血液検査で猫の心臓病検査?
心臓病、聞くだけで胸が苦しくなる嫌な響きですね。
猫ちゃんでは遺伝的に肥大型心筋症という心臓病を引き起こすことが多い血統が知られていますがなかなか症状が出にくいこともあるので発見した頃にはかなり進行しているなんてことも少なくありません。
今も昔も心臓病の検出はやはり心電図検査、超音波検査になるのですが元気な猫ちゃんにそこまでの検査をされている飼い主さんは少ないかと思います。
その反面、毎年1回血液検査はしている!という飼い主さんは近年増えていらっしゃったように感じます。血液検査から様々なことがわかるのですが心臓病に関しては院内で計測できる一般的な項目からは検出しにくいのが実情です。
血液検査で心臓病がわかればいいのになぁ、、
そもそも心臓病の血液検査はあるの?
心臓バイオマーカーといい
- 「ANP」
- 「cTn」
- 「NT-proBNP」
というものが存在します。これらの項目は心臓の障害による負荷で間接的に血中に放出されるものです。
しかしこれらの項目は院内で簡単に測定できるものではなく、専門の検査会社に血液を送付しなければならず一般的な検査とは言い難いものでした。
しかし最近になり「NT-proBNP」の院内検査キットが登場し院内でも簡単に検査することができるようになりました。
NT-proBNPとは?
心室筋の伸展や心不全による負荷が増えるにつれて心筋から放出されるホルモンの1つで間接的に心臓の負荷を知ることができ、負荷がかかっているのであればその原因を心電図や超音波検査で探していくきっかけにもなる検査です。
ではどういった場合の猫ちゃんで調べるべきでしょうか?
無徴候性心筋症の検出
まだ症状が出ていない無徴候性の心臓病でも心臓に負荷がかかり始めていれば検出することができる可能性が高く病気の早期発見にかなり役に立つと思います。
健康診断
毎年の健康診断で一般血液検査をするのであれば追加してこの検査をすることで心臓も健康か調べることができます。
健康診断で血液検査をされない飼い主さんもいらっしゃるかと思いますが、一般に7歳を超えるとしておいた方が良いと言われています。
術前検査
手術等で全身麻酔をかける際に心臓病があると麻酔リスクになります。
麻酔リスクを減らすための確認として心臓バイオマーカーに異常がないか調べておくのもひとつの安全策だと思います。
気になる検査結果は?
院内検査の場合、結果が数値で出るのではなく陽性、陰性でしか出ないため少し判定が難しいです。
というのも判定を色が濃さで決めるのです。
これは陽性の検査結果なのですがなんとも難しいですよね。
左の丸がコントロール(基準となる濃さ)でそれに比べて右の丸が濃いかどうか見ます。
コントロールよりも濃ければ陽性、薄ければ陰性ということになります。
実際にこの検査をした猫ちゃんは不整脈と心房内血栓がありました。
併発疾患に注意!
この検査、心筋の負荷を見るものなので心臓病以外の要素でも上昇すると言われています。
- 全身性高血圧
- 慢性腎臓病
- 甲状腺機能亢進症
などがあげられます。
なのでこれらの病気にすでに罹患している猫ちゃんは検査結果の解釈に要注意です。
まとめ
NT-proBNP院内キットの登場で簡単に心臓のスクリーニング検査ができるようになり、心筋症の早期発見・早期治療のためにかなり役立ちます。
この検査で心臓病の確定ができるわけではないのですがさらに詳しく調べるきっかけになるとともに、猫ちゃんが症状を示さないまま病気が進行してしまうのを防ぐために少しでも多くの飼い主さんにこの検査のことを知っていただきたいと思います。