白血病の猫でも寿命まで生きられる
猫白血病ウイルス感染症(FeLV)を患っている場合でも、寿命を全うできる可能性があります。猫白血病ウイルス感染症とは、白血病ウイルスに感染することによって引き起こされます。
と言っても、このウイルスに「感染」したからと言って必ず「発症」するわけではありません。咬み傷などから白血病ウイルスが感染した場合、6週齢以下の子猫では80%以上が持続感染状態になりますが、1歳以上の場合は15%の猫だけが持続感染状態となったという報告があります。感染する年齢によって持続感染が起こるかどうかは変わります。
また、持続感染となった場合、つまり「白血病キャリア」であっても発症しないまま寿命を全うすることもあり、発症したとしても症状が落ち着いていれば、対症治療によって延命することも十分に可能と言えます。
猫白血病ウイルス感染症は、難治性の病気であることには間違いありません。ただ、早期発見と適切な治療でウイルスの活動を抑えたり、発症させないようにコントロールすることもできる病気です。
愛猫が猫白血病ウイルスに感染してしまったからと言って、すぐに亡くなってしまうとは限りません。まず獣医師の話をしっかり聞きましょう。
白血病が猫に発症した時の寿命
上記では、猫が猫白血病ウイルスに「感染」したとしても「発症」しなければ、寿命を全うできる可能性があるとお話しました。では猫白血病ウイルス感染症を「発症」してしまった場合の寿命は、どのくらいになるのでしょうか。
白血病を発症した猫の寿命
猫白血病ウイルスに感染した猫のうち、約30%の猫が猫白血病ウイルス感染症を発症するとされています。猫白血病ウイルス感染症を発症した時の猫の寿命は、約2年~5年とされていますが、病気の進行具合やその他の症状によって異なる場合もあり、一概には言えません。
また、猫白血病ウイルス感染症を発症した場合の致死率は、年齢によって大きく異なることが分かっています。
生まれたての子猫が発症した場合の致死率はほぼ100%とされているのに対して、離乳期になると50%、成猫期になると10%とされています。猫白血病ウイルス感染症を一度発症してしまうと完治はなかなか難しく、根気よく治療を行っていくことが重要になります。
猫白血病の治療方法
猫が猫白血病ウイルス感染症を発症した場合、特効薬は存在しません。そのため、猫白血病ウイルス感染症の発症による免疫力の低下が引き起こす様々な症状や疾患に対する対症治療が主となり、輸液などが行われます。
また、猫の白血病ウイルス感染症の治療には、猫のカリシウイルス感染症の治療薬である猫用インターフェロン「インターキャット○R」が抗ウイルス剤として用いられます。インターフェロンとは、ウイルスや腫瘍細胞の増殖を抑制する効果が期待できる薬剤です。
「インターキャット」は、本来カリシウイルス感染症の治療薬であるため、効能外使用とはなりますが、日本国内で認可されている薬剤の中で、現時点で猫白血病ウイルスに効果がある薬剤は他にないため、ごく一般的に使用されます。
感染初期にインターフェロンを投与することによって、ウイルス感染を陰転させることができる場合もあります。(※陰転:感染が認められる場合を陽性と言い、認められない場合を陰性と言います。陽性であったものが、再検査の結果陰性になることを陰転と言います)
このインターフェロンの投与方法やその効果には、個体によって差があります。持続感染の場合は、長期に渡っての投与が必要になることもありますので、獣医師としっかり相談しましょう。
猫白血病の治療費
猫白血病ウイルス感染症の治療費については、症状やその他に併発している病気などによって様々です。主に対症治療のための注射や点滴、インターフェロンや、ステロイドの投与などを含めた1回の診察でかかる費用が、5,000円~10,000円程度であることが多いようです。
通院日数も症状によって異なるため、数日置きの場合もあれば毎日の通院が必要になる場合もあり、上記の金額×通院日数分の治療費が必要になります。集中治療が必要な場合は、上記の費用に入院費5,000円~10,000円程度が別途追加となることが多いようです。
白血病の猫の寿命を延ばす方法
白血病の猫の寿命を延ばすために飼い主さんができることがあります。
①完全室内飼いをする
まずは猫の完全室内飼いの徹底が必要と言えるでしょう。屋外には様々な感染症のリスクがあります。他の猫との接触や、喧嘩などで他の病気を患ってしまう可能性を減らすことが大切です。また、ほかの猫と喧嘩をすることで、白血病ウイルスを感染させてしまうことも避けなければなりません。
白血病キャリアの場合も、既に持続感染、発症している場合も「免疫力」を下げないことが症状を悪化させないための要となります。清潔な室内でウイルスから愛猫を守りましょう。
②予防接種を受けさせる
白血病の猫の寿命を延ばすためには、他の病気を併発させないことが大切です。完全室内飼いであっても、人が持ち帰ることで猫に感染してしまうウイルスも存在します。生活環境などによって必要なワクチンをかかりつけの獣医師と相談し、定期的に接種しましょう。
③ストレスの少ない環境を作る
白血病の猫の寿命を延ばすためには、免疫力を低下させないことが大切です。室内を清潔にすることはもちろん、ストレスを感じさせないような環境づくりをしましょう。
ストレスと言われると、つい「愛情不足」などを心配してしまう飼い主さんも多いですが、猫にとってストレスの原因になるものは物音だったり、物の配置換えだったり、些細なことである場合も少なくありません。愛猫の性格や生活習慣をしっかり把握し、サポートしてあげたいですね。
④健康診断を受けさせる
白血病の猫の寿命を延ばすために、半年に一度程度の定期的な健康診断を受けることも必要です。また、何か少しでも異変を感じた時にすぐに相談できるかかりつけ医を見つけておくことも大切です。
主な治療を受けているかかりつけ医が遠方にある場合は、自宅近辺で気軽に相談に行ける動物病院を見つけておくと安心ですね。その際は、メインの動物病院から必要な情報提供をしてもらうことが可能かどうか、相談してみるのもいいでしょう。
白血病の猫の多頭飼い
猫白血病ウイルス感染症は、人や犬など他の動物にはうつりません。しかし、猫の間では接触感染、母子感染が起こります。そのため、猫白血病ウイルスに感染してしまった場合の多頭飼いについては、様々な意見があります。
白血病キャリアの猫と、ノンキャリアの猫の水飲み場や食器、トイレなどを分ける、他の猫に猫白血病ウイルス感染症のワクチンを接種させるなどの方法で同居させている飼い主さんは多いようです。しかし、100%感染しないという保証はないため、かかりつけの獣医師や家族ともしっかり話し合って、同じ部屋で過ごさせるのか、隔離するのかを決めましょう。
また、既に先住猫がいる場合に屋外で保護した猫を自宅へ連れ帰る場合は、注意が必要です。猫白血病ウイルスに感染していると知らず、連れ帰った保護猫と先住猫を同居させたことで、先住猫にも猫白血病がうつってしまったというケースも少なくありません。
また、猫の白血病検査は、動物病院での血液検査で簡単に行うことができますが、屋外で保護した猫の場合は、検査時期が早すぎると感染していても陰性になってしまう可能性もあります。
そのため保護(完全室内飼い)した時点からある程度の期間(2か月前後)を経てからの検査を勧められることがほとんどです。
その場合、万が一のことを考えて先住猫と隔離しておく必要もあるため、十分なスペースが確保できるかどうか、猫白血病に感染していた場合はその後先住猫とどのように付き合っていくのかをしっかり考えておきたいですね。
まとめ
白血病の猫の寿命、長生きさせるための方法についてご紹介しました。猫白血病ウイルス感染症は非常に怖い病気であることには間違いありませんが、早期発見、治療で寿命を延ばすことができる病気でもあります。
また母子感染を除き、完全室内飼いの徹底やワクチン接種などで予防をすることも可能です。現在、愛猫を外に出しているという方は、白血病のような防ぐことができる病気があるということを今一度考えてあげてください。