猫から人にうつる病気7つ 原因と対策

猫から人にうつる病気7つ 原因と対策

猫から人にうつる病気のことを、人獣共通感染症=ズーノーシスと言い、人から猫にもうつります。猫からの感染症によって人にも症状が出ることがあるということです。猫からの感染症について、どのような病気があるのか、原因はどんなものか、更に対策についてもご紹介します。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

猫からの感染症にはどのような病気があるか

人の手を噛む猫

人獣共通感染症とは、脊椎動物と人との両方に感染する、又は寄生する病原体により起こる感染症のことを言います。猫から人にうつるものもありますし、犬から人への感染症もあります。

人にうつる、猫からの感染症の主なものは次のような病気です。原因と症状についてもご紹介します。

猫ひっかき病(バルトネラ症)

猫ひっかき病は猫からの感染症で、人が猫に噛まれたり引っかかれたりしたことが原因で感染する病気です。バルトネラ菌を持つノミに寄生されて感染した猫が、他の猫や人間を噛んだり引っ掻いたりすることで感染します。

猫にとってバルトネラ菌は口中にある常在菌のため、感染しても無症状のことが多いのですが、人間が感染すると、傷口が化膿したり、リンパ節が炎症を起こして腫れたりして、発熱や倦怠感もあります。

猫からの感染症では重症化すると、髄膜炎や脳症による意識障害なども見られ、猫にひっかかれたことが原因で人が死亡したとされる事例も出てきています。

猫からの感染症が原因で人が死亡することもあるという事がわかったため、人獣共通感染症についてのより深い理解と対策が求められるようになってきました。

パスツレラ症

パスツレラ症は、パスツレラ菌に感染することによる病気です。ほとんどの成猫の口中には、パスツレラ菌が常在しているため、猫からの感染症としては最も気をつけなければいけない感染症と言えるでしょう。

パスツレラ症は、人が猫に噛まれたり引っかかれたりして傷ができることが原因で感染します。人の呼吸器症状として発熱や倦怠感などの風邪のようなものから、肺炎などの重い症状が出ることもあります。皮膚症状としては、猫に噛まれたり引っかかれたりした傷が赤くなり、腫れて、強い痛みを伴います。

免疫が落ちていたり、基礎疾患があったりする人だと、猫からの感染症では重症化して敗血症や骨髄炎になることもあります。

サルモネラ症

サルモネラ症は、サルモネラ菌によって様々な症状が引き起こされる感染症のことで、細菌性の食中毒を起こす代表的な疾患です。サルモネラ菌は、汚染された土壌や水、いろいろな食物など自然界に生息し、猫はもちろん爬虫類の腸内にも生息しています。

猫が食べたネズミを媒介として感染することも多いとされています。猫からの感染症としては、サルモネラ菌に感染した猫の排泄物に人が触れることによって、口から体内に侵入することで感染します。

症状としては、嘔吐や下痢、腹痛、発熱などが見られ、猫からの感染症では重症化すると急性胃腸炎や敗血症などを引き起こします。

トキソプラズマ感染症

トキソプラズマは、トキソプラズマという寄生虫に感染する病気です。
猫がトキソプラズマに感染した鳥やネズミの肉を食べたり、既に感染した猫の便についたトキソプラズマの卵が、グルーミングなどを通して口に入ったりすることで感染します。

猫からの感染症としては、人が猫の便を片付けたり、猫トイレの掃除をしたりした時にトキソプラズマの卵が手などに付着し、それが口に入ることで感染します。

ただし、人が感染しても無症状な場合も多く、症状が出たとしてもリンパ節が腫れる程度でその後は回復しますし、既にトキソプラズマの抗体を持っている成人も多くいます。

しかし妊娠中の人が、初めてこのトキソプラズマに感染すると、胎児に障害が引き起こされたり、流産や死産の原因になったりすることがあります。

皮膚糸状菌症(猫カビ)

皮膚糸状菌症は白癬とも呼ばれ、皮膚糸状菌という真菌=カビに感染したことが原因で、皮膚かさぶたができたり脱毛したりする病気です。皮膚糸状菌は接触感染するので、猫からの感染症としては、皮膚糸状菌に感染した猫に触ることでうつることがあります。

健康な人が真菌に接触しても、免疫力によって守られていますが、皮膚糸状菌症の猫と頻繁に接触し手などを洗わないでいると炎症を起こすことがあり、感染してしまうこともあります。人に出る症状では、手や頬、腕の内側などに赤い発疹が出たり、水疱ができたりします。

疥癬症

疥癬とは、寄生虫の一種のヒゼンダニが寄生する事で起こる皮膚病です。
猫が疥癬になると、まず顔や耳に発疹ができて、かさぶたやフケが出てきます。時間が経つと、お腹や足などにも症状が広がり、強いかゆみがあるため体をよく掻くようになります。

猫からの感染症として、猫ヒゼンダニに寄生された猫を抱っこしたり撫でたりすることで、人間にもダニがうつることがあります。人がヒゼンダニに寄生されると、腕や足などに赤い発疹ができて、強いかゆみを感じます。

ただし、ヒゼンダニは猫の体でしか繁殖できないので、人間には一時的に寄生したとしても増えることはなく、症状も次第におさまるとされています。

回虫症(トキソカラ症)

回虫症は、猫の体内に寄生する回虫によって引き起こされる病気です。
猫回虫はよく見られる病気で、成猫が感染しても無症状のことがありますが、子猫が感染すると、下痢や軟便、繰り返し嘔吐するなどの重い症状が出ることもあります。

猫から人への感染症としては、回虫の卵は猫の口や肛門まわり、表皮や被毛などについていますので、猫に触った手を洗わずに物を食べたり、猫とキスをしたり、又は一緒に密着して眠るだけでも口に入って感染することがあります。

猫回虫が人に寄生しても、成虫にまで発育することはできないとされています。しかし、幼虫のままで人の体内を動いて内臓や眼などに侵入し、幼虫移行症といういろいろな障害を引き起こすことがあります。

猫からの感染症を予防する対策

猫に頰をつけている人

ネコノミの駆除をする

猫からの感染症は、ノミを媒介として感染する場合もあるため、ノミの駆除をすることが予防につながります。猫の首や尻尾の付け根につける、液体タイプのノミ取り剤があります。動物病院で処方してもらえますし、ネットでも購入することができます。

部屋の掃除をこまめにする

部屋の掃除をしてノミやダニの発生や繁殖を防ぐことで、猫からの感染症を防ぐことができます。じゅうたんやカーペットなどは毎日念入りに掃除機をかけ、抜け毛を取り除いて菌の発生を防ぎ、噴霧式の殺虫剤を使ってノミやダニの繁殖を防ぐことができます。

猫との過剰な接触をしない

猫からの感染症予防には、猫にキスをしたり、自分の食べた箸などで猫に餌を与えたり、猫に何度も頬ずりをしたりなどの過剰な接触はしないようにしましょう。また、猫とのスキンシップの後や、食事の前には必ずは手洗いを念入りにするようにしてください。

猫トイレの掃除には手袋をつけ、猫の排泄物などに触れないように注意し、触れてしまった場合にはしっかりと洗うようにしてください。

猫に噛まれたら病院へ行く

猫に噛まれたり引っかかれたりした時には、猫からの感染症を発症させないために、早めに病院で手当てをしてもらいましょう。怪我をした直後は大したことがないように見えても、化膿して腫れたり、発熱して体調が悪くなったりすることがあります。

猫に引っかかれた、ということを医者に伝えて適切な処置をしてもらいましょう。
特に、野良猫や外に出ている猫に噛まれたり引っかかれたりした時には、必ず病院で診てもらい、猫からの感染症を防ぐようにしてください。

まとめ

寝ている赤ちゃんと子猫

猫からの感染症を防ぐには、飼い主さんが正しい知識を持って行動することが大切です。
猫は完全室内飼いが主流となり、人と猫とのふれあいが増えたことによって、猫からの感染症の予防が重要だと考えられるようになってきました。

猫とスキンシップをとることは良いことですが、人獣共通感染症というものがあること、予防する必要があることは知っておくべきです。

人獣共通感染症について知っており、感染しないように予防し注意を払うことは、飼い主さんの責務です。猫からの感染症についてよく理解しておくことは、猫と人との健康を保ち、猫と人とのより良い関係を築くために、必要なことだと言えるでしょう。

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