンパ節の腫れや疼痛など、症状の度合いによっては治療が必要となり、抗菌薬の投与を行います。
2.パスツレラ症
症状
人間がパスツレラ菌に感染した場合、猫に噛まれたり、ひっかかれた後の30分~2日後に傷口がボッコリと腫れて化膿します。また約60%の確率で咳などの呼吸器症状をおこし、特に喘息持ちの人は肺炎を引き起こすことがあります。
元々免疫疾患をもっている人や高齢者、糖尿病患者は重症化しやすく、骨髄炎や敗血症を引き起こし、最悪の場合は死亡する恐れがある病気です。
原因
病気の原因であるパスツレラ菌は犬では約80%、猫は約100%の割合で口腔内に常在しています。そのため、猫に噛まれたり、ひっかかれた傷口から人間はパスツレラ菌に感染します。
猫に噛まれたりひっかかれたりしなくても、猫に接触したことでパスツレラ菌を吸い込み、呼吸器系疾患に感染し気管支炎や肺炎、副鼻腔炎などをおこすことがあります。また、口移しなどのスキンシップでパスツレラ菌が人間にうつることがあります。
治療の方法
人間がパスツレラ菌に感染した場合、主な治療法としてペニシリン系やテトラサイクリン系、クロラムフェニコール系などの抗生物質の投与を行います。
3.皮膚糸状菌症
症状
人間が皮膚糸状菌に感染した場合、腕や頬などの皮膚にリング状の赤い発疹がいくつもでき、痒みを伴います。また、その発疹部分が水泡状になる場合があります。
この皮膚糸状菌症は、猫から人間にうつる病気だけではなく、猫から猫にうつる病気でもあります。猫も皮膚糸状菌に感染すると、顔や耳、四肢の毛が円形状に脱毛をおこし、フケやカサブタも出てきます。
原因
皮膚糸状菌症とは猫カビともいわれている病気で、人間でいうと水虫に当たる存在です。原因としては基本的に真菌に接触することで感染します。
そのため既に皮膚糸状菌症に感染している猫などに接触することで猫や人間にうつる場合があります。特に免疫力が弱い女性や子供、子猫に感染しやすい傾向があります。
治療の方法
皮膚糸状菌症に感染した場合、人間や猫も治療法は共通であり、抗真菌薬の外用薬を塗布し、猫の症状が全身に及んでいる場合は抗真菌薬のシャンプーで薬浴します。
4.回虫症
症状
人間が回虫症に感染した場合、回虫は成虫まで発育することができず幼虫のまま、人間の体内を移動し内臓や目などに侵入し様々な症状がおこります(幼虫移行型)。
内臓移行型
発熱やだるさ、食欲不振などがみられます。肺に侵入した場合は肺炎をおこし、脳に侵入するとテンカン発作など神経症状がおこります。
目移行型
回虫が目に侵入した場合、網膜脈絡膜、ブドウ膜炎、網膜剥離による視力低下や視野の障害などの病気がおこります。
原因
犬回虫症や猫回虫症、犬小回虫症は犬や猫の消化管に回虫という寄生虫が寄生しておこる病気で人間にもうつります。
犬に寄生する回虫は犬回虫と犬小回虫で、猫の場合は猫回虫と猫小回虫です。回虫の種類にもよりますが、寄生している回虫が犬小回虫の場合は人間にうつるだけではなく、猫から犬にうつる病気でもあるのです。
人間が回虫に感染する原因としては回虫症に感染している犬や猫の排泄物(便)から排出された虫卵が手に付着し、そのままの手で食べ物を掴み、口に運ぶことなどによって体内に侵入し感染します。
また既に、回虫症に汚染されている土壌に接触したあと、十分な手洗いをせず、食べ物と一緒に虫卵が体内に侵入することもあります。
治療の方法
人間の体内に侵入した幼虫に対して、有効な治療法はありません。ですが症状の重症化や眼トキソカラ症の場合は、駆虫薬の投与やステロイド治療、レーザーによる治療を行うことがあります。
人間から猫にうつる病気
結核
ズーノーシス(人獣共通感染症)は、猫から人間にうつる病気というイメージがもたれやすいですが、全ての病気がそうではありません。人間が発症する結核は猫にうつる感染症でもあるのです。
結核という病気は、マイコバクテリウム属の結核菌が、猫にうつることで発症する病気です。上記の通りに、結核は人間だけではなく猫や犬などにも感染するズーノーシスなのです。
猫が結核に感染する原因
猫が結核に感染する主な感染ルートは、結核を発症している動物や人間からのクシャミなどによる空気感染や、結核菌がついている被毛や皮膚を舐め、結核菌をもっている動物を捕食するなどの経口感染があげられます。
猫の結核の症状
猫が結核に感染した場合、通常であれば無症状が多く、免疫力が低下している場合は首元などのリンパ節が腫れる、大量の流涎、発熱、元気・食欲低下、体重減少など、様々な症状をおこします。
猫カゼと似たような症状をおこすので、猫が結核に感染していることに気づくことが遅れてしまうケースが多いといいます。
猫が結核になった時の治療法
この病気の治療法は、基本的に現れた症状に合わせて行う対症療法となります。
猫が結核にならないため、飼い主が結核に感染しないように気をつけなければいけませんが、それ以外に普段の生活で、猫の飼育環境を完全室内飼いにすることで、外部からの動物の接触がなくなるので感染リスクを防げることができます。また猫に接種する結核のワクチンはありませんが、その他の病気にかかり免疫力が低下しないようにするためにも、毎年混合ワクチン接種することも大事です。
猫から病気を貰わない為に出来る事
手を綺麗に洗う
猫の排泄物の処理した後は石鹸で綺麗に手を洗い流すことです。また猫にスキンシップした後も手を洗うと効果的です。日頃から猫にキスするなどの過度な接触は病気に感染する可能性があるため控えることです。
猫を完全室内飼育にする
猫の飼育環境を完全室内飼いにすることです。外に出てしまうと、何かしらの病気をもっている野良猫や動物などと接触する恐れがあります。
またトキソプラズマ症などはネズミなどの小動物を捕食することで、猫に感染し人間にもうつるため室内で飼育しましょう。去勢(避妊)していない猫は、発情や性ホルモンにより脱走しやすいため、去勢(避妊)手術を行いましょう。
定期的な部屋の掃除・猫に予防薬の投与
住んでいる地域にもよりますが、人間や猫に感染する病気の中で、ノミやダニなどの寄生虫が原因で発症する病気があります。猫を完全室内飼いにしたとしても、人間が外からノミやダニが衣服に付着したままの状態で家に持ち帰ることで、猫に感染することがあります。
地球温暖化の影響もありますが、室内は常に温かいため寄生虫にとっては過ごしやすく、増殖しやすい環境であるため、冬の季節でも油断はできません。そのため猫に感染させないためにも衣服を着替えて洗濯し、定期的に部屋の掃除行うことが大事です。
また猫に対しては、ノミやダニの感染を防ぐ予防薬を投与することで感染リスクを減らすことができます。
新しく猫を迎え入れる際は感染していないか検査する
新しく猫を迎え入れる場合は、その猫が何らかの病気をもっていないかチェックする必要があります。野良猫を拾ってきたり、保護団体から譲渡された猫は、高い確率で回虫症や疥癬、皮膚糸状菌など、様々な病気にかかっていることがあります。
そのため感染の有無が分かるまでは、猫同士の接触を避け、隔離させる、トイレや食器なども別々にすると良いです。また、飼い主は猫に触れた後や、トイレ掃除後などは、こまめに手を洗うことです。
定期的に猫の爪を切る
猫の爪は鋭く尖って伸びるため、こまめに切っておくことで、万が一、猫にひっかかれても軽症で済むことができます。
猫が使った食器を洗い、消毒する
猫が使う食器と人間が使う食器は別々にすることが大事ですが、もし猫に使った場合は洗剤で綺麗に洗い流します。また定期的にキッチン用の塩素系漂白剤で消毒するとよいです。
まとめ
猫から人間にうつる病気は、猫ひっかき病やパスツレラ感染症、回虫症、皮膚糸状菌症などたくさんあります。猫に噛まれひっかかれたことで感染し、病気を発症している猫に接触などにより人間にうつります。
症状が軽症で済むこともありますが、元々持病をもっている場合は重症化する恐れがあります。またズーノーシス(人獣共通感染症)は、猫から人間にうつる病気だけではなく、人間から猫へ感染し、犬など他の動物に感染する病気でもあります。
そのため、猫や人間をそれぞれ感染させないためにも、日頃からこまめに部屋の掃除を行い、手を綺麗に洗う習慣をつける、人間と猫の食器を共有化しないことです。
また猫に対しても完全室内飼いにし、定期的な爪切りやブラッシングをする、過度なスキンシップを避けることなどで感染リスクを減らすことができます。