猫が乳がんになった時の症状
- 猫の腹部、特におっぱいの周辺にできるニキビのような粒
- ニキビのような粒が1〜2週間消えない
- ニキビのような粒が大きくなる
- ニキビのような粒の数が増える
- 猫が執拗に舐める
猫が乳がんになった時の症状は小さな粒がお腹の表面、特におっぱいの周りにできはじめ、すぐには消えず数が増えたり大きくなったりします。のような乳がんの症状が出た場合はすぐに動物病院に受診してください。
猫に乳がんができたり何か異変が起こるとその部分を舐める傾向が強いので、その時点で飼い主が異変に気がつき受診した際の多くは、乳腺付近のシコリは1センチ以上の大きさになり、一カ所ではなく様々にできていることが多いです。
猫の乳がんが進行した「自壊(破裂)」の症状
- 乳がんが3センチ以上の大きさで破裂しやすい
- 乳がんから出血や侵出液(膿)など汁が垂れる
- 乳がんのある部位から悪臭(腐敗臭)
- 常に痛みがあり猫が舐める
- 乳がんによる貧血
- 乳がんによる体力低下
猫の乳がんが進行すると皮膚が裂け腫瘍内部から破裂します。この破裂を「自壊」といい、乳がんを切除をしない限り進行の速い腫瘍は高確率で「自壊」がおこります。違和感を持つ猫が舐めて破裂を早める事が多いです。
乳がんの腫瘍は栄養分が行き届かず、すでに壊死しているために自壊すると通常の傷とは違い潰瘍となり腐敗臭がします。自壊後は消毒しても治癒しません。ただし、この場合でも猫は食欲もあり元気であり、飼い主は普通の傷が膿んでしまったぐらいに考えてしまうようです。
また放っておけば台所のゴミにハエが集るように、乳がんが自壊した腫瘍にハエやウジが湧いてきます。そして重なる出血により貧血がおこり「伴う痛み」「転移が広がる事」により猫が衰弱して行きます。
猫の乳がんの治療法
- ①外科療法による乳がんの治療
- ②放射線療法による乳がんの治療
- ③化学療法による乳がんの治療
- ④免疫療法による乳がんの治療
乳がんを治療する上での治療法の考えられるメリットやデメリット、そして費用をお伝えします。ただし、病院や病気の症状により費用に違いがあります、おおよその目安とお考えください。
①外科療法(積極的治療)を用いた猫の乳がんの治療
猫が乳がんになった時に多く選択される治療法で、乳がんの手術により乳腺全てと脇の下のリンパ節部分を全て切除します。ガン細胞が一番少なくなっている手術直後を逃さず、適切な術後治療を行う事により効果を上げる事ができます。
乳がんの外科療法のメリット
- 乳がんが取りきれれば最大の効果が上がる
- 乳がんの自壊前に行えば、猫自身そして飼い主の負担が減る。
乳がんの外科療法のデメリット
- 成長した乳がんや、全身に転移している場合はできない
- 全身麻酔をかけるリスク
- 乳がんの腫瘍を全て取り除く事は難しく再発の可能性は高い
- 乳がんの部分切除は転移の危険性が高く、乳腺全切除は猫自身の苦痛が高い
猫の乳がんを外科療法で治療した時の費用
- 約10,000〜30,000円(検査)
- 約100,000〜250,000円(全摘出)
- 約70,000〜150,000円(片側摘出)
- 約30,000〜80,000円(部分切除)
乳がんの手術から退院後病理検査まで、入院は1〜3日くらいです。事前検査などで約10,000〜30,000円ほどかかります。手術の費用でかかるお金は全摘出の場合約100,000〜250,000円、片側摘出の場合約70,000〜150,000円、部分切除であれば約30,000〜80,000円ほどかかります。
猫の乳がんを手術した後の治療
乳がんの腫瘍に効果のある注射、身体の免疫機能を上げる治療を行い、数ヶ月で再発が無いなら飲み薬投与だけになることもありますから費用は特定できません。他の臓器に転移が見られない場合、抗がん剤治療を行わずに済ます病院が多くなっています。しかし、乳がんが再発した後の治療は大変難しいと言われています。
②放射線治療法(積極的治療)を用いた猫の乳がんの治療
猫の乳がんの部分にX線を照射し、がん細胞を消滅させたり成長を遅くする事ができます。
猫の乳がんに放射線治療法を使用するメリット
がん細胞は放射線に弱く、健康な細胞へのダメージを低く抑える事ができます。
猫の乳がんに放射線治療法を使用するデメリット
- 治療できる病院が限られる
- 費用が高い
- 乳がんの腫瘍が増大する危険
- 乳がんの腫瘍が大きいと全てを取り除けない
- 全身状態が良く無いとできない
- 副作用がある
- 急性障害である皮膚炎や脱毛、晩発障害である脊髄、骨、肺、心臓への悪影響
- 猫への全身麻酔のリスク
猫の乳がんを放射線治療法で治療した際の費用
- 約100,000円(初期検査)
- 約30,000〜80,000円(一回の照射)
初期検査などで約100,000円、一回の照射(約10分)で約30,000〜80,000円これを週に3〜5回、3〜4週間継続します。
③化学療法(抗がん剤)を用いた猫の乳がんの治療
抗がん剤を投与することによりガン細胞を殺傷します、副作用が多く選択されない事も多くなっています。
化学療法で猫の乳がんを治療するメリット
比較的他の乳がんの治療と比べ費用がかからない事が利点です。
化学療法で猫の乳がんを治療するデメリット
- 副作用があり猫自身が辛い思いをする
- 治療効果をあまり期待出来ない
- かえって寿命を縮める可能性
化学療法で猫の乳がんを治療した時の費用
回数や通院頻度もありますのでおおよその額です。
- 約半年の治療合計:約300,000円
乳がん治療のための静脈注射、血液検査、点滴、レントゲン、抗生剤などの費用がかかります。
④免疫療法(細胞治療)を用いた猫の乳がんの治療
- 温熱療法で猫の乳がんを治療をする
- 凍結療法で猫の乳がんを治療をする
- オゾン療法で猫の乳がんを治療をする
免疫療法とは猫の細胞を人工的に培養し増やし、その後身体に投与する治療法で猫自身の免疫力(病気と闘う力)を高めます。猫が持っている自己修復機能を大きくし自然治癒能力を増加させ、乳がんなどのがん細胞の発症や進行を遅らせます。
免疫療法を用いた猫の乳がん治療のメリット
- 他の乳がん治療法と併用が可能
- 副作用がなく猫の苦痛も少ない
- 他の乳がん治療による副作用を軽減
- 限りなく全身麻酔が少ない
- 入院の必要がない
- 肉体的負担が少ないので状況に関係なく乳がんの治療が可能
- 免疫力が上がるために他の乳がん治療の効果も上がる
免疫療法を用いた猫の乳がん治療のデメリット
- 治療を行う病院が少ない
- 一回の費用が高く効果を上げるための金額が高額になる
- 即効性が無いために補助的な治療法となりやすい
猫の乳がん治療に免疫療法を用いた時の費用
- 約30,000〜100,000円(初期検査)
- 約30,000〜100,000円(一回の治療)
猫の乳がんが自壊した後の対処療法
猫の乳がんが自壊した箇所を手術できるかどうかの選択
- 肺転移の有無
- 他の病気罹患
- 高齢での体力低下
- 猫の苦痛等ストレスを抱えたままの生活
猫の乳がんが自壊した後に手術で切除するか、切除しないかを猫の健康状態より選択していきます。
①外科療法(自壊腫瘍切除手術)で治療
猫の乳がんの外科療法とほぼ同じ経過を辿ると思いますので省略いたします。
②対処療法で治療
猫の乳がんが自壊してしまった病気の症状に対処する治療法で、毎日続ける事が必要になります。
- 乳がんが自壊してしまった患部を清潔に保つ
- 乳がんが自壊してしまった患部に薬塗布し患部の保護
一生治らなく、乳がんが自壊してしまった患部から出る膿や血で部屋の中が汚れ腐敗臭もしますが、対処療法を選択する飼い主も多いようです。
乳がんが自壊してしまった患部を清潔に保つ方法は殺菌効果の高い消毒薬で患部を清潔にします。ヨウ素化合物であるポピドンヨードの動物用ネオヨジン液、動物用イソジン液などを薄めて使います。
乳がんが自壊してしまった患部の感染予防や膿等の侵出液を取り除き、痛んだ部分を修復する作用のある薬を塗布します。アレクロキサ成分の外用薬であるイサロパン(粉薬)やフランセチンパウダーなどが処方されるでしょう。
ガーゼと包帯で固定しますが、取り替える時にかさぶたがガーゼに付き痛い事、侵出液がすぐに染み出てくる事から「生理用ナプキン」を使用する方も多いようです。勿論、患部に付かず侵出液を吸い出してくれる物なら何でも大丈夫です。アースリーフを使用すると腐敗臭に効果があるそうです。
エリザベスカラーもしくは術後服着用
猫が乳がんの患部を舐めないようにするための工夫として手作り服を用意することもあるようです。汚れますので少なくても2枚は用意する必要があるでしょう。
乳がん治療後の経過観察
自宅治療と並行して乳がんの再発と転移がないか経過観察を病院で行い、リンパ節や内臓への転移がないかを中心に検査します。定期的な経過観察には、触診、血液検査、レントゲン検査、CT検査(高額)などを行います。
猫の乳がんとは
- 猫の乳がんは罹患病気第3位
- 猫の中〜高齢期に増加
- 乳腺周辺シコリの約9割は悪性腫瘍(乳がん)
- 最終的にはリンパ転移、肺転移
- 完全治癒が困難
乳がんは、メス猫の病気罹患の第3位に入る大変に身近な怖い病気です。オス猫には乳がんの可能性が100%無い事はありませんが、メス猫の要注意な病と言えます。猫のおっぱいは、個体差があり数は一定ではありませんがメスとオスに関係なく約8個前後あります。被毛に隠れてわかりにくいですが、脚の付け根から胸の上辺りまで広範囲にあります。
良性腫瘍と悪性腫瘍の割合は1:9であり、ほとんどのシコリは悪性(乳がん:乳腺腫瘍)と考えられます。良性の場合は小さめのシコリが一つくらいで、周辺の乳腺に転移が無いときです。猫の乳がんの完全治癒は困難ですが、病気と上手に付き合う事が大切になります。
愛猫が乳がんと診断された時の選択肢
第一の選択は乳がんの手術を行うか行わないかを決定
- 猫が高齢の場合
- 乳がん手術での全身麻酔や長時間手術のリスク
- 猫の乳がんの状況
- 猫に乳がん以外の疾患が有るか無いか
- 猫の診断される余命や寿命
- 治療法の期間や費用
猫の健康状態により乳がんの治療法を決定する事になります。獣医師としっかり話し合う事、そして自分でも猫の乳がんについて勉強する必要があります。全ての病に通ずる事ですが、飼い主の納得した治療を行う事は一番効果があがります。
猫の乳がんの末期症状や余命
猫の乳がん末期症状
- リンパ節への転移、他の臓器への転移(肺)
- 食欲減退
- 動きがなくなる
- 呼吸困難呼吸が荒くなる、咳がでる(肺転移)
- 栄養失調
- 貧血
- 腫瘍自壊による痛み、臭い
末期の乳がんの対処療法
- 自壊の治療
- 転移した肺に溜まった胸水を抜く
- 鎮痛剤や抗生剤投与
- 酸素吸入
猫には延命治療ではなく乳がんによる苦痛を和らげるための治療となります。
乳がんの大きさによる余命
- 直径2センチ以下 約3年
- 直径2〜3センチ 約2年
- 直径3センチ以上 約半年
腫瘍にもよりますが、乳がんの余命は長くて3年というデータが一番多いようです。
末期の乳がんの余命
乳がんの改善の傾向が見られない場合、猫の余命は数週間〜3ヶ月程度と言われるようです。
安楽死の選択
- 治療法が無くなる
- 鎮痛剤の効果が無くなり、激痛を感じる
- 意識がない
- 呼吸困難
乳がんが末期の場合、延命をする事自体が苦痛の場合は安楽死の選択もやむを得ないかもしれません。
猫の乳がんを予防する方法
- 飼い主のスキンシップによる乳がんの早期発見
- 猫にあった良質な食事摂取
- ストレスを溜めさせない環境づくり
- 定期検診
- 避妊手術
早期発見が乳がん対策の第一歩です。なるべく小さく少ない数の時に発見できれば、猫自身の苦痛も飼い主の負担も限りなく少なくできます。乳がんの早期発見、健康管理のためにも日頃から猫のお腹をなで、猫とのスキンシップを沢山行い、少しの変化を見逃さないようにします。猫の腹部の皮膚は皆様もご存知の通り柔らかいので、優しくなでていれば異変に気づく事ができます。
避妊手術で乳がんなどメス特有の病気を予防できる!
- 乳がん発生率の大幅な減少
- 子宮蓄膿症を予防
- 感染症予防
- 発情期のストレス
避妊手術のタイミング
- 発情期を迎える前(約半年前)→90%減少
- 一度目の発情後→85%減少
エストロゲンやプロゲステロンなど性ホルモンの分泌が乳がんのリスクを高めるのは人間も猫も一緒です。中〜高齢期に多く発症する乳がんの多くは未避妊、そして生後一年を超えてから避妊手術を行っても発生リスクはあがります。
避妊手術の時期は倫理的にも難しいですが、猫の出産を望まないのであれば乳がんのリスクを下げるためにも、発情する生後半年までの早期に卵巣を摘出する事が大切です。
まとめ
猫の乳がんについてお話をさせていただきました。愛猫の苦しみをなるべく少なくし、ガンと闘うために飼い主側は限られた時間の中で治療法を選択していかなければなりません。適切な治療と猫自身の免疫力が上がれば確実に寿命は延びていきます。
猫の乳がんと闘っていらっしゃる方は多いと思います。これからも病気に負けないように愛猫の身体を健やかに保ち、飼い主さんも病気と闘う体力と強い精神力で頑張っていただきたいと思います。
40代 女性 りゅう
嘔吐や下痢もありましたが頑張ってくれました。最期まで元気な姿を見せてくれて苦しかったり痛かったりしたはずなのに、少しもそういうところを見せませんでした。すごく、立派な猫ちゃんでした。
40代 女性 みなちゃん
早期発見が一番大切になります!
乳ガンは、最初は皮膚にニキビのようなできものがプツプツできていることが気になって病院に行って乳ガンが発覚することが多いようです。体力的に、問題がなければ外科手術で全てを摘出することが一番なのですが、一部しか摘出できないことも多いと聞きます。
人間のように放射せん治療も効果的なようですが、治療費がかさみます。
日頃から、保険に入っておくと安心ですね。
抗がん剤治療も選べることもありますが、乳ガンの進行具合によっても治療法が変わってくると獣医師に聞きました。
乳ガンになっても、即亡くなるということではないので、希望をもって治療を受けさせてあげたいですね。
50代以上 女性 リンちゃんママ
乳がんの外科手術を行いましたが、その後体力が落ちて、それでも頑張り手術後2年間は生きてくれました。
生涯子供は生まないで、去勢手術は生後3年におこないました。
今考えますとやはり去勢手術は生後1年以内に行わないと乳がんの発症率がたかいようです。
他のメス猫は1年以内に去勢手術した。この子は17歳になりますが元気にしています。
多頭飼いをしているので、やはりよくそばに来て抱っこをねだる子は早く発見できますが、
抱かれたり触られたりするプライドの高い子は、嫌がられても触れる機会を増やしていれば早期発見できたのにと後悔しています