野良猫から人にうつる8つの感染症

野良猫から人にうつる8つの感染症

野良猫のお世話をしている方は注意するべき人畜共通感染症について知っておくことが大切ですね。もちろん、感染症に関することは野良猫のお世話をしている方だけでなく、猫を飼っている飼い主さん達にも言えることです。今回は、野良猫から人にうつる8つの感染症について詳しくご紹介します。是非ご覧くださいね。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

野良猫から人にうつる感染症

上をみる猫

野良猫に限らず、猫から人にうつる病気は細菌などによるウイルス感染症がほとんどですが、中にはトキソプラズマ感染症のような原虫が感染した野良猫の排泄物などを通して人にうつってしまうこともあります。まずは、ここで野良猫から人にうつる感染症について詳しく見ていきましょう。

1.サルモネラ症

感染症を引き起こすもののなかで食中毒で知られるサルモネラ菌は、保菌しているネズミ、ハエ、ゴキブリ、猫や犬など人をはじめ多くの哺乳類などの腸内や川や下水などに生息している細菌です。

感染症に対してなにより注意が必要なのは卵や生肉からの感染によるものだけでなく、大切なペットや外にいる野良猫からの感染です。飼い主さんがペットや野良猫などと接触をすることでサルモネラ菌が付着して感染した結果、サルモネラ感染症となることもあるようです。

また、子猫の場合の感染では嘔吐や下痢をしますが、野良猫の成猫は感染しても症状がはっきりと現れないのが特徴と言われています。

症状

人間の場合では、サルモネラ菌の感染により感染症状の食中毒症状である急性胃腸炎を引き起こします。健康な成人であれば感染症状はひどく現れませんが、免疫力の低い幼児や高齢者の場合は感染症の症状がひどく現れる場合があります。

2.猫ひっかき病(バルトネラ症)

猫ひっかき病(バルトネラ症)は、原因となるバルトネラ菌を持ったノミの吸血によってバルトネラ菌が野良猫などや犬に感染し、人間が野良猫などに咬まれたり、皮膚を引っかかれたりすることで感染し感染症状が現れる病気です。
またバルトネラ菌は、野良猫や飼い猫、犬では常在菌のため猫や犬には感染症状がありません。

症状

人間の場合では、感染症状として野良猫などに咬まれたり、引っかかれたりした傷口の化膿や発熱、リンパ節の腫脹などを引き起こします。また、猫ひっかき病は7月から12月にかけてノミが繁殖する時期の感染が多いといいます。

3.Q熱

犬や猫、牛や羊などといった感染動物の尿やフンなどに含まれる菌に汚染された粉塵や空気を吸い込むことで人間に感染し感染症状を表します。しかし、野良猫を含め猫や犬には感染症状がないことが多いとされています。

1935年、オーストラリアで初めて原因不明の熱性疾患として報告された人畜共通感染症Q熱は「Query fever」(不明熱)に病名が由来しています。

症状

人間の場合は、インフルエンザの感染症状に似た「発熱、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感、呼吸器症状」が現れ症状によっては「肺炎や肝炎、まれに皮疹」が確認されています。しかし、Q熱は特徴的な症状がないため他の感染症の病気との区別が困難のようです。

4.パスツレラ症

パスツレラ症の原因となるパスツレラ属菌は、健康な猫や犬の口の中や爪に存在する常在菌とされており、猫の口の中には約100%、犬の口の中では約75%という高確率で常在しています。また、パスツレラ属菌は野良猫や飼い猫や犬では常在菌のため猫や犬には感染症状がありません。

症状

人の場合では、犬や野良猫などに咬まれたり、皮膚を引っかかれたりすることで人間に感染する病気とされていたため、その感染症状は皮膚化膿症が主であると考えられていました。

しかし、近年では鼻から肺までの「呼吸器系へのパスツレラ症感染」が約60%を占めています。この次に「皮膚化膿症」や骨髄炎、外耳炎などへの感染や全身重症感染症があり、最悪の場合では死亡に至った例も確認されているようです。

5.カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症

カプノサイトファーガ・カニモルサス感染症は、猫と犬の口の中に常在している3種の常在菌を原因とする感染症です。この感染症は、野良猫などに引っかかれたり咬まれたりすることで人に感染する病気です。しかし感染への報告が少ないため、この病気は免疫力の低下がある場合重症化すると言われています。

症状

人間の場合では、「発熱や腹痛、吐き気」などの感染症状が現れます。これが重症化すると「敗血症や脳髄炎」になることもあります。免疫力の低い子供や高齢の方、病気治療中の方の場合は十分に気をつけるようにしてください。

6.皮膚糸状菌症(猫カビ)

皮膚糸状菌症は、人間に例えると水虫のようなものとされており「猫カビ」と呼ばれることもあります。皮膚糸状菌というカビ(真菌)に感染することで、感染症状として痒みや円形の脱毛、フケが増える、皮膚の赤み(ブツブツ)や表皮が剥がれることもあります。

症状

人間の場合も、その症状は同様で痒みや水疱などができます。

7.トキソプラズマ感染症

トキソプラズマ症に感染している野良猫などが排泄したフンが土壌などを経由して人間の体内に入ることでトキソプラズマ感染症に感染します。また、子猫が感染すると「肺炎や脳炎」などの感染症状が現れることがあります。

症状

人間の場合は、妊婦が感染すると流産や胎児の先天性障害の原因となるとされており、感染した野良猫などのフンからの土壌汚染だけでなく豚の生肉からも感染することがあるので注意しましょう。

8.コリネバクテリウム・ウルセランス感染症

コリネバクテリウム・ウルセランス感染症の原因となる「ウルセランス菌」に感染し、この病気を発症すると犬や猫が、咳やくしゃみ、鼻水などの風邪のような感染症状を見せます。また、皮膚炎、皮膚や粘膜潰瘍などの感染症状が確認されることもあるようです。

ウルセランス菌によって引き起こされる「コリネバクテリウム・ウルセランス感染症」は、人間のみならず犬や野良猫、牛などの様々な動物が発症していると国内外で確認されていましたが、2018年1月に国内でも、日常的に野良猫に餌を与えていた福岡県の60代女性がコリネバクテリウム・ウルセランス感染症に感染し死亡したことが報道されています。

症状

人間の場合は、主に喉の痛みや咳などの風邪に似た呼吸器系の感染症状が現れます。症状が悪化して重篤な場合には「呼吸困難」などを引き起こし死に至る可能性もある感染症です。

猫のマイコプラズマは人間に感染しない

見上げる猫

可能性として絶対とは言い切れませんが、猫のマイコプラズマは基本的に、人間には感染しないと言われています。しかし、マイコプラズマは同じ生き物に感染すると言われており、人から人へ、猫から猫へと感染する傾向があります。

野良猫からの感染症を防ぐための方法

笑顔のロシアンブルー

野良猫のお世話をしている方が注意するべき人畜共通感染症は多くあることが分かりました。中には土壌汚染や空気感染するものもあるので、できる限りの感染症予防は重要と言えます。

ここで、野良猫からの感染症を防ぐための方法についてご紹介していきます。

1.免疫力を高める

元気な猫

できる限り野良猫のお世話をする人も猫も健康状態を良くしておくことや日頃の健康チェックは重要ですね。また、野良猫のお世話をする人は常に体調を整えて免疫力を高めておくことが野良猫からの感染症予防にもなるほか、お世話をしている野良猫は定期的な検査をして病気がないか知ることができれば人畜共通感染症予防に繋がります。

2.濃厚な接触は避ける

人を舐める猫

野良猫や飼い猫に関わらず接触は適度な距離を持つことが大切です。猫から人へ感染症がうつる多くの理由が、野良猫や飼い猫に口の周りを舐めさせたことや、野良猫や飼い猫に傷口を舐められたなどがあります。感染症の中には見た目に現れにくいものが多くあるため、飼い主の方は野良猫や飼い猫に関わらず排泄物を触ったらしっかりと手を洗い、飼い猫であってもキスなどの濃厚な接触を避けることが感染症を防ぐための方法と言えます。

3.感染症を防ぐためには室内飼いがおすすめ

窓の外をみる猫

野良猫のお世話をしている方が注意するべき人畜共通感染症ですが、一番は野良猫を室内飼いにすることが感染症予防におすすめと言えますね。定期的な検査をしていても野良猫であれば猫同士のケンカやネズミなどを狩ることで人畜共通感染症に感染する可能性があります。

お世話をする人が知らない内に、野良猫が人畜共通感染症に感染している可能性がないとは言い切れません。もちろん、野良猫を保護して飼うことは簡単ではありませんが、野良猫でも最初にしっかりと検査をして室内飼いの環境に慣らして行き、できる限り野良猫を室内で飼育した方が感染症予防にもなり人間も猫も安心して暮らすことができますね。

野良猫の感染症の注意点について

たくさんの猫

野良猫の感染症の注意点として、人畜共通感染症の中には分からない感染症もあるということです。このため、野良猫に接触する時や外飼いの猫との触れ合いは適度な距離を保ち、濃厚な接触は控えることや猫達の排泄物を触ったらしっかりと手を洗うように注意しましょう。

まとめ

草の上の猫

いかがでしたか?人畜共通感染症は意外と多く、普段耳にすることがない病気もたくさんありましたね。野良猫を見かける機会が多い人や野良猫のお世話をしているという方は、人畜共通感染症予防のためにも、野良猫に接触した際には、特に手洗いやうがいなど小まめに行い、適度な距離を保って接することが大切です。野良猫でも飼い猫でも、可愛い猫達をついつい可愛がり過ぎてしまわないように、飼い主さんも猫も健康的で良い距離感をもって生活することが一番ですね。

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